ラーメン店は、「いまどれだけ並んでいるか」で語られやすい。SNSで話題になった、テレビで紹介された、休日には行列ができる——。そうしたわかりやすい“ブーム”は、人気を表す一つの目安ではある。
だが、本当に強い店は、ブームの熱量が少し落ち着いたあとにこそ見えてくる。流行に乗って一度だけ行く店ではなく、「やはり、ここはうまい」と思い出されて再訪される店。それが、醤油らーめん専門店「金久右衛門」だ。
行列の長さだけでは測れない人気がある
ラーメンの世界には、派手に話題をさらいながら、数年後にはその名をあまり聞かなくなる店も少なくない。
その点で、「金久右衛門」の立ち位置は興味深い。
関西在住で、グルメ系雑誌やWebメディアに携わる編集者に同店の印象を聞くと、「圧倒的な行列店ではないが、何年か前にラーメン好きの間で話題になり、その後も“結局うまい”という評価で人気を保っている店」といった趣旨の答えが返ってきた。
つまりこの店は、“いま一番の話題店”として語るよりも、一時の人気で終わらず、大阪人の胃袋をつかみ続けている実力店として見るほうが自然なのだろう。
黒いスープを前に、筆者も少し構えた
同店の看板メニューは「大阪ブラック」。黒いスープと聞くと、“味がかなり濃いのではないか”と想像する人もいそうだ。筆者自身も食べる前までは、そうした印象を持っていた。
着丼した瞬間、やはりまず目に飛び込んでくるのは、スープの黒さである。見るからに濃そうで、醤油の強さを予感させる。だが、ひと口すするとその印象は少し変わった。
まず感じるのは、醤油の香ばしさである。そこにじんわりとコクが重なってくるが、黒い見た目から想像するほど後味は重くなかった。第一印象では構えさせるが、食べてみると、ただ強いだけではなく、最後まで食べ切らせる設計になっている。
来店していた客に感想を聞くと、このような言葉が返ってきた。
「見た目はかなり濃そうなんですけど、実際に食べると意外と重たくないんですよね。醤油の香ばしさはしっかりあるのに、後味はわりとすっきりしていて、ふとまた食べたくなる味だと思います。結構よく来ますよ」
見た目のインパクトは強い。しかし、それだけで終わらず、食べたあとに「また来たい」と思わせる。その着地のよさが、この店が長く支持されてきた理由なのかもしれない。
ブームが去ったあとに残る店こそ、本当に強い
そして今回は、前出の編集者のススメもあり、大阪ブラックに唐揚げを3つ付けてみた。大阪ブラックは見た目ほど過剰にしょっぱいわけではなく、濃口醤油の香ばしさが先に立つ。そのため、唐揚げの衣の香ばしさや肉の旨味とぶつかることなく、むしろ互いを引き立て合う。
ラーメンだけで完結させるのもよいが、唐揚げを添えることで、この一杯の懐の深さがよりわかる気がした。
唐揚げのわかりやすい旨さが、スープの輪郭をよりはっきり感じさせる。逆に、スープの香ばしさが唐揚げの満足感を引き上げる。こうした“食事全体としてのバランスのよさ”もまた、長く支持される店の条件なのだろう。
今回改めて思ったのは、ラーメン店の人気は「どれだけ並んでいるか」だけでは測れないということである。もちろん、行列はわかりやすい人気の証ではある。
だが、同店のように、ブームが落ち着いたあとも“ちゃんと客が残る”店には別の強さがある。
どれだけ「また行こうかな」と思い出されるか。
黒い見た目で惹きつけ、香ばしい醤油のうまさで納得させ、食べ終わったあとには“また来てもいい”と思わせる。
それがあるからこそ、「大阪ブラック」は長く愛されているのかもしれない。
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