「太り気味だから、ごはんをお茶碗半分にしているのに痩せない」「血圧が高いから塩分を控えるように家族に言われた」……こんな経験がある方、少なくないのではないでしょうか。実はそれ、日本人に合っていない健康法かもしれません。
同じ人間であっても、外見や言語が違うように、人種によって「体質」も異なります。そして、体質が違えば、病気のなりやすさや発症のしかたも変わることがわかってきています。欧米人と同じ健康法を取り入れても意味がないどころか、逆効果ということさえあるのです。
見落とされがちだった「体の人種差」の視点から、日本人が病気にならないための健康法を、徹底解説してロングセラーとなった『欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』が全面改訂されて『最新 欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』として新たに刊行されます。
新型コロナの流行をはじめ、旧版刊行からのおよそ10年のあいだの医学・健康をめぐる新知見をも取り込んだ本書。今記事シリーズでは、この『最新 欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』から、とくに注目の話題をご紹介していきましょう。
*本記事は、『最新 欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
「日本人には効果が期待できない」、健康の常識
本書を手に取ってくださった皆さん、またお会いできて嬉しいです。本書『最新 欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』は、刊行まもなくベストセラーになり、ありがたいことに現在も多くの皆さんにお読みいただいている前書『欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』の最新版です。
前書が世に出た2016年から約10年、この間に新型コロナウイルス感染症が世界を席巻しました。人類にとって未知の脅威が姿を変えながら長く続き、医療や福祉、政治、経済、そして人々の価値観を揺るがしました。やはり健康が一番だと痛感した人も多かったと思います。
では、そんな皆さんにクイズです。次の3つの健康法のうち、正解はどれでしょうか。
次の3つの健康法、正しいのはどれ?
- グルテンフリーで腸内環境と質を改善
- ナッツとオリーブ油で健康的にダイエット
- 骨を強くするため、牛乳をしっかり飲んでいる
じつは、すべて間違いです。正確に言うと欧米人には有効でも、日本人には効果が期待できません。いつまでも健康で若々しくありたいと願う気持ちに国境はなくても、欧米の健康法が同じように効くわけではないのです。日本人と欧米人は体質が違うからです。
体質の特性にあわせた、予防法や治療法がある
体質は持って⽣まれた遺伝⼦を基礎として、⾷⽣活や⽣活習慣の影響を受けてできています。⼀⼈ひとりの体質もあれば、⽇本⼈に共通する体質もあり、もっと⼤きくアジア⼈の体質もあります。世界の人が、それぞれ独自の体質を身につけてきたなかで、とりわけ日本は、青い海という自然の境界で他国と隔てられ、他の人種と交わる機会が多くありませんでした。
このことが、固有の言語、習慣、食生活、美意識、信仰をはぐくみ、長い歳月のうちに日本人の体質が作られました。欧米はもとより、アジアの他の地域とも異なる体質です。欧米人とは肌や髪、瞳の色などの外見だけでなく、筋肉のつきかたや脂肪の質、体温、食物の消化吸収力、アルコールの分解力、酵素やホルモンの量、腸内環境など、体の中も違います。
体質が異なれば、病気のなりやすさや発症のしかたも変わるため、日頃の健康法や病気の予防法、そして治療法も同じというわけにはいきません。
⽇本は1980年代なかばに平均寿命世界⼀になり、その後も世界トップクラスの⻑寿国です。しかしながら近年では、糖尿病をはじめとする⽣活習慣病や、欧⽶型のがんと⾔われる肺がん、⼤腸がん、乳がん、膵臓がんなどが増えています。じつは、ここに深くかかわっているのが、日本人の体質に必ずしも合わない⾷⽣活や⽣活習慣、そして健康法なのです。
さまざまな国から移民を受け入れてきた米国には、それぞれの人種に最善の医療を提供するための「人種差医療(race-conscious medicine)」という考え方があります。これは、世界各地の人が作り上げてきた体の特性に目を向けた概念であり、忌(い)むべき差別とは根本的に異なることに気をつけてください。
これに対して日本では、人種による体質の違いが広く取り上げられることはありませんでした。人種差の視点から書かれた医学書もほとんどなかったと思います。日本には他の人種の人が少ないので、人種の違いを意識せずにきたからでしょう。
ゲノム解析技術の進展が明らかにした「日本人の体質と病気」
転機となったのがゲノム解析技術の急速な進歩です。
遺伝子情報を迅速かつ正確に分析できるようになったことで、体質のもととなる遺伝的素因の特徴が明らかになりました。ここに、以前から地道に進められてきた疫学研究、基礎研究、臨床研究による膨大なデータを巨大コンピューターをもちいて統合することで、日本人の体質や、その体質を背景に発生する病気の全体像が見えてきました。
本書『最新 欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』では、これらの新しい知識をやさしい言葉で説明しながら、日本で暮らす日本人にとって 本当に有効な健康法と病気の予防法について、皆さんと一緒に考えます。
改訂にあたって統計データを最新のものに更新し、新型コロナの流行をはさんだ近年の傾向を再検討しました。すべての章を書き直し、昨今増えているアレルギー疾患と認知症、そして、膵臓がんについて、あらたな章を設けて論じています。
民族や人種の体質を知ることは、その集団の暮らしと伝統を知ること
冒頭の第1部第1章では、体質とは何か、人種によって病気の発症率にどれほど差があるか説明します。続く第2章で、欧米生まれの健康法のうち、日本人には合わないものを調べましょう。
第2部では、いわゆる食の欧米化が日本人の病気をどう変えたのかに目を向けます。続いて、 代表的な生活習慣病である糖尿病を第4章で、高血圧を第5章で、脂質異常症と動脈硬化を第6章で取り上げて、その発症と進行を日本人が食い止めるのに必要な正しい知識を明らかにします。
そして第3部では、日本人の死因第1位を占める悪性新生物(がん)を扱います。日本人の体質がおよぼす影響を第7章で考えたのち、近年増えた大腸がんを第8章で、世界でも東アジアに 発生が集中する胃がんを第9章で、急増する女性の乳がんを第10章で、早期発見と治療が難しい膵臓がんを第11章で検討します。遺伝的に見ると、いずれも日本人がなりやすいがんです。
各章の内容は独立していますが、まずは第1章に目を通すことをおすすめします。遺伝的素因について基本を押さえておけば、本書全体がぐっと理解しやすくなるはずです。 民族や人種の体質を知ることは、その集団の暮らしと伝統を知ることです。日本人は何を食べ、どんな生活を送り、何を大切に生きてきたのでしょうか。そんな日本人がこれからも健康でいるために、守るべき習慣、変えるべき習慣は何でしょう。
本書を読み進むうちに、きっと納得できる答えが見つかります。
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体質は遺伝的素因とさまざまな環境要因がからみあってできており、人種によって大きく異なります。「日本人が作り上げてきた体質」を知るヒントを、遺伝と環境をキーワードに探っていきます。
最新 欧米人とはこんなに違った日本人の体質
科学が示す、人種と病気の新常識
最新研究でわかった、「日本人のための健康法」とは?
長い年月の中で、欧米はもとよりアジアの他地域とも異なる独自の「体質」を育んできた日本人。体質が違えば病気のなりやすさも、発症のしかたも変わります。そのため私たち日本人は、日頃の健康法や病気の予防法も、他の国と同じというわけにはいかないのです。
本書では、見落とされがちだった「体の人種差」の視点から日本人にとって本当に有効な健康法と、病気の予防法を徹底解説。日本人がこれからも健康でいるために、守るべき習慣と変えるべき習慣が見えてきます。