妻を、夫を、あるいは老親やきょうだいといった肉親を亡くした悲しみと憔悴の中、膨大な手続きをこなすのは本当に苦しい。
さらに、必要な書類をなんとか集めても、いざ記入しようとしたら「見慣れない専門用語ばかり」「細かな条件が多く、書き方がよくわからない」とパニックに陥ってしまう。そこで重要になるのが、手続きで共通して使える必須書類の知識と、その書き方だ。
ここでは、「これさえ押さえればOK」という必須書類の記入例を丁寧に確認していこう。
【前編記事】『死後の手続きの最重要書類「法定相続情報一覧図」書き方マニュアルを大公開…役所への請求を一気に省く裏ワザがあった』よりつづく。
請求者には優先順位がある
次に押さえておきたいのは、年金受給権者死亡届(以下、死亡届)と未支給年金・未支払給付金請求書(以下、請求書)が1セットになった書類だ(下図)。
年金の受給者が亡くなった後に死亡届を提出しないと、年金が振り込まれ続けてしまう。もらいすぎた年金の返還には煩雑な手続きが必要になるうえ、悪質と判断された場合には罰則もあるので、忘れずに手続きをしておこう。
この請求書を年金事務所や年金相談センターに提出する際に、あわせて求められる書類は次の5点だ。
①故人の年金証書
②請求者のマイナンバーカード(運転免許証など身元と個人番号のわかる書類)
③故人と請求者の続柄がわかる戸籍謄本(前述した一覧図の写し)
④請求者の世帯全員の住民票
⑤振り込み先口座の預金通帳(キャッシュカード)のコピー
請求者が故人の配偶者で、マイナンバーカードがある場合は③④が不要になる。
「請求書を書くとき、『請求者』として名前を書けるのは、故人と生計をともにしていた遺族のみです。
さらに、請求者には優先順位があります。夫婦のいずれかが亡くなった場合に優先されるのは配偶者、以下は順に子、父母、孫、祖父母と続きます」(曽根氏)
一覧図の写しで書類が3種類減る
最後に、不動産の相続登記について見ていこう。’24年4月から、相続した人が不動産登記の名義変更をすることが義務化された。
夫が亡くなった時点で妻の名義に変更し、妻が亡くなればすぐに子供の名義にするなど、その都度変更する必要がある。違反すると10万円以下の過料が科される可能性があるため、気をつけたい。
葬儀の後、誰がどの遺産(不動産)を相続するか決まったら、相続人の1人が手続きをする。まずはA4の紙を用意して登記申請書をつくろう(下図)。見本は法務局の窓口やホームページで入手できる。
申請書の中央下に書く「課税価格」は、固定資産評価証明書を参照する。「登録免許税」は課税価格の0・4%。郵便局や法務局で購入した収入印紙か、金融機関で納付書をもとに支払うともらえる領収証書(領収済通知書)を別紙に貼ればいい。
申請書の下段にある「不動産番号」(13桁)は、登記事項証明書(登記簿謄本)の右上に書いてあるので確認しよう。
申請に必要な書類の中でもわかりにくいのが、申請書中央の「添付情報」欄にある①登記原因証明情報と②住所証明情報だ。
①は名義変更の理由がわかる書類(故人と相続人全員の戸籍謄本)のことで、前述の一覧図の写しで代用できる。②は相続人全員の住民票の写しのこと。ただし、相続人全員の現住所が書かれた一覧図の写しがあれば、やはりそれで代用できる。遺言書がなかった場合、手続きに必要な書類は以下の通りだ。
ア.登記申請書
イ.故人と相続人全員の戸(除)籍謄本
ウ.故人と相続人全員の住民票の写し
エ.相続人関係図
オ.固定資産評価証明書
一覧図の写しがあればイ.ウ.エ.は要らないが、遺産分割協議をした場合は、カ.遺産分割協議書とキ.法定相続人全員の印鑑登録証明書も必要になってくる。迷ったら郵送ではなく、法務局へ出向いて窓口で確認してもらおう。
手続きにはそれぞれ期限があるうえ、求められる書類は多く、書き方も難しい。ここで紹介した記入例に従って、ムダを減らし手続きをスムーズに進めていこう。
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「週刊現代」2026年3月16日号より