前編記事『《実名で歯科医が警告》「いま、情弱患者が狙われています」…虫歯リスクを高めさせる悪徳歯医者の「簡単な見分け方」』より続く
待合室に5人以上が待っていたら要注意
審美に興味がない人であっても、虫歯や歯周病治療、あるいは定期健診などで、歯医者にかかる際に覚えておくべき簡単な見抜き方もある。
歯科医院に行ったら、まずは「待合室」と「トイレ」を確認してみてほしい。林歯科院長の林晋哉氏は、こう解説する。
「院内が清潔であるかどうかは非常に重要です。分かりやすく言えば、待合室やトイレです。
ホコリやゴミが目立っていないか、ポスターや雑誌がボロボロになっていないか、消毒液がきちんと設置されているかを確認しましょう。こうした細部に気を配る医者は、患者にも丁寧な対応をするものです」
待合室に政治家や歯科医師会のポスターが貼ってある医院にも警戒したほうがよさそうだ。小峰歯科医院・院長の小峰一雄氏はこう話す。
「政治活動をしたり、歯科医師会の役員をしたりするなど本来の診療とは関係のないことに手を広げている歯医者はお勧めできません。治療に当てるべき時間や経営資源を、他に使っているわけですから、治療の質が下がってもしかたありません。
同様の理由で、医院の外壁にイルミネーションをつけたり、院内に華美な装飾を施したりしているところも避けたほうがいいでしょう。
また、待合室に5人以上待っている医院は危ないかもしれません。5人以上も待っているということは、患者を無制限に受け入れている可能性が高いので、ケアが希薄になっている恐れがあります。患者さんには、時間をかけて丁寧に治療の説明をすることが何より大切なんです」
外出や買い物のついでに寄れるからといって、利便性だけで駅前のような好立地にある医院を安易に選ぶのは、実はリスクが高い。前出の林氏はこう警告する。
「黙っていても患者さんが入ってくるから、忙しいときは手抜きにならざるを得ないんです。たとえば、現在都内の歯科医院は、一日あたり約20人診ると言われています。私自身、若い頃は駅前にある歯科に勤めていました。
そこは当時、毎日70人近くも患者さんが来ていたんです。流れ作業じゃないとさばききれませんし、同僚の歯科衛生士は『どんどん患者をまわせ!』とジェスチャーで指示してくる。そんな医院で、まともな治療ができるはずありません」
保険診療で何とか医院を成り立たせるためには、とにかく患者の数を増やすことが先決なのかもしれない。とはいえ、経営を優先するがゆえに治療がおろそかになってしまっては本末転倒だ。
ホームページの「所属学会」も見てみよう
患者を呼び込みたいがあまり、営業時間などで優位性を示す医院もある。ただし「年中無休」「早朝から深夜まで営業」などとうたうような場所は、避けたほうがいいだろう。きぬた氏はこう語る。
「こういう医院は基本的に保険診療なので、比較的安価で治療してくれるし、いつでも診てもらえる。便利であることは間違いありません。ただ、薄利多売で成り立っているので休憩時間なんてありません。上質な治療は望めないし、腕の良い歯科医がそこに勤務しているとは考えにくい。
患者を多く受け入れるという意味では、『〇〇支店』が複数あるような、多店舗展開している歯科も避けるべきです。店舗を増やせば、家賃や人件費などのランニングコストが増えるため利益率は下がりやすい。
それでも複数の医院を維持するために歯科医の確保が急務なので、高額の賃金で医師を集めています。そうすると、カネだけを求めて研鑽は二の次の歯科医が集まりやすい。いまは上手くいっていても、潰れてなくなると思います」
医院のホームページを確認するのも重要だ。チェックするべきは学歴のみではない。医者が歯科分野の「学会」に所属しているかどうかも大切だ。歯科開業コンサルタント「アルファージール」の代表取締役・小林大晃氏が語る。
「『歯周病学会』や『小児歯科学会』など、業界には多くの学会があります。そこに所属していれば明記するはずですが、何も書いていないと、患者は自分の治療に合う医師なのか判断しにくい。
たとえば、きちんとした入れ歯を作ってほしい場合は、入れ歯などの研究をしている『日本補綴歯科学会』に所属しているかが目安になります。また、医者は『指導医』『専門医』『認定医』とランク分けされており、一番上の『指導医』であれば腕は間違いないでしょう」
死ぬまで健康な歯でいるためには、歯医者選びにも知識が必要なのだ。
「週刊現代」2025年6月23日号より