2026年7月16日夜に、トランプ大統領はアメリカ国民向けの演説を行った。この中でトランプ大統領は、第二次トランプ政権発足後1年半においての成果として、インフレが抑え込まれたとか、米国への投資額が過去最高になったとか、幅広い減税を行なったとか、株価が史上最高になったとか、医薬品の価格を大幅に引き下げたとか、国境を安全にして犯罪率を大幅に引き下げたといったことを挙げて誇ってみせた。
だが、これらの成果を誇ってみせることが、トランプ大統領の主眼であったわけではない。トランプ大統領はそうした成果を誇ること以上に、2020年の大統領選挙において様々な選挙不正が行われたことに力点を置き、この選挙不正に関する様々な証拠を一気に公開した。今回は、トランプ大統領がおこなった選挙不正に関する演説とその証拠について、概要を伝えたい。
中国は有権者データを取得していた
2020年の大統領選挙においては、様々におかしなことが現れた。もっとも有名なのは激戦州で現れた「バイデンジャンプ」と呼ばれる怪現象で、ずっとトランプ有利の開票結果が続いてきた中で、開票終盤に入ると突如としてバイデン票だけが一方的に増えるというものだ。こういう現象が何回も繰り返される中で、ついには、バイデン票はトランプ票を追い越していった。ひどい時には、バイデン票が一気に伸びるだけでなく、同時にトランプ票が一気に減少するという珍現象まで発生した。こうしたことから、特にトランプ支持者の中で、当時の選挙結果を疑う見方には根強いものがあった。
主流派メディアや民主党の側では、こうした疑問を持つことを「根拠のない陰謀論」だと扱ってきたが、果たして本当に根拠なき陰謀論だったのかと、トランプ大統領は改めて問うたのである。
今回公開された証拠は膨大であり、内容全部を扱うのは現実的ではない。そこで幾つかポイントを絞った上で、今回明らかにされたものを扱っていくことにする。
まず取り上げたいのは中国がアメリカの有権者のデータを取得し、悪用していたとされることだ。アメリカの有権者に関して、氏名、住所、電話番号、支持政党といったものがわかる2億2000万人分の情報を、中国は専用のデータ取得部隊を用意して、取得していた。その総量は45ギガバイトにも及ぶという。
この件については、こうしたデータがほとんどの州で割と容易に取得できるものが多いうえ、社会保障番号のように機密性の高い情報は州政府によって公開されてはいないとして、この話を大きなものとして扱うべきではないとする見方が、主流派メディアから提出されている。
だが中国は、例えばTikTokのユーザー情報から、本物の氏名、住所、社会保障番号、運転免許番号なども集めていたようで、これらと州の有権者データベースをリンクしながら、非常に確度の高い有権者データベースを構築していたと見られているのである。
というのは、中国は大量の運転免許証を偽造してアメリカに送っていたのだが、こうした偽造運転免許証は、単に見た目をそっくりにしただけのものではなかったのだ。こうした偽造運転免許証には、アメリカ国民が実際に保有する社会保障番号と正確な住所が記載されていた。これによって偽造運転免許証が偽造であることを見抜くのは、ハードルの高いものになっていたという。偽造運転免許証を作り上げるのに、中国がいかに力を入れて取り組んでいたかがわかるだろう。
この結果、偽造運転免許証を利用して偽りの有権者登録を行うことが、かなり容易になっていたようなのだ。
FBIの「ディープステート」による握りつぶし
2020年の選挙では郵便投票が広く行われたが、この郵便投票制度を利用して、中国はこの選挙に介入していた。そしてこれを具体的に示す情報がFBIのアルバニー支局からFBIの本部に持ち上げられていた。この情報の確度は10段階で9~10という極めて高いランクに位置していた。にも関わらず、FBI本部はこの重大情報をなぜか却下したのである。当時のクリストファー・レイFRB長官が、「懸念されるような中国の選挙干渉はない」と議会証言を行い、この発言とアルバニー支局から持ち上げられた情報が矛盾するのは都合が悪いと判断したというのだ。
