メディア出演の少ないアーティストが集結
13日夜、今年で2年目となる『MUSIC AWARDS JAPAN 2026』の授賞式が開催される。
『MUSIC AWARDS JAPAN』は「日本レコード協会」「日本音楽事業者協会」「日本音楽制作者連盟」「日本音楽出版社協会」「コンサートプロモーターズ協会」という5つの音楽団体が設立した日本最大級の国際音楽賞。アーティストや音楽関係者5000人超の投票で各部門の受賞者を決定していく。
「世界とつながり、音楽の未来を灯す」というコンセプトを掲げた日本初の本格的な国際音楽賞であり、アメリカの『グラミー賞』やイギリスの『ブリットアワード』を引き合いに出しているように「権威のある賞で日本の音楽文化を世界に広げていく」という狙いがうかがえる。
最大の注目は多くの日本人が納得しうるアーティストと楽曲がそろうこと。他の音楽賞が、芸能事務所、レコード会社、放送局や出版社などの影響が懸念される中、透明性や公平性にこだわる“音楽ファースト”の『MUSIC AWARDS JAPAN』だからこそメディア露出の少ない米津玄師やFujii Kazeらが出演するのだろう。
今年の同音楽賞とその放送・配信にはどんな見どころがあるのか。さらに同賞の位置付けや音楽シーンへの影響などを掘り下げていく。
各賞のノミネートは納得の顔ぶれ
13日のスケジュールは、13時~16時に「Premiere Ceremony」(一般部門授賞式)、18時~19時30分に「Red Carpet」(レッドカーペットイベント)、19時30分~22時50分に「Grand Ceremony」(主要部門授賞式)。
「Premiere Ceremony」(一般部門授賞式)はTOKYO MXで生放送、YouTube世界配信、ABEMA、Lemino、radikoで生配信。「Red Carpet」(レッドカーペットイベント)はNHK BS、NHK BSP4Kで生放送、ABEMAで生配信。「Grand Ceremony」(主要部門授賞式)はNHK、NHK BSP4Kで生放送、YouTube世界配信、ABEMA、Lemino、NHK ONE、radikoで生配信される。
なかでもメインは、主要部門の授賞式とトップアーティストがパフォーマンスを披露し、NHKが生放送する「Grand Ceremony」。主要6部門の「最優秀楽曲賞」「最優秀アルバム賞」「最優秀アーティスト賞」「最優秀ニュー・アーティスト賞」「Top Global Hit From Japan」「最優秀アジア楽曲賞」で授賞式が行われる。
各賞のノミネートは、「最優秀楽曲賞」(昨年はCreepy Nuts『Bling-Bang-Bang-Born』が受賞)は、HANA『Blue Jeans』、米津玄師『IRIS OUT』、サカナクション『怪獣』、アイナ・ジ・エンド『革命道中 – On The Way』、M!LK『好きすぎて滅!』。
「最優秀アーティスト賞」(昨年はMrs. GREEN APPLEが受賞)は、Fujii Kaze、HANA、Mrs. GREEN APPLE、サカナクション、米津玄師。
「最優秀ニュー・アーティスト賞」(昨年はtuki. が受賞)は、CANDY TUNE、HANA、luv、STARGLOW、ブランデー戦記。
「最優秀アルバム賞」(昨年は藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』が受賞)は、Mrs. GREEN APPLE『10』、Various Artists『Dear Jubilee -RADWIMPS TRIBUTE-』、星野源『Gen』、Fujii Kaze『Prema』、サザンオールスターズ『THANK YOU SO MUCH』。
「Top Global Hit From Japan」(昨年はYOASOBI『アイドル』が受賞)は、XG『HYPNOTIZE』、米津玄師『IRIS OUT』、米津玄師,宇多田ヒカル『JANE DOE』、LiSA『ReawakeR(feat.Felix of Stray Kids)』、Ado『うっせぇわ』。
「最優秀アジア楽曲賞」(昨年は【South Korea】aespa『Supernova』が受賞)は、【Indonesia】Silet Open Up『Tabola Bale』、【Philippines】Cup of Joe『Multo』、【South Korea】PLAVE『Dash』、【South Korea】WOODZ『Drowning』、【South Korea】HUNTR/X『Golden』。
「実力と知名度を兼ね備えたトップアーティストとその楽曲」という点では昨年同様に、これ以上ない顔ぶれがそろったのではないか。
投票数が5000超と多いことから「関係者の総意とみるか、人気投票とみるか」「『今、その楽曲なの?』というタイミングの微妙なズレ」など多少の気になる点こそあるが、昨年の受賞者を見てもこれまでの音楽賞とは一線を画していることがわかるだろう。
パフォーマンスの人選にも妥協なし
「Grand Ceremony」の見どころは授賞式だけではない。
パフォーマンスアーティストとして、Fujii Kaze、HANA、MISAMO、サカナクション、東京スカパラダイスオーケストラ with Special Guests[LiSA、TAKUMA(10-FEET)、アイナ・ジ・エンド]、羊文学、米津玄師、FRUITS ZIPPER、M!LK、さらにグラミー賞5冠を誇るSam Smithを含む13組が発表されている。
