「思い描いた将来って? 私ってどう生きたいんだっけ……」
30歳までに結婚しようと人生計画を立てていたはずが、結婚目前で彼氏の浮気が発覚した茜。「ロールモデルがいない!」と仕事一筋の自分を振り返る瑞希。男性に自分の素をさらけ出せない婚活中の桜子。
東大卒のコラムニスト、ジェラシーくるみさんが企画・原案を務めた 『アラサー・ライフ・クライシス』 (KADOKAWA)は、自身や友人たちの体験をもとに、現実と理想のギャップに揺れるアラサー世代の心の動きを描いた作品だ。
恋愛、結婚、出産にキャリア……30代を目前に迫る“人生の選択”をどう乗り越えればよいのか? 本作で描かれるエピソードは、こうした悩みに大きなヒントを与えてくれるはずだ。
結婚を目前に同棲相手が……
化粧品会社で広報を務める28歳の成田茜は、アラサー世代に差し掛かり、今後の人生について思い悩んでいた。
同棲する拓哉とは付き合い始めて3年。大手不動産会社に勤務し、高学歴・高年収と非の打ち所がない相手だが、なかなか結婚の話が進まないでいた。
子供を持つため、「30歳までには結婚する」という目標を叶えたい茜だったが、拓哉の浮気が発覚したことで状況は一変する。
「なんでこんなことしてんの? 意味わかんない! 私たち結婚するんでしょ!?」
「最近、結婚、結婚って。茜が一方的にだろ。ちょっとおかしいよ」
拓哉から告げられたのは、思いがけない言葉だった。
茜はこれまでの3年間と将来を天秤にかけて怖じ気づき、別れを告げられずにいた。
「いつから気持ちのままに、動けなくなっちゃったんだろう――」
東大女子の「結婚の決め手」とは
東大出身の“港区女子”として多くの恋愛経験を重ねてきた、原案のジェラシーくるみさん。現在は同年代の夫とともに平穏に暮らすが、本作に出てくるエピソード同様、恋愛相手とうまくいかず思い悩むことも多かったという。一体、何が結婚の決め手となったのか。
「いまの夫と出会うまでは、恋愛相手とは小説や映画の趣味、物事の感性が合うことが大切だと感じていました。でも正直言って、夫にはそういった部分はないんです。ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、夫の感受性は、どこか小中学生のままなんじゃないかと思うことがあるんです。一緒に映画を観ても『つらかった。可哀想だった』とかばかり(笑)。 ふだん深い話はできるのに、作品の感想は子どもみたいで、そのチグハグさも可愛いなと思えたんですよね。
束縛もしないタイプですし、私が何もせず床に転がっていても家事をちゃんとやってくれたり、普段ケチだけど記念日はドンとサプライズしてくれたり。押さえてほしいポイントを全部押さえてくれているんです。そして何より顔とスタイル、見た目がドンピシャでした(笑)」
特に大きかったのが、周囲の後押しだった。
「圧倒的に女友達のウケが良かったんですよ、元カレたちと違って(笑)。それまでは真面目なお坊ちゃんか、ザ・体育会系みたいな人が多かったんですけど、夫はバランスが良い。
『彼にとってあなたがベストパートナーかはわからないけど、あなたにはピッタリな人だね』と、たくさんの友達に言われました。幸せになれる相手だと。会う友達みんなが言うのでびっくりしましたね。
元カレたちの場合は、『もう無理!この人といられない』というポイントがそれぞれ何度もあったんです。高圧的な態度を取られたり、相手の情緒がすごく不安定だったり、酔っ払って傘を投げられたりとか。デート中に大喧嘩して、銀座のど真ん中で泣いたこともあります」
自分が「欠けている側」だと気づいた
ジェラシーくるみさんは、恋愛を重ねていくなかで、自分自身の欠点にも冷静に向き合えるようになったという。
「同棲してみて気づいたのが、私は“欠けている側”の人間なのかもしれない、ということでした。自分のことを「面白くて一緒にいたら楽しいタイプ」だと思っていましたが、周りに聞くと私なんかと生活するのは無理、と口を揃えて言っていました(笑)。
たしかに、よく考えると『何時に帰るからね』っていう小さな約束を守れなかったり、相手に色々求めすぎたり。それを自覚し始めて、私も自分とは暮らしたくないなと分かりました(笑)。
人と違った感性とか深い知識を持っていることより、生活リズムや会話のテンポ、笑いのポイントが近いほうが大事なのかなと、今は思うんです。何より、こんなに“欠けている”自分と一緒にいてくれるんだからそれだけでありがたいと、冷静にみられるようになりました」
ベストパートナーを得たジェラシーさん。理解ある男性の見分け方について聞くと、
「生理に対する向き合い方には、その人の理解力や思いやりがよく表れると思います。 たとえば、しんどそうな彼女を見て『生理ってどうして痛いのか』『何日くらい続くのか』を自分で調べてみたり、食料やナプキンを買いに行ってくれたり。そうやって、戸惑いながらも誠実に向き合おうとする人は、他の場面でもきちんと理解を示してくれることが多いです。
逆に、『なんで俺がナプキンなんて買わなきゃいけないんだよ』みたいな、旧石器時代の発言をする人は厳しいですね(笑)」
「妊活」をオープンに語れる場を作りたい
これまでアラサー女性の恋愛や結婚について赤裸々に綴ってきたジェラシーくるみさん。今後の目標についても語ってくれた。
「結婚してからは、周囲から夫婦関係の悩みについてもよく聞くようになりました。恋愛だけでなく、夫婦のあり方やトラブルをユーモアを持ちつつ描けたらいいなと思いますね。それから、子供はまだいらないかなと思っていたんですけど、最近その考えが変わってきたので、妊活や出産、ゆくゆくは育児周りのこともトライしたいです。
特に妊活って、身近な人とはあまり話せないセンシティブなテーマだと思うんですよ。でも、妊活を扱った漫画やエッセイは結構ありますし、ママ専用の知恵袋みたいなアプリでは、妊活や妊娠に関する質問に先輩ママたちがすぐ答えてくれたりして、ある種の“助け合いの場”になっていたりする。 リアルな友人には言いにくいことでも、発信者と読者という距離感だからこそ素直に言葉にできることってあるんじゃないかな、と思ったんです。
センシティブな話題だからこそ、沈黙して一人で抱え込むのではなく、誰も傷つけないかたちで、もう少しだけオープンに語れる場をつくっていけたら。 そんな発信ができたらいいなと思っています」