だが、この情報がFRB本部に持ち上げられた段階では、レイ長官は議会証言をまだ行なっていなかった。議会証言の予定稿を作っていたとしても、重大な事実の発覚を受けて、発言内容を変えればいいだけのことではないか。仮に発言後に発言と矛盾する情報に接したのだとしても、新たな情報を受けて前言を修正することだってできるだろうし、その場合にその誠実な対応は却って国民から評価されるものではないか。このように見た場合に、FBI本部が行った対応は極めて不自然だったことがわかる。
このアルバニー支局から持ち上げられた情報を却下する決定で重要な役割を果たしたのが、第一次トランプ政権時のFBIの防諜部門の副長官補を務めていたニッキー・フロリス氏だ。フロリス氏は「私はこの点で基本的にFBI全体の影の政府を担っている」(I’m basically running a shadow government across the FBI at this point)との文面を残していたことがわかっている。ここで語られている「影の政府(シャドー・ガバメント)」とは、世間でよく使われる「ディープ・ステート」のことなのは容易に想像がつくだろう。彼女がFBI内部においての「影の政府」=「ディープ・ステート」の調整役として動いていたことが窺えるのだ。
「ディープ・ステートなんて陰謀論の中にしかない話だ」と思っている人もいるだろう。だが「ディープ・ステート」は、実はそれほど特殊な存在ではない。現在日本において高市政権が動いているが、自民党の中にも官僚の中にも高市総理を嫌っている人たちが多くいる。彼らが何かと高市政権の足を引っ張る行動に出ているのは、普通に知られている。会社においても派閥があって、反社長派が社長派の足を引っ張る動きをすることだって、普通にあるだろう。それと同じようなことがアメリカでも起こっていて、本来はトランプ政権に忠誠を誓うべき立場にありながら、逆にトランプ政権の足を引っ張る動きをする人たちが多くいることを、「ディープ・ステート」という言葉を使って表現しているだけのことなのだ。
「BLM」もまた
FBIだけに「ディープ・ステート」が存在するわけではない。CIAやNSAといった情報機関も、中国がアメリカの選挙に介入している情報を様々に得ておきながら、連日行われるブリーフィングにおいて、当時大統領だったトランプ氏にそうした情報が一切あがらないようにしていたことも判明した。
中国政府は2018年の半ばから、第1期トランプ政権に打撃を与えようと動き、トランプ大統領に反対する国内外のグループをうまく利用して、トランプ大統領の支持率を低下させたり、トランプ大統領に辞任を迫ったり、再選を阻止することを狙って、様々な工作を行なっていた。このことは、CIA内部で作られた報告書にも記載されていた。だが、こうした報告書の中身がトランプ大統領に伝えられることはなかった。ここから、CIAやNSAのトップ層もまた「ディープ・ステート」として動いていたことがわかるだろう。
ところで2020年といえば、「ブラック・ライブズ・マター(BLM:黒人の命は大切)」の運動が全米各地に広がり、各地で抗議デモばかりでなく、店舗襲撃や出火事件までもが相次いだことを覚えている方も多いだろう。あの「ブラック・ライブズ・マター」運動に中国が背後で関わっていたことを示唆する機密文書も公開された。
中国が行なっていた工作の中には、人種的対立(racial tensions)を駆り立てることが含まれており、より具体的には白人は黒人を嫌悪していると言い立てる、人種的分断が生じている「証拠」としてデモ活動を煽ってみせる、警察と「反差別活動家」との間の対立レベルを引き上げるといったことが、指針とされていた。そうした中国の狙い通りの運動が、全米であれだけの広がりをもって展開されたことを見ても、中国がアメリカの選挙運動にどっぷりと介入していたのは明らかではないか。
にも関わらず、中国によるアメリカの選挙に対する干渉は大したものではないとされ、「アメリカの歴史において最も安全な選挙」ということにされてしまった。主流派メディアなどが伝えたがるこうした評価に大きな歪みがあったのは、明らかではないか。
【つづきを読む】トランプを怒りの演説に駆り立てた「有権者登録」のあまりの杜撰と選挙制度改革への抵抗勢力の厚い壁
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