昨年はオープニングの「RYDEEN REBOOT」から、Perfume、ちゃんみな、Number_i、Vaundy、細川たかし、10-FEET、新しい学校のリーダーズ、YUKI、岡村靖幸らが次々に登場する強烈な構成・演出で度肝を抜いただけに今年の期待値も大きい。まずは開始時刻の19時30分にSNSが大きく動くことになるだろう。
また、「Grand Ceremony」のMCは菅田将暉が務め、開始早々に「並んで立つMrs. GREEN APPLE、藤井風、Creepy Nuts、Awich、AIにインタビューする」というレアなシーンが見られた。
その後も授賞式の合間にYOASOBI、Creepy Nuts、ちゃんみな、宇多田ヒカル、矢沢永吉、藤井風、AI×Awich、Mrs.GREEN APPLEらのステージが行われ、授賞式のプレゼンターを松重豊、小泉今日子、浅田真央、三浦知良、松本隆、役所広司らが務めるなど、最後まで豪華なキャスティングが貫かれていた。
今年もMCを菅田将暉が務めるほか、プレゼンターとして誰が登場するのか。特別な音楽賞であることを証明するべく、昨年と同等以上のキャスティングが期待されている。
昨年の放送では最後に「MUSIC AWARDS JAPANの選考は透明性と公平性を守るため開票、投票結果をCEIPAが厳重に管理しています」という文字が表示されていた。
これはアーティストにとっての名誉となる音楽賞という点を誇示するとともに、疑念や無粋なツッコミを入れさせないものにも見える。おそらくこれは今年も同様であり、ブランディングの一環として続けていくのではないか。
海外で日本の音楽が歓迎されている
音楽シーンそのものに目を向けると、昨年から今年にかけて日本のアーティストをめぐるグローバルな動きに拍車がかかっている。
世界の音楽チャートに日本の楽曲がランクインし、ストリーミング再生回数も大幅にアップ。Adoのワールドツアーが33都市で開催され50万人超を動員するなど、海外公演が活発に行われている。さらに5月16日、アメリカ・ロサンゼルスで日本のアーティストのみが出演する音楽フェス『Zipangu』が開催された。
Fujii Kaze、米津玄師、YOASOBI、Creepy Nutsらがグローバルな活躍をするほか、シティポップの人気もまだまだ健在。杏里のアメリカツアーや高中正義のワールドツアーなどが行われ、現地の人々を熱狂させている。しかも海外ファンの約8割が35歳以下というデータもあるなど、「名曲を見極めて楽しむ」という音楽性は日本人より豊かなのかもしれない。
昨年に続いて今年も放送局はNHKだが、「中継を担っている」と書くほうが適切だろう。前述したようにYouTubeなどで同日配信されるほか、昨年は制作を『ミュージックステーション』を手がけるテレビ朝日の利根川広毅のほか多くの外部スタッフが担っていた。
これはテレビ放送向けではなく、音楽とアーティストのために制作するコンテンツであり、「決してNHKの音楽番組ではない」ということ。逆に、だからこそめったにメディア出演しないアーティストが集い、「『紅白歌合戦』以上」と言われる豪華キャストを実現できる。
さらにそんな音楽とアーティスト優先で作られたコンテンツだからこそ、動画配信によって海外の人々にアーティストの魅力が伝わりやすいとも言える。「欧米をはじめとする海外では英語以外の楽曲を聴くことが主流になりつつある」とみなす音楽関係者もいるという。
たとえばアメリカでは自国や韓国とは異なる楽曲とアーティストを求めていて、特に独自性の高い日本の楽曲とアーティストは歓迎されている。つまり、「ほぼそのまま海外で勝負できる」ということだろう。
グローバル展開の拠点作りが急務
「国際音楽賞の設立と海外での高評価のタイミングが重なった」とみるか、「これまでその魅力を世界にアピールできていなかっただけ」とみるかはさておき、ポジティブな方向へ走り出しているのは間違いない。
日本の音楽シーンはグローバルな展開が遅れがちで、その原因は配信の不整備と言われてきた。なかでも楽曲やアーティストの問題以上に問題視されていたのは音楽番組のYouTube配信がなく、海外の人々に見聴きしてもらえないこと。
個別での配信でアピールするのも限界があるだけに、『MUSIC AWARDS JAPAN』のようにYouTubeで世界配信されるコンテンツの存在は大きく、海外からの反響が昨年以上に集まれば日本の音楽業界や音楽番組も変わらざるを得ないのではないか。
特に各局はいまだに視聴率優先の制作が続き、配信の整備が進まないため、すでに一定の知名度があるアーティストの出演メリットは少なくなっている。
今年、CUTIE STREETが3月に音楽専門チャンネル・Mnetの『M COUNTDOWN』、6月に公営放送・KBSの『MUSIC BANK』と韓国の音楽番組に連続出演した。どちらもK-POPにおけるグローバル展開の拠点であり、現在CUTIE STREETは両局のYouTube配信を通して海外のファンを増やしている。
今後どんなに『MUSIC AWARDS JAPAN』の権威と質を高めても、年に一度のイベントでは限定的なアピールに留まるだろう。「それ以外にもグローバル展開の拠点をいかに作っていくか」が重要となる。その筆頭が各局の音楽番組が変わることであり、だからこそ今年の『MUSIC AWARDS JAPAN 2026』は、より世界に向けたパフォーマンスを期待したい。
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