進化した中国のアニメCG映画
今月4日から、鳴り物入りの中国のアニメCG映画『ナタ 魔童の大暴れ』が全国公開されている。何せこの映画、1月29日の春節に中国で公開されるや、1ヵ月で3000億円以上もの興行収入を挙げたのだ。これまでの日本最高が’20年公開の『鬼滅の刃』の404億円なので、一桁違う。
実は私、すでに先月、東京・池袋の映画館で観た。
この映画、3月に全国45ヵ所で先行公開されたのである。ただし、日本語の字幕が間に合わなかったため、中国語音声/英語字幕だった。こんな「緊急措置」も日本初ではないか?
夜の遅い時間帯にもかかわらず、全346席が満席だった。しかも、おそらく私には「二つの唯一」がついた。唯一の日本人客で、唯一のオッサン客。そう、他は皆、留学生を中心とした若い中国人たちだったのだ。
「映画.com」の解説
「映画.com」ではこの映画をこう解説している。
〈育て上げれば仙人となるはずのナタは、何者かの陰謀によって世を混乱させる魔王となる宿命を背負いながら生まれた。孤独を抱えながらも、両親に愛情を注がれ、少しずつ成長していくナタ。やがて彼は東海竜王・敖光の息子・敖丙と唯一無二の親友となる。だがそんな2人に、ある試練が待ち受けていた〉
公開中の映画のストーリーを語るのはタブーだが、私にとってこの映画に限っては、ストーリーは二の次だった。北京駐在員時代の’12年に、現地で「マンガ学校」を主催した経験などがあり、いまの中国の「アニメのレベル」が知りたかったのだ。
当時、中国で「国民的アニメ」とされていた『喜羊羊と灰太狼』を、北京の映画館であくびを嚙み殺しながら観たものだ。これでは日本のアニメに追いつくのは100年かかると思いながら。
それで、『ナタ』である。2時間20分の上映時間のうち、初めの30分くらいは、「なかなか進歩したな」と感心した。続く1時間半くらいは、やや冗漫に感じ、「アメリカ人にはウケるかもしれないけど、目の肥えた日本人にはどうかな?」
中国の若い力を感じる圧巻のラスト
だが、ラストの20分が実に圧巻!
中国的な大陸の気宇壮大さ、日本的な細部にこだわる繊細さ、ハリウッド的な高いCG技術、韓流ドラマ的なコミカルなエンターテインメント性、そして中国の若者が持つスマホで鍛え上げたゲーム的要素。これらが「五位一体」となって、これまで観たこともないハイレベルな「夢幻世界」を演出していた。
そして、この映画の主題は「破」だと思った。超不景気な世の中で、既成のものを打ち破っていく中国の若い力である。
ラスト20分の「破壊力」を目の当たりにして、私のちっぽけな脳ミソも、すっかり破壊されてしまった。
日本でヒットするかな?
「週刊現代」2025年4月28日号より