毎年、優秀な卒園児を送り出している「東京いずみ幼稚園」(東京都足立区)では、日々いろいろな方法で子どもの思考力を刺激しする取り組みが行なわれています。数多くある教育実践のなかから今回は、家庭でもすぐできる簡単な「クイズ」を、新刊『最高の育て方事典』より紹介します。
熟語の読み方を子どもに問う
いずみ幼稚園では毎朝、全員で園庭に集まって朝礼を行います。私が朝礼台に立って挨拶やお話をしますが、そこで週1回、キーワードとなる漢字を見せながら語りかけることで、新しい文字に触れる機会をつくっています。
たとえば、あらかじめ「松茸(まつたけ)」と大書された紙を用意しておきます。
そして私が朝礼台に上がり、朝のお話のなかでその紙を広げ、
「このキノコは香りがとてもいいんだけど、すごく高いんです」
と言いながら園児たちに漢字を示します。すると、毎日漢字に触れている園児たちは、クイズだと察して元気よく、
「まつたけ!」
と答えるので、
「そうだね! よく読めた!」
と私がみんなをほめて終わる、という遊びです。
実にシンプルですが、クイズのようなこの遊びは、
・新しい漢字、新しい言葉に触れる
・持てる知識を総動員し、ヒントも活かしながら読み方や意味を推理する
という高度な知的活動の機会になっています。
読めない子がいても、園児のうち誰かが「まつたけ」と正解を出すので、必ず新しい知識を習得できるのもいいところ。集団のなかで他者との「学び合い」が生まれるのは、多くの子が集う幼稚園ならではのメリットと言えるでしょう。
季節に合った言葉を選ぶ
このクイズは家庭でも簡単にできるので、ぜひ読者にもおすすめします。準備は簡単で、漢字を手で紙に書くか、パソコンで打ち込んでプリントアウトして、ヒントを考えておくだけで完了です。
最初は漢字1文字から始めて、やがて2文字、3文字の言葉へとステップアップしていきましょう。
どうせなら何か文化的な要素を入れたいので、季節の話題にもとづいたクイズを出題してあげてください。たとえば、
・3月 桃
雛祭(ひなまつり) 雛人形(ひなにんぎょう)
・4月 桜
花見 新学期
・5月 鯉幟(こいのぼり) 柏餅(かしわもち) 菖蒲湯(しょうぶゆ)
・12月 師走 大晦日(おおみそか)
といった言葉の読みを子どもに問うてみるのはどうでしょうか。
毎日できれば理想的ですが、無理をすることはありません。
雛祭りや端午の節句など、季節のイベントを家庭で祝うついでにクイズを出し、子どもに答えてもらったあと、親がクイズにちなんだ「お話」(たとえば雛人形は何を表しているか、端午の節句にはどんな意味があるか……など)をしてあげるだけでも十分です。
親から知らなかったことを教えてもらうのは、子どもにとってはこれ以上なく嬉しいこと。いいコミュニケーションの機会にもなるので、ぜひやってみてください。