脳血管内治療の第一人者が語る
全国の病院・医師の実力を、より詳しく部位別・病気別に見ていこう。
まずは脳だ。兵庫医科大学病院脳神経外科で主任教授を務める吉村紳一氏は、カテーテルを使った脳血管内治療の第一人者として知られる。
カテーテルと外科手術のどちらが有効かを症例ごとに素早く判断して使い分けるという吉村氏が語る。
「手前味噌で恐縮なのですが……私たちの病院は、脳血管障害では治療数・質ともにトップレベルです。得意とする脳動脈瘤治療では成績が良好で、合併症も非常に少ない。私のライフワークとして自信を持っています」
では、その吉村氏が実力のあると感じる、脳神経内科・外科はどこだろうか。
手の震えを脳から治す
「脳卒中部門の診療では、国立循環器病研究センターの豊田一則先生と杏林大学医学部付属病院の平野照之先生が国内トップ。医療技術はもちろん、見識が深く患者に素晴らしい対応を見せる「業界の先輩」です。
また、ふるえなど不随意運動疾患の治療では、三愛病院の平孝臣先生が世界的に知られています。突然手がふるえて演奏ができなくなった音楽家などに対して、脳の一部を焼いたり刺激したりする外科治療、いわゆる機能的脳神経外科の分野では断トツ。当院の特別招聘教授でもあり、平先生が手術してくれるというだけで、患者さんが集まってくるほどです」
最新技術を生かし幅広い診断を行っていると、多くの医師から実力を評価されたのは東京大学医学部附属病院だ。具体的にはこんな強みが挙げられた。
・脳腫瘍手術で先進的画像診断を駆使している
・脳内の一点にガンマ線を集中照射するガンマナイフなど、放射線治療が充実している
・パーキンソン病などの神経変性疾患だけでなく、筋ジストロフィーほか遺伝性神経疾患の遺伝子診断、免疫性神経疾患の抗体測定など、専門的な精密診断を行っている
科を越えた連携体制が整っている
だが、脳の治療には最新治療・技術を駆使するだけでなく、他の科とうまく連携することも求められる。
その点で評価されたのは、聖路加国際病院である。呼吸ケアクリニック東京理事長の木田厚瑞氏が語る。
「神経血管内治療科、脳神経外科、神経内科の3つの科が協力して脳、脊髄、神経の疾患に総合的な診断と治療を行っています。
心房細動などが原因で起こる脳梗塞の治療では、院内の循環器内科など他科との連携も欠かせず、スタッフ同士の信頼感が得られているかがカギとなります。聖路加は科を越えたスタッフ間の連携体制がうまく保たれているように思われます」
後編記事『九州大学病院、福岡脳神経外科病院、札幌の中村記念病院……地方の病院も「脳の病」を治すレベルが高かった』へ続く。
「週刊現代」2025年5月12日号より