飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している、大阪発祥の「まこと屋」。元お笑いタレントの島田紳助が出資した一軒のラーメン屋から始まった同店は、気付けば“100店舗超え”の巨大ラーメンチェーンとなった。
前編記事『《島田紳助が出資したラーメン屋》がまさかの“100店舗超え”巨大チェーンに…牛骨ラーメン「まこと屋」急成長の舞台裏』に引き続き、急成長を続けるまこと屋の「強み」を分析していきたい。
他チェーンが模倣できない「牛骨スープ」
まこと屋といえば、特製の圧力寸胴で牛骨を粉々になるまで煮込んだスープが自慢。店で一番人気のラーメンは、看板商品である「牛白湯ラーメン」780円(税抜、以下同)にチャーシューの煮汁で作ったタレに漬け込んだ半熟煮玉子をのせた「とろ~り煮玉子牛白湯」900円(税抜、以下同)だそうだ。
また、同店で牛骨ラーメンと双璧をなす「鶏じゃんラーメン」780円も忘れてはいけない。こちらは、鶏がらスープに鶏挽肉の旨味が溶けこみ、さらに国産白菜の甘みも加わって、あっさりとした中に深い味わいがある。特にヘルシーさが女性客に好まれているという。
ラーメンは商品が模倣されやすい業界として知られるが、まこと屋は模倣困難性(企業の経営資源や能力が、競合他社によって容易に模倣、再現できない性質)の高い独自工法にこだわった商品力を有している。
運営会社、(株)マコトフードサービス代表取締役社長の笠井政志氏も、かつて雑誌の取材でまこと屋のスープについてこう語っている。
「ライバルが増えないのは、クセが強い牛骨は豚骨や鶏ガラに比べてスープを炊く難易度が高い。だから、多店化しようと考える企業が少ないんだと思います。かといって濃縮スープでは品質が落ちます。だからよほどの技術の低下がない限り、スープは店内炊きを続けるつもりです」
あえて安直な効率化をせず、他社にとっては面倒な「店内炊き」にこだわることが、結果として持続的な競争上の優位性を確保していると言っていいだろう。
鳥貴族・大倉社長が社外取締役に
また、飲食店はトータル商品であり、美味しさや価格だけでは店は存続できない。接客や快適な雰囲気も重要な構成要素であり、そのための投資も必要だ。
その点、まこと屋は壁、垂れ壁に木を使用してタイルを貼り、温かみのある内装デザインにしている。落ち着きのある店内空間はファミリー層に人気だ。一人客が利用するカウンター席と共に、ゆったり寛げるテーブル席も人気を博し、幅広い客層に満足されているようだ。
まこと屋のコンセプトは「家族が喜ぶラーメン屋」。その言葉通りの店づくりを心掛けつつ、多店舗展開に欠かせないフランチャイズ体制も万全だ。
フランチャイズは、視認性の高い看板の設置が可能であることや、スケルトン渡しを原則にしてイニシャルコストの負担はかかっても、自店ならではの店内造作をすることが可能になっている。それでいて投資回収速度の標準が3年未満と、収益性も非常に高い。その数字に裏付けされ、成功の根拠を示したビジネスモデルに魅力を感じる加盟店希望者が多いようだ。
加えて近年、社外取締役に株式会社エターナルホスピタリティグループ(旧鳥貴族ホールディングス)代表取締役社長の大倉忠司氏が就任している。大倉氏といえば、鳥貴族の創業者としてはもちろん、アイドルグループ「SUPER EIGHT」の大倉忠義氏の実父でも知られている。
たった一代で人気焼き鳥チェーンを築き上げ、現在では海外進出に向けてアクセルを踏むなど、大倉氏の「手腕」は65歳となった今なお健在。「まこと屋」への参画によってガバナンス体制は強化され、FC店にとっても大きな安心材料となっているようだ。
まだまだ東京での認知度は低いが…
まこと屋は現在(2025年6月時点)、国内86店舗、海外15店舗展開している。国内は近畿圏で大阪27店舗を中心に55店舗、関東圏・東海圏・四国・九州にも出店はしているものの、出店数はエリアごとに偏在している。海外は台湾・オーストリア・インドネシアを中心に展開中だ。
2028年には200店舗を目標に掲げているが、日本の中心である東京には、渋谷センター街本店と福生店の2店舗しか出店しておらず、認知度の低さは否めない現状だ。だからこそ知名度向上のためにも、今後の加速度的な出店が期待される。
当然、海外出店もますます今後の課題となるはずだ。インバウンド客が記録的に伸びているとはいえ、人口の減少が止まらない日本では、どれだけ出店を進めようと先細り感必至だ。
そこで、海外市場でどれだけ儲けられるかが重要となってきているわけだが、その点。日本のラーメンは世界中で認知度が高いこともあって、抵抗感なく浸透させられる今がビジネスチャンスと言えるだろう。
ただ、飲食チェーンによくあることだが、急速な拡大は現場を混乱させて、かえって成長の足枷となる。それを踏まえて、まこと屋には「戦略と管理の一体的推進」で確実な成長を目指してほしい。
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