マイナー契約でも欲しがる球団がない
これがメジャーのホームラン王の実力なのか、それとも…。
6月27日、楽天に加入したルーク・ボイトがイースタン・リーグのオイシックス戦で日本デビュー。4回の第2打席で甘く入ったストレートにバットを一閃すると、打球はバックスクリーンへと消えた。1試合平均の得点、ホームラン数がリーグ最下位と貧打にあえぐ楽天。窮状を打開すべく、新助っ人を立て続けに獲得したが、ボイトに先んじて1軍に合流したオスカー・ゴンザレスはここまで12試合で打率.275、2本塁打と救世主と言えるほどの成績は残せていない。
ボイトは短縮シーズンだったとはいえ20年のアメリカン・リーグ本塁打王ということでファンからの期待も大きいが、専門家や現場からの評価は芳しくない。そこには球団としての構造上の問題が絡んでいる。(記録は6月27日現在)
「楽天はネームバリューに惹かれて獲ったんですかね」
そう言いながら首を傾げるのはメジャー・リーグの選手に精通するスポーツライターの友成那智氏だ。
「ボイトは19年、ヤンキースでファーストのレギュラー格になり、翌年は60試合のシーズンながら56試合で22本の本塁打を量産してタイトルを獲得した。高校でも、大学でもさほど注目されず、ドラフトも22巡目指名(全体665位)。ここまで“非エリート”の選手がホームラン王になるのは異例で話題になりました。
ただ、次の年はオープン戦で膝を痛めて半月板の手術を受けた。身長190cm、体重114kgの体型でしたからね」
このシーズンは結局、目立った活躍はできずオフにヤンキースに見限られる。22年はパドレスとナショナルズでプレーもシーズン後、ノンテンダーFAに。
23年はブルワーズとマイナー契約を結んで春季キャンプには招待選手として参加。メジャー契約を勝ち取って開幕を迎えたが、満足な数字を残せず6月に自由契約になっている。
「そのあと、メッツと契約しましたが3Aの試合しか出られないまま8月1日にクビになっています。さらに昨年からはマイナー契約でも置いてくれるところがなくメキシカンリーグでプレー。今季はここまで打率.314、ホームランはチーム2位の12本を打っていますがバッター有利の球場が多いリーグなのであまり当てにできません」(同前)
「ピークは過ぎている」
「たしかにとらえれば長打がある選手ですけど、打率は期待できない。速球系は得意ですが、変化球、特にフォークやチェンジアップといった落ちる系の球に弱く、空振り率がすごく高いというデータが残っています。
ホームラン王になった20年は22発打っていますが、球種の内訳はストレート系が16本で、落ちる系は2本だけ。打率は.200打てていたんですが、メジャーでは最後となった23年のそれは.097と1割にも満たなかった。追い込まれて落とされると三振というシーンが多いでしょうね。
それと気になるのは体重。全盛期が114kg。メジャーを離れてから体重が減る選手というのはほとんどいないんですけど、どれほど動ける体で来ているのか。楽天で言えば、アマダ―も体重が140kgくらいあってすごかったですよね。アマダ―もメキシカンリーグでプレーしていて、ホームラン王をとして29歳で日本に来ましたけど、ボイトは今年で34歳。有名選手ではありますけどピークは過ぎた印象は拭えず、どうして獲得したのかなと思わずにいられません」(友成氏)
その疑問に答える形で楽天担当記者が続ける。
フランコが3人?
「外国人選手の獲得は三木谷浩史オーナーと石井一久GMのラインで決めていて、現場を指揮する監督でも口をはさめないそうです。言うまでもなく三木谷オーナーは野球については素人で、望んでいるのは肩書が立派で、しかも低予算で獲れる選手。それでは当然、全盛期を過ぎた選手しか入ってこない。
一昨年、加入したフランコもメジャーで3年連続20本塁打以上打った実績の持ち主ですが、それは5年以上前の話。案の定、空振りに終わった。近年、助っ人選手の成功例が乏しい要因の1つです。
石井GMもメジャーでプレーした経験はあるが、向こうに強いパイプがあるわけではない。ボイトもほかの球団が狙っていたという話は聞かないですし、今年はメキシコでよく打っていると聞かされて、またババを引かされたんじゃないか」
ボイトは金看板とは裏腹に、フランコの二の舞が懸念される。
「現在のチーム事情からホームランを打てる選手の獲得を目指すのはわかります。ただボイトだけでなく、ゴンザレスもここまではそれなりの打率を残していますが、フランコ同様、高い打率を期待できる選手ではない。
ですから、ゴンザレスに続いてボイトの獲得を聞いたときは『3人もフランコを獲ってどうするんだ。リーズナブルでどちらか当たればいいという考えなら、2人分の年俸でもっと期待できる選手を1人獲った方がいい』と担当記者の多くは呆れていました」(同前)
テコ入れが急務なのは助っ人獲得体制そのものの方のようだ。
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