にしおかすみこさんが9月16日に人気シリーズの3冊目『ポンコツ一家 最後の2年』を刊行する。「最後の2年」とはどういう意味なのか。7月10日に行われたインスタライブで語られたこととあわせてお伝えする。
人気シリーズの「最後の2年」
“家族紹介。
うちは、
母、80歳、認知症。
姉、47歳、ダウン症。
父、81歳、酔っ払い。
ついでに私は元SMの一発屋の女芸人。45歳。独身、行き遅れ。
全員ポンコツである。
ただ、皆が皆ずっとこうだった訳ではない。
何十年かぶりに、私は実家に戻った。
まずはその理由を、いや長めの愚痴にお付き合い頂けたら、とても嬉しい。“
こんな書き出しでにしおかすみこさんの連載「ポンコツ一家」が始まったのは2021年9月のこと。コロナ禍に久々に実家に帰宅したら実家がゴミ屋敷のようになっており、大黒柱の母も明らかに以前と変わっていた。そこから認知症や介護、家族のことを赤裸々につづったのがこの連載だ。
これまでに新規書き下ろしを加え書籍『ポンコツ一家』『ポンコツ一家2年目』という書籍としてまとまり、「壮絶なのに笑って泣ける」「他人事とは思えない」「にしおかさんの文才がすごい」と話題に。累計68000部のヒット作となっている。
続編は出ないのですか?という問い合わせもされていた3冊目が、『ポンコツ一家 最後の2年』だ。
しかし、これまでのシリーズとは大きく変わったことがある。2025年11月に、認知症の母が突然天国に旅立ってしまったのだ。
本書冒頭には、にしおかさんがこのようにつづっている。
“2020年、コロナ禍。千葉の実家、そこはちょっとした「ゴミ屋敷」だった。
母の異変に気づき、まとまるはずのない家族の渦に飛び込み、溺れる。
それでも経験を積み、私はより図々しくアップデートされた。
だが、母姉父のアクの強さは、その進化を軽々と追い越してくる。
自分ファーストを掲げながら、即座に白旗を振る。そんな矛盾だらけの日常。
そして、2025年11月。母が逝った。“(『ポンコツ一家 最後の2年』「ポンコツ家族紹介」より)
同居を決めたにしおかすみこさんが、家族と暮らし、次に直面したのは「生死」という、人間には避けられないことだった。
家族にきれいごとはない。そこにあるのはリアルで、時折泣きたくなって、でも笑いと愛のある現実。本書は「壮絶だけど笑って泣ける」家族と介護の物語、第3弾にしてひとつの「最終章」なのだ。
母が亡くなったあとの「最大の変化」
情報解禁に合わせ、7月10日20時からはインスタライブを開催した。そこでにしおかさんは「一番大きな違い」をこのように語っていた。
「連載初回から、書くときにずっと気をつけていることがあって。綺麗事ではないので、上手くまとめようとしないということと、あと盛らないっていうこと。これは私にとって絶対です。事実を曲げてしまって家族が誤解されるのも嫌ですし、認知症の方や障がいのある方がこういう行動、言動があるんだと誤解されるのも嫌です。だから、家族が言った言葉などは携帯のメモアプリに残しています。
そのメモを見ながら書いているんですけど。
例えば、一年前のことを書くとき、メモに『こんな大変なことがあった。それに対して私は母にすごく腹が立った』と書いてあったら、一年後の私もすごく腹が立つんですよ。一年前に『わからなかった』と書いてあったら、大概、気持ちの整理もできないままダラダラ時間に流され、一年後の私もわからないんですよ。
だから連載にもそのまま『わからない』とか『腹が立った』って書くんですよね。
ただ、2025年11月に母が亡くなってからは、『腹が立った』と書いてあっても、腹は立たないんですよ。懐かしいとか、なんでもいいから生きててくれよ、みたいな勝手な思いが出てくるんですよね。なので、母が亡くなるなんて思いもしないまま書いていたあの2年間には、そのときだからこそのエネルギーとか、そのときにしかできなかった書き方がパンパンに詰まってるんです」
「実はうちも…」の声
にしおかさんのこういうスタンスに、これまで1冊目と2冊目で開催したサイン会では「実はうちも介護をしています」「世代も一緒で悩みが同じです」「にしおかさんが頑張っていると思うと私も頑張れます。でも自分ファーストですよね」と多くの共感の声が集まっていた。ときには思わず涙ぐみ、周囲がもらい泣きするシーンも……。
内閣府の調査令和7年版高齢社会白書(全体版)」によると、2040年に認知症になる65歳以上の方の推計は584.2万人。2022年の443.2万人から大きく増加する見込みだ。少子高齢化により、認知症と向き合う若い世代の数も増えてくることになる。誰にとっても他人事ではないからこそ、その中で笑顔と健康を保つことが重要なのだなと感じさせられる。
誰にとっても他人事ではないからこそ、思いを共有し、少しでも笑える環境を一緒に作れたらいいのではないだろうか。