AIの暴走が深刻化している。2026年7月、米オープンAIや米アンソロピックの高度なAIモデルが、評価テストの環境を抜け出し、外部企業のアカウントやインフラに自律的なサイバー攻撃・不正侵入を行っていた事実が立て続けに発覚した。
サイバー脅威も爆発的に増加している。従来のサイバー攻撃は人間のハッカーの手作業に依存していたが、高度なAIエージェントの出現によって攻撃の自動化と高速化が急速に進んでいる。今まで見破られることのなかった未知のシステム欠陥がAIによって発見されるだけでなく、ハッカーが攻撃を開始するスピードも従来とは比べようもないほど加速している。
こうした事態を受け、日本政府の「サイバーセキュリティ戦略本部」は、重要インフラ事業者や政府機関において、システム内に潜む侵入痕跡を早期に探し出す「脅威ハンティング」の促進方針を決定している。10月に施行される「サイバー対処能力強化法」に基づき、官民連携での能動的サイバー防御の体制構築を加速させる方針だ。
経済安全保障の観点からはセキュリティの基盤を海外製品にのみ依存することへのリスクも強く認識され始めている。高付加価値な製品やサービスを提供する「国産サイバーセキュリティ関連企業」の再評価が期待できそうだ。
トレンドマイクロ<4704>
●7月31日終値6341円
国内サイバーセキュリティ専業のリーディングカンパニーだ。個人向けクラウド型セキュリティ基盤「ウイルスバスター」で培った検知技術を土台に、法人向け「Trend Vision One」への事業転換を着々と進めている。企業のクラウドやネットワーク全体を横断して脅威を可視化するプラットフォームへ軸足を完全に移したといえそうだ。
DX(デジタル変革)や生成AIの急速な普及に伴い、企業のITインフラは飛躍的に拡張・複雑化している。もはや単一の防御ツールでは機能しないことが多く、一気通貫したセキュリティ基盤の導入が必要な時代に突入している。エンドポイント(PCやスマートフォンなどの端末)保護からクラウド環境、ネットワーク全体に至る統合防衛ソリューションを展開できる同社の優位性はさらに高まるだろう。
2026年6月には、米アンソロピックや米オープンAIの先端AIを活用し、自社ソフトウエアの脆弱性を解析できる体制を整えた。複数の先端AIを組み合わせた検知力の底上げを進めたことで、優位性は一段と高まった。営業利益の3期連続最高益更新は確度を増すばかりだ。期末配当は現時点で未定だが、前期並みでも約3%の配当利回り水準が期待できる。自己株式取得の実施も着実に進めており、積極的な株主還元姿勢も盤石な体制だ。
ボードルア<4413>
●7月31日終値2869円 配当利回り(予)0.35%
システムの基盤となるITインフラ分野に特化し、障害発生が許されない重要領域で高い参入障壁を築いている。ITインフラの設計や構築は現場での実地調整や複雑な承認手続きが不可欠であり、生成AIに業務が全面的に代替されるリスクは極めて低い領域だろう。
収益成長の源泉は、若手エンジニアを短期間で高度専門人材へ育成する専門特化型の教育体制にある。自社での人材育成に加え、戦略的M&Aを通じた子会社の人材強化と利益率向上も推進しており、2027年2月期第1四半期(2026年3-5月期)では、買収した4社の早期黒字化も一段と進んだ。
AIによるサイバー攻撃の高度化で企業のセキュリティ基盤構築・運用支援の需要が拡大するなか、先端技術領域の専門人材を豊富に抱える競争優位性は今後も強まっていくだろう。顧客の実状と要望を正しくマッチングさせる上流工程から、新たなサイバー攻撃に対抗しうるセキュリティ運用までをワンストップで手掛けられる体制は大きな強みだ。グループ全体で年間30%以上を目標とする利益成長を持続的に達成する体制も整えつつある。
デジタルアーツ<2326>
●7月31日終値4065円 配当利回り(予)2.46%
