約5年間のシンガポール生活を経て、日本へ帰国したことを公表したオリエンタルラジオ・中田敦彦&タレント・福田萌夫妻。
福田によると、中田が「シンガポールはもう十分にわかったから、日本に帰りたい」と言い出したことが帰国のきっかけだと明かしている。
前編記事『「税金が安い」というイメージだけで移住してはいけない…中田敦彦・福田萌夫妻が5年で帰国、日本人が知らない「シンガポール移住」の落とし穴』に続き、シンガポールに居住経験がある、生活経済ジャーナリスト・柏木理佳氏が、シンガポール移住に向いている人、向いていない人の特徴について、解説する。
「告げ口国家だから注意しろ」
シンガポールは中国系が74.0%、マレー系が13.5%、インド系が9.0%の多民族国家で、数か国語話せる人は多い。仏教、イスラム教、ヒンズー教、道教、キリスト教など、各宗教に配慮した教会や礼拝室などの施設が街中に平等に共存していて、アジアの異文化を学びたい人には理想的かもしれない。
一方で日本人のコミュニティ形成は強く、日本人社会は狭い。日本企業においても日本同様の組織文化が強く、欧米のフラットな自由さを求めている人にはギャップを感じるだろう。日本人会などや県人会もあるため、高島屋や日本食レストランに行くと知り合いに会うほどである。
他方、様々な異文化、宗教などをまとめるには、厳しいルールが必要で、自由なマレーシアとは違い、窮屈と感じる人もいるだろう。チューインガムの持ち込みや販売、製造が禁止されているだけでなく電子タバコの持ち込みも禁止されている。
それだけでなく、私が現地で出会った日本人に最初に言われたのが「シンガポールは、告げ口国家だから注意しろ」ということだった。ゴミのポイ捨てやトイレで水を流さなかったりすると、気づいた人が当局に連絡することもあるそうだ。
その分、シンガポール人は正義感が強く、地下鉄の中で痴漢にあいそうになった女性がいると躊躇なく止めに入ったり、妊婦に席をゆずったり、エレベーターのない階段でスーツケースを持って上がっている女性をサポートすることは多く見られた。
育休を取得する習慣はない
では、女性にとって働きやすい国なのだろうか。
実は、現地では、育児休暇を取得するという感覚はなく、妊婦も出産の1か月前くらいまで働き、出産後も、日本のように育児休暇を1年間取得する習慣はない。男女が平等に昇進する代わりに、出産後、赤ちゃんとゆっくり過ごす時間もない。
その分、シンガポール人は、ウィークデーは保育所+祖父母の自宅で過ごし、週末のみ両親が連れて帰り面倒をみるといった習慣がある。
つまり、祖父母がシンガポールに住んでいない日本人には、ワンオペになりがちかもしれない。日本人駐在員の帰宅が遅く、奥様が育児ノイローゼーになり離婚した例も多い。
それでも精神的にも体力的にもたくましく、積極的に異文化コミュニティに入り込める人には向いているかもしれない。
給与は高いが、物価も高い
もう一つの問題は物価高である。
シンガポールの給与は、平均で750万円から800万円ほどであり、日本の1.5倍から2倍と高く、上昇率も4~5%である。
しかし、物価はそれ以上に高い。
英米に比べるとそこまで高い英語力を求められておらず、日本企業などに採用されやすい。しかし、現地採用の場合、家賃手当が出ないケースもあり、いくら給与が高くても生活コストが払えないこともあるだろう。
最近、海外駐在員が減少している。現地の家賃手当や日本と現地の2か所での賃金などコスト負担が増加しているためである。シンガポールも同様である。
1人用のコンドミニアムでさえも賃貸は月30~40万円し、ファミリータイプだと70万円するところもある。シェアハウスのように一緒に住むこともある。
セキュリティは落ちるが現地の9割の人が住んでいるHDBは、日本の公営住宅やURのような住宅であるが、数千万円から購入できていたのが、現在では部屋のサイズによって1億円もするところもある。
基本的に外国人労働者は購入できないが、大家さんの承認を得て、入居条件があえば賃貸できるケースもある。たくましい人には乗り越えられるかもしれないが、慣れていないとハードルが高いだろう。
家賃が安いエリアは注意
また、シンガポールは治安がよく日本人女性にも安心だと旅行会社などから聞いたことがある人も多いだろう。ただ実際に住むとなると話は違う。
リトルインディアやゲイランなどでは酔客によるトラブルもあり、私は、住んでいたフラットまで、バスで通勤していたが、夜6時以降は乗らないようにしていた。経由するバス停によっては、客層が悪い乗客も途中で乗車するためだ。
また、職場で食事会がある日は、夜は7時すぎには女性は帰宅し、タクシーで帰宅する場合も、なるべく1人では乗らず、ホテルやスマホで予約しナンバーなどがわかる状態で乗車していた。
家賃が安めのエリアとなると、治安が不安である。
シンガポール移住するなら十分な下調べが必要
食事も高い。激安の屋台が集まっているホーカーセンターでさえも1000円もかかり、マクドナルドビックマックは日本の2倍の800円あまりもする。
シンガポールは狭い国で端から端まで1時間もあれば横断できるが、タクシー代の初乗りは日本とさほど変わらず、平均で4000円程度ですむ。
しかし、車は驚愕の高さである。渋滞を避けるため政府は車の購入を抑制したく、登録料や税金なども高く日本で250万円の車がシンガポールでは4倍から7倍、1000万円以上もする。
ここまで読んでくださった方はわかったかと思うが、たとえ、賃金が高くても優雅な暮らしはできず、むしろ生活レベルは日本より下がり、貯金することもできないだろう。
また、税金は安いが、現地でも社会保険料、年金などが引かれ、日本でも引かれるため、日本での貯金、年金などと整理して積み立てる必要がある。
シンガポールの年金制度は、日本のように賦課方式ではなく、個人が、自分で自分のために強制積立制度に加入する義務がある。
CPF(中央積立基金)が、年金、医療費などの社会保障制度を担っていて、給与の一定割合を毎月積み立て、政府管理下で必要な時に引き出す。
これらを含めて、自分で資産管理できる人が向いているといえる。
日本人がシンガポールから帰国する理由は、ビザが取得できないという現実的な問題に、育児環境が想像と違った、溶け込めないといったコミュニケーションの問題がある。さらに、直近では物価高という問題がある。
いずれも事前に十分に調べておかないと理想とのギャップで挫折感とともに帰宅しなければならなくなる。
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