4月の始業日から3日目までは「黄金の三日間」と呼ばれ、学級経営の成否が決まる大切な時期とされている。生徒と教師、新たな「出逢い」を成功させるために、教師は何をすればいいのか。引き続き、長谷川博之氏の、ある年の「学級開き」における動きを見てみよう。『中学の学級開き 黄金のスタートを切る3日間の準備ネタ』(学芸みらい社)をもとにした特別記事をお届けする(生徒の名前はすべて仮名または記号とした)。
【前編を読む】成功する教師はこう動く! 3000人に教えたプロが4月「学級開き」の日に打つ「学級経営」成功の布石
質問コーナーを終え方針演説へ
質問を10ほど受けつけた後、子どもたちに指示した。
「私は今から職員室に行ってきます。1分で戻ります。まだ発言していない人はその間に質問を考えておきなさい。全員に発言してもらいます」
職員室に置いてきた学級通信を手に取り、早足で教室に戻る。
「えー! 先生早いよ! まだ1分経ってないよ!」
ひとりの男子が声をあげるのを笑顔で流して、
「では、発言したら座りなさい。全員起立」
と指示。テンポ良く発言させ、答えてゆく。
残り6名ほどになったところで保護者の方が入室し始め、子ども達がざわざわし始めた。
照れ隠しだろう。
Dさんが残っていたのだが、促すと「まだ考えています」とのこと。
「いいんだよ。また後で聞いてね」
打ち切って私の方針演説に移る。
細かく丁寧に指導を入れる
まずは昨年度担任した学級の合唱の映像を流した。
私が最高だと思っている学級だった。
子どもたちの表情を観察しながら待ち、終わったところで列指名して感想を求めた。
「どうでしたか?」
問われても言葉が出ない子には、
「突然聞かれたらびっくりしちゃうよな!」
などと受け応えをしながら、である。折り返して隣の列にも感想を求めた。
「すごい」
「うまい」
「きれいにハモッている」
「すばらしい合唱です」
などの言葉が続いた。
この映像を見せるかどうかは直前まで悩んだ。前任校のことだからである。
だが最終的に、見せる決断をした。
ゴールのイメージ、目標のイメージを最初の日に持たせたかったからだ。
感想を聞いたあと、まとめた。
「これはみんなと同じ、普通の学校の普通のクラスの合唱です。合唱部の子はひとりもいません。様々な事情があって、音楽の先生は4人代わっています。決して、恵まれた学級なわけではありません。いろいろな子がいました。問題もたくさん起こりました。普通の、どこにでもあるクラスなのです。でも、全員が、一人残らず歌っていたでしょう。自分をせいいっぱい表現していたでしょう。それって素敵ですよね」
うなずいている保護者がいる。力を得て、さらに続ける。
「静かではないが、騒がしくない。きちんとしてはいないが、乱れてはいない。そういうクラスを、私はつくっていきたいです。保護者の皆様、大切なお子様を本日たしかにお預かりいたしました。1年間、どうぞよろしくお願いいたします」
職員室から持参した学級通信(創刊号から第3号まで)を配布する。
ここで私は2つのことを教えた。
ひとつは、物の渡し方である。
「私が『はい、どうぞ』と手渡したら『ありがとうございます』と言って受け取ります。後ろの人には、体ごと後ろを向いて『はい、どうぞ』と言うのですよ。体は前、手だけ後ろというのはダメです」
実演し、子ども達にやらせる。全員の様子を見渡し、できている子を褒め、いいかげんな場合にはやり直させた。ここで妥協してはいけない。
次、通信第3号の持ち物の欄を読ませた。
(1)8・9・10日の日記を書いた日記帳(スピーチの宿題を含む)
(2)ぞうきん2枚(お忙しい方は後日でもけっこうです)
(3)スーパー等のビニル袋5枚程度(あるだけでけっこうです)
(4)ネームペン(教科書記名)
(5)カバン(教科書をたくさん配布します)
(6)家庭調査票
「私のあとについて読みなさい」
そう指示し後について読ませた。「追い読み」である。
さらに、本当に読めているのかどうかを確認するために次の指示をした。
「(1)から(6)まで、ひとりで読みなさい。読んだら座ります。起立」
すばやく取りかかった子を褒め、早く読んだ子を誉めた。
ひとりになっても丁寧にしっかりと読み、そのあと座った子も大いに褒めた。立派だ。
これは「ひとり読み」である。
国語の授業では必ず音読を行なう。さまざまな方法で行なう。そのうち2つを体験させたのである。入学を寿ぐ楽しい雰囲気のなかであっても、学習モードに入らせていく。
道具の扱い方もひとつひとつ教える
残り時間が迫っている。最後は日記指導だ。
私は毎年、進級祝いとして子どもたちに大学ノートを一冊ずつプレゼントしている。
1冊1冊に記名し、名前を呼んで前に出てこさせ手渡す。
そして、まずは100日日記を書き続けるようにと短く語った。「100」という数字には根拠がある。
さらに次のように語った。
「伸びる子どもの共通点は4つある。素直なこと、丁寧なこと、続けること、挑戦することです。日記を書かせるのは、そのうちの『続けること』を鍛えるためです。物事を見る目を鍛え思考力を高めるうえでも、作文のトレーニングとしても、日記の継続は極めて重要です。過去の長谷川学級ではこの日記を900日、1000日と続けた生徒がいました。どの生徒も大きく成長しました。皆さんと過ごすのは1年間ですが、ぜひ、『どんな時も書く』と自己規定し、チャレンジしてみてください。絶対に損はありません」
ノートの使い方を指導するのも忘れない。小さなことでも疎かにはできないのだ。
折りぐせをつけること。
縱に置いて使うこと。
一行目に日付を書くこと。
一つひとつに分解して指導した。最初だから丁寧なうえにも丁寧に行なった。
国語の時間も、このノートと同じものを、同じように使う。この組は全校に一歩先駆けて国語の授業を受けたのである。
さらに、次の点を付け加える。
「国語の授業と日記帳では、鉛筆・赤鉛筆を使用すること」
明確な理由あっての指示である。これも後で説明する。
時間がきた。起立・礼をしないのが私の授業だが、初日ゆえ終わりの挨拶は必須だ。山田和樹君に号令をお願いした。
一度目、「気をつけ」が抜けたのでもう一度。
二度目、プリントをしまっていて「気をつけ」をしなかった子がいたのでやり直し。
三度目で「さようなら」。
形をなぞるだけならやらない方がいい。学校という場で、教育活動として子どもたちに何かをさせるならば、やり通さなければならない。
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20代のときに書いた学級通信をもとに、ある年の1年生との出逢いの日を再現してみた。私を昔から知る仲間は、今は大きく様変わりしているという。
「余裕」が感じられるというのである。
次回の記事では、最近(数年前)の出逢いの日、つまり学級開きの様子を記した通信を引用してみる。
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