Webフィルタリングやメールセキュリティで採用する「ホワイト運用」(安全と判断された通信のみを許可する仕組みのこと)を特徴としている。個別の脅威を都度検知するのではなく、安全な通信だけを通す発想でリスクを根本から抑える点は差別化要素となる。攻撃を受けて対応する通常の対策では、AIが予想を超えて進化を遂げる過程では脅威度が増してくる。必然的にホワイト運用の選好度は高まりやすくなろう。
2027年3月期第1四半期決算(2026年4-6月期)では、企業向けのクラウド型セキュリティ需要を着実に取り込んだほか、「GIGAスクール構想 第2期」や省庁向け案件の獲得が大きく寄与した。導入シェア、受注単価のいずれもが大きく伸びており、顧客基盤の強さが再確認された。
収益基盤の質的な進化にも注目したい。クラウドサービス系製品の売上高は前年同期比28.7%増の16億100万円と過去最高を更新し、全売上高に占める割合も59.0%まで上昇した。ストック型収益(継続的に発生する売上)の基盤が順調に拡大したことで、営業利益率も前年同期の35.0%から38.2%へと拡大した。AI活用による業務高度化・効率化を数字のうえでも示した格好だ。
グローバルセキュリティエキスパート<4417>
●7月31日終値4580円 配当利回り(予)1.07%
中堅・中小企業向けのセキュリティ対策から高度なエンジニア育成までを手掛けている。2027年3月期第1四半期決算(2026年4-6月期)では、売上高が前年同期比23.9%増の27億7200万円、営業利益が同41.7%増の4億9900万円となり、第1四半期として過去最高の業績を更新した。すべての事業分野で増収増益を達成し、力強い成長力を示している。
生成AIの台頭に伴うサイバー攻撃の巧妙化や、企業側のAI導入による情報漏洩リスクの増大は、セキュリティニーズを爆発的に高める構造的な追い風となっている。同社は生成AIに対応した「AIプロンプト診断」の提供開始や、認定AIセキュリティエンジニア講座の開設など、サイバーセキュリティの最前線に沿ったサービスを迅速に展開し、セキュリティ、教育、人材提供の各事業で相乗効果を発揮している。
AIによる攻撃の高度化を受けて中堅・中小企業でもセキュリティ人材とリテラシー教育への投資が避けられなくなっている。約9割の企業がセキュリティ人材の不足に悩む一方、キャリアアップ志向の強いビジネスパーソンにとっては将来有望な職種でもある。大企業と比べて対策が遅れがちな中堅・中小市場を主戦場に据える独自のビジネスモデルに注目が集まろう。
JBCCホールディングス<9889>
●7月31日終値1616円 配当利回り(予)3.09%
高度化する脅威に対し、システム開発から運用まで一気通貫で立ち向かえる点が競争力の源泉だ。ITサービス全般にセキュリティ事業を組み合わせる総合力を強みとし、前期までに4期連続増収増益、5期連続で最高益を更新している。続く2027年3月期は売上高795億円(前期比4.6%増)、営業利益87億4,500万円(同19.7%増)へ飛躍を見込んでいる。
中期経営計画の注力事業であるセキュリティ関連の月額ストック型サービスは、事業売上高成長率の年率目標30%増に沿った順調な伸びを示している。収益の安定性が向上しただけでなく、案件規模の拡大とともに売上総利益率も向上する好循環が生まれている。
生成AIの急速な広がりを次の成長機会と位置づけ、AI駆動開発の進化や人材育成、AI活用基盤・セキュリティ強化への戦略投資を進めている。一時的には投資負担が利益を圧迫するが、配当は年間50円(前期42円)へ増配計画で、配当性向45%以上を維持する方針だ。発行済株式総数(自己株式を除く)に対して1.36%に相当する上限10億円規模の自社株取得枠(取得期間:8月1日から9月30日)も設定するなど、株主還元姿勢の高さも魅力となろう。
AI技術の加速度的な進化は、利便性の向上と同時にサイバー空間における「終わりなき攻防戦」を激化させている。国家レベルの経済安全保障と企業の事業継続を支える「防御壁」として、信頼できる国内セキュリティ企業の存在感は今後ますます高まっていきそうだ。
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