ひとりごはんは気楽ではあるが…
「ふたり暮らしからひとり暮らしになって2年余り。わたしの日々の暮らしやごはん作りもがらりと変わりました」
これは、2月20日に発売された『わたし思いの自炊ごはん ひとりの料理を楽しむヒント』(こてらみや著/家の光協会)の「はじめに」に書かれていたものだ。
著者で料理家のこてらみやさんは、夫の生前、「あれ食べたい! これも食べたい!」という彼の声が、ごはん作りのモチベーションになっていた。だが自分ひとりになって、料理のモチベーションが上がらず、キッチンに立つのが億劫になることもあったという。
自分ひとりのために作るごはんは、実際に気楽なものである。お腹が空かなければ作らなくていいし、なんなら一食くらい抜いたっていいのだ。
でも、それが続くとどうなるか。
「自分が何を食べたいのかわからない」時は
農林水産省の「食育に関する意識調査」によれば、誰かと食事を一緒にしている人は、主食・主菜・副菜を揃えた食事が「ほぼ毎日」という割合が62.3%に対し、孤食中心では42.4%。
また、朝食を「ほとんど毎日」食べると回答した人の割合も、孤食がほとんどない人は86.8%だったのに対し、孤食中心の71.1%は週2日以上だった。
自分ひとりの食事はなおざりにしても誰にも何も言われない。気楽ではあっても、そのツケは自分の体や心に返ってくるときがくる。こてらさんもそう感じたのかもしれない。
本書は、「自分が何を食べたいのかわからない」「料理のモチベーションが上がらない」状態を抜け出し、自分自身の声を聞きながら、晩酌を楽しめるようになったこてらさんの、「がんばらずにひとりごはんを回す仕組み」をていねいに紹介する。
第1話「お腹が空いていない時は『野菜の塩漬け』とお酒で始める。料理を億劫にしない『ひとりごはん』の冷蔵庫にあるもの」では、「塩でもむだけ」「酢に漬けるだけ」という、ごくシンプルな野菜の保存法を紹介した。
続く第2話「冷蔵庫に『塩漬け』『酢漬け』野菜があればお腹が空いてもすぐにごはんが完成。ひとりごはんを助ける『おかず貯金』」では、「小松菜の塩漬け」を使ったレシピを紹介している。そのままならおいしい漬けものとして食べられ、ほかの食材と炒め合わせればすぐおかずができる、料理のハードルを下げてくれるアイディアだ。
本書が教えてくれるヒントはそれだけではない。第3話では、日々のおかずを作る時に、多めに作ってストックできる「シンプルな野菜の常備菜」の中から、「おかずきのこ」を紹介する。
ソースがわりにも汁ものにもなる「うまみのもと」
おかずきのこ
材料(作りやすい分量)
しいたけ(薄切り) 6枚分
えのきたけ(半分に切る) 200g
しめじ(ほぐす) 100g
昆布(2cm四方) 6枚
◎酒 みりん しょうゆ
作り方
1 鍋に水50mlと昆布を入れ、1時間ほどおく。
2 1の鍋に酒、みりん、しょうゆ各50mlを加え、きのこも加える。中火でひと煮立ちさせて混ぜ、ふたをずらしてのせて弱火で10分煮る。ふたを取ってときどき混ぜながら5分ほど煮る。
3 粗熱をとって保存びんに移し、表面にラップを密着させて冷蔵庫で保存する。
*日持ちは冷蔵庫で2週間ほど。
少量の水と調味料できのこを煮た「おかずきのこ」は、なめたけのようなあまじょっぱさで、ご飯によく合う味つけ。
本書では「おかずきのこ」の他にも、茹でたほうれん草を冷水で冷やし、水けを絞って塩、しょうゆ、酒で調味しただし汁に漬けた「ほうれん草のおひたし」や、皮をむいてひと口大に切ったじゃがいもを少量の水とバターと塩を加えて蒸し煮し、汁気をとばした「じゃがいものバタ蒸し」なども紹介している。
単品の野菜を飽きのこない単純な味つけで調味した「シンプルな常備菜」が何品か冷蔵庫にあると思うと、いつでもごはんにできる安心感が生まれる。
第4話「ひとり暮らしの料理家が実践する『シンプル常備菜』次回の食事作りがらくになる『おかず貯金』のすすめ」では、おかずきのこを使った調理器具を使わない、ご飯にもお酒にもあう一皿を紹介する。