かつて活況にあったレンタルビデオ市場において、トップに君臨していた「TSUTAYA」。そして二番手には、ライバル「ゲオ」の存在があった。それから時を経て、市場の衰退とともに、両者の明暗は大きく分かれている。
かたやTSUTAYAは、ピーク期には全国に約1500弱あった店舗が次々閉店に追い込まれ、今や667店舗(2026年2月時点)までその数を減らしている。一方、ゲオは環境変化を乗り越えて、今なお業績を飛躍的に伸ばし続けている。はたして両者の「違い」とは何だったのか――流通アナリストの中井彰人氏が解説する。
【前編記事】『TSUTAYA「止まらぬ閉店ラッシュ」はなぜ起きた…レンタル店は激減し、空白地帯も生まれた《哀しきいま》』よりつづく。
「中古ゲーム」強化でノウハウを蓄積
2010年頃までは出店やM&Aを駆使して売上2500億円ほどに成長したゲオだが、TSUTAYA同様、コンテンツの現物ビジネスが衰退へと向かう過程で、長らく伸び悩みの時期が続いていた。しかし、DVD・CD、書籍を中心商材としたTSUTAYAとは異なり、ゲオにはこの時すでにゲーム販売、中古取引という柱があった(【図表1、2】参照)。
今ではオンライン主流のゲームも、かつてはソフト現物があり、これが販売の対象であった。ゲームソフトは、子どもや若者にとっては結構高い買い物。そのため、遊び終わると売って、少しおカネを足して次を買う、というパターンが多く存在し、ゲームの中古市場が昔から成立していた。
ゲオはこの中古ゲームを強化していたため、中古ビジネスについてノウハウを蓄積していくこととなる。そして、中古リユース市場が認知されていくと共に、ゲオはリユースビジネスで事業を再構築するようになっていくのである。
【図表3】はゲオの事業別売上の時系列推移である。2000年代はセル、レンタルを伸ばして成長していたが、2010年代以降、徐々にその拡大が止まり、減り始めている様子がわかるだろう。
その頃から中古メディアとして一定の売上を確保していたのが、中古ゲームであるが、それ自体が拡大して事業を支えた、というわけでもない。ゲーム自体も、映像、音楽よりはゆっくりではあるが、オンライン化に伴ってソフトの現物取引が減っていく方向性だったからである。
そんなゲオを救ったのは、買収した中堅中古ゲームチェーンが持っていた、いわゆる生活雑貨のリユース店「セカンドストリート」(以下、セカスト)であった。
「ありがとうメルカリ」セカストに追い風
ゲオはセル、レンタルの低迷を補い、店の全部または一部を転換する業態としてセカストを活用した。そして、幸運なことにゲオにさらなる“追い風”が吹く。コロナ禍の巣ごもりによって、「家の中を見直し、不用品を減らすために売ってしまおう」というリユースの動きがにわかに盛り上がったのだ。
それもセカストが興したウェーブはなく、フリマアプリ「メルカリ」がこの時期、一気に日本中に広まったことによる。巣ごもりで家の中のものを見直して、不用品を出品しておけば、それまでは絶対に買う人などいないだろう、と思っていたモノが、メルカリでは、売れていくことがわかったのだ。
「家がスッキリした上に、少しでもおカネになるなら」と、リユースの参加者は一気に拡大、リユース市場は市民権を得たのである。2018年に2.1兆円だったリユース市場も、2025年には3.3兆円まで拡大したといわれている(【図表4】参照)。
メルカリは中古品の買い手を全国でマッチングすることを可能にしたため、リユースの可能性を大きく広げた。だがその一方で、リユース参加者の母集団が大きくなってくると、メルカリの個別交渉、個別発送がめんどくさいという課題も浮き彫りにした。
その結果、少し価格は安くなってしまうが、セカストの実店舗に持ち込んで、一気に換価する方が手間がない、という人たちも増えた。つまり「メルカリの普及がセカストの分の市場開拓もやってくれた」ということになる。かくしてセカストは急成長し、そして今も伸び続けているというわけだ。
“泥臭い”チェーンから業界最大手に
2024年度のゲオの売上は4276億円、そのうちリユース売上が2739億円を占めている。2025年度もセカストがけん引して、売上見込みは4700億円となっている。また、最新の2026年3月期第3Q実績では、衣料品、雑貨リユースは前年比+18%と好調に推移しているようだ。
今期、セカスト業態の店舗数がゲオ業態を抜くことになる。2026年10月には、ゲオから「セカンドリテイリング」と社名変更して、正にセカンドハンド(中古品)の小売業であることを高らかに宣言するという。ゲオは、衰退するレンタル、セル事業者からリユースビジネス最大手への事業転換に成功したのである。
2000年代にTSUTAYAとゲオがレンタル、セルを軸としたビジネスで競い合っていた頃には、映像や音楽の発信者として《大型複合書店+カフェ》を展開しているTSUTAYAこそが、どう見ても業界を代表する存在であったし、ゲオは中古ゲーム軸のロードサイドの“ちょっと泥臭い”チェーンに見えた。
しかし、TSUTAYAはそこからポイント経済圏を目指すプラットフォーマーに脱皮しようとして、新興のデジタルプラットフォーマーに敗れ去った(とはいっても、今でも書店業界では紀伊國屋書店と双璧の大手であるのだが……)。ゲオはリユースという、これも泥臭い店舗ビジネスを地道に開拓しているうちに、環境変化が追い風となって、新たな市場の大手となり、今後も成長が期待されている。
この両者の明暗ぶりは、市場の環境変化を読み切ることがいかに難しいか、そして、技術革新がおこす変化のスピードは常に想像を超えていることを、まざまざと我々に痛感させる話である。
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