高市早苗総理の名を冠した暗号資産「SANAE TOKEN(サナエトークン)」を巡り、新事実が発覚した。実は、サナエトークンの「設計者」が、以前にも他の“大物政治家”の名を冠した暗号資産を計画していたのだ。さらには、高市事務所との“深いつながり”まで明らかになり――。
トランプ選対との関わり…?
昨年11月初頭、ビデオ会議ツール・ZOOMを使い、ひげ面の男性がプレゼンをしている。サナエトークンを営業するノーボーダー幹部・松井健氏(株式会社nue代表)である。
松井氏が説明しているスライド資料には、高市総理の肖像写真とともに、こんな文言が踊っている。
〈高市首相は、閉塞した時代を切り拓くニッポン再興のシンボル〉
サナエトークンは、政治系YouTubeチャンネル「NoBorder(ノーボーダー)」内のプロジェクトの公式トークンとして発行された。その運営会社の幹部が、この松井氏である。
松井氏は自身のXでトークンの設計から発行に至るまでの全責任を追う立場にあることを公表。そんな彼に浮上したのが、明治天皇の玄孫で作家の竹田恒泰氏が計画していた暗号通貨事業に関する「返金トラブル」だった。
(詳細は前回記事を『サナエトークン「溝口氏と並ぶ謎のキーマン」の正体…竹田恒泰氏が激白「数千万円の現金をボーンと持ってきた」』参照)
松井氏はこうした投資案件で騒がれており、一部で有名だという。年齢は30代前半とされるが、その経歴は謎めいている。関係者の間では「天才ハッカー」「ばく大な資産を持っている」といった〝伝説〟がまことしやかに語られる。
「松井さんは仮想通貨などの投資事業や、宇宙関連ビジネスなどを手がけている。常に微笑を浮かべながら、物腰やわらかに、弱々しく話す。まともで礼儀正しい印象を抱かせ、経済界や芸能界の大物に取り入るのが、非常にうまい。
トランプ大統領とのツーショットを周囲に見せ、『トランプ選対にも関わっていた』と自称していた。『最初は政党を作ろうと思っていたけど、裏方に回ることにした』と、やけに壮大なことを言っていましたね」(松井氏の知人)
麻生事務所との繋がりも噂されていたが…
そんな松井氏だが、政界人脈は確かにあるようだ。故・安倍晋三元総理の妻である安倍昭恵氏が昨年10月11日に自身のXに投稿した一枚の写真。そこには、ノーボーダー代表の溝口勇児氏らとともに、松井氏が靖国神社を参拝している様子が写っていた。
豊富な人脈を持つ松井氏が、頻繁に顔を出している場所がある。新宿御苑からほど近い、庶民的な中華料理店。そこで月に1~2回のペースで開かれている、日本政策学校理事長の上田博和氏が主宰する会合(以下・上田会)だ。
「著名人やお金持ちの方がたくさん参加されている会です。(松井)健ちゃんとは、そこでよく顔をあわせました。上田さんから『(松井さんは)麻生太郎事務所とも関係がある人だ』と紹介されました」(参加者)
上田会の他の参加者に聞いてみても、「松井氏=麻生事務所関係者」説は出回っている。そこで、上田氏に尋ねると、弁護士を通じて書面で回答があった。
「松井氏を(会)参加者に紹介するときに、『株式会社麻生にいらしたそうです』と伝えました」
ところが、麻生事務所に事実関係を問い合わせると、ベテラン秘書から電話があり、こう断言した。
「まったく関係のない方です」
まったくの事実無根というのだ。そんな謎に包まれた松井氏の交遊関係について、筆者と「週刊現代」編集部は、慎重に取材を進めていった。すると、思わぬことに、他の政治家たちとの「密接な関係」が次々と露わになっていった。
「松井さんは、国民民主党の玉木雄一郎代表のYouTubeチャンネル『たまきチャンネル』に関わっていると吹聴していました。『国民民主党のSNS戦略に携わり、躍進に貢献したのは自分だ』とも言ってましたね」(前出・松井氏の知人)
玉木事務所に事実関係を問い合わせると…
松井氏が幹部を務める、ノーボーダーの関係者もこう語る。
「確かに松井さんは、上田さんも含めて、玉木さんと3人で何度か会っていました」
そして、この関係者は驚くべき“重大証言”を続けたのだった。
「実は、松井さんはサナエトークンの直前に、暗号資産『TMKトークン(タマキトークン)』も計画していたのです。実際に説明を受けた人もいました」
ノーボーダー関係者の証言をもとに、筆者が取材を継続していると、「週刊現代」編集部に、関係者から匿名を条件に情報提供があった。松井氏が計画していたタマキトークンの資料だという。
「TMKトークン概要書」と題された資料の表紙には〈2025年4月29日〉と日付が入っている。〈ニッポン再興のシンボル・玉木雄一郎の名を全世界に拡散するミームトークン〉〈次期ニッポンの総理大臣の有力候補・『玉木雄一郎の』名を全世界に拡散〉などと記載されている。冒頭で紹介したサナエトークンの営業資料と使われているフォントは同じで、文言まで酷似しているのだ。
やはり、松井氏はサナエトークンの前に、玉木氏の名を冠した暗号資産の計画をしていたのだろうか? 事実関係を確かめるべく、筆者は玉木事務所に問い合わせた。すると、書面で次のように回答があった。
――上田氏を含めた、松井氏との面会は?
「事実です」
――たまきチャンネルや国民民主党のSNSへの関与は?
「松井氏から紹介を受けた会社にたまきチャンネのコンテンツ12本(動画総数の約1%)の制作を委託したことはあります。国民民主党のSNS戦略に関与した事実はありません」
――タマキトークンは?
「『トランプコイン』のような政治家トークン発行の可能性について伺いましたが、具体的な企画には至っていません」
玉木氏は、具体的な企画には至ってないとしながらも、「タマキトークン」の構想について松井氏と話し合ったこと自体は事実上、認めたのだ。松井氏はなぜ、大物政治家の名を冠した暗号資産を相次いで企画したのか? 筆者は松井氏の代理人弁護士に対しても、一連の事実関係の確認を要求したものの、期日までに回答はなかった。
自民党総裁選で高市氏を支援
そして、筆者と「週刊現代」編集部がつきとめた、松井氏の政界人脈はこれだけではなかった。
「松井さんは、自民党総裁選で高市総理のSNS対策に携わっていたと聞きました」
こう明かすのは、「高市早苗を総理にする奈良の会」事務局長のB氏だ。B氏は前述の上田会で、何度も松井氏と顔を合わせていた。そして、高市事務所の木下剛志所長(公設第一秘書)とも、月に何度も会う関係だという。
そこで筆者が、高市事務所に事実関係を確認すると、書面で回答があった。その中で木下氏は「(松井氏が)選対として(SNS対策などを)行った事実はない」としつつも、驚きの事実を明かした。
「松井氏が勝手連で支援していただいていたことは認識している」
つまり、松井氏は、サナエトークンの設計者であるだけなく、高市総理の自民党総裁選においても支援活動をしていたのだった。高市事務所とノーボーダーの関係は、我々が想像していた以上の「深さ」と「広がり」を見せ始めている。
さらに、気になることもある。玉木氏は松井氏からタマキトークン発行の可能性について事前に聞いていたと説明している。では、サナエトークンの場合はどうだったのか。果たして、高市総理の「私は全く存じ上げません」という説明の妥当性は――。
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かわの・よしのぶ/’91年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、『サンデー毎日』『週刊文春』の記者を経てフリーに。主に政治を取材している