〈『SANAE TOKEN』につきましては、トークンの設計および発行に至るまでの一切の業務について、私が運営する株式会社neuが主体となって行い、その責任を負ってまいりました〉現職総理の名を冠した暗号資産「SANAE TOKEN(サナエトークン)」を巡る騒動において、Xでこう投稿した謎の男性。彼には、「別の一面」があった――。
謎に包まれたサナエトークンの設計者
現職総理を巻き込む一大騒動となっているサナエトークン問題。3月3日に自身のXで「全責任は私にある」と宣言したのは、株式会社neuの松井健氏である。
「急にXに登場したことで、『溝口氏のスケープゴートではないか』との憶測も出たが、実は、彼こそがキーマンとみる向きは強い。というのも、サナエトークンをはじめ、ノーボーダー関連の事業を手がける『合同会社NoBorderDAO』において、松井氏は溝口氏と並ぶ幹部で、実務の多くを担ってきたからです」(松井氏の知人)
そんな松井氏の年齢は30代前半と言われる。しかし、彼に関する情報はネット上にも乏しく、その経歴は謎に満ちている。わずかに、溝口氏や安倍昭恵氏らとともに、靖国神社に参拝した時の写真が確認されているくらいだ。
一部の関係者の間では「天才ハッカー」「莫大な資金を持っている」などと噂されるが、真相は藪の中である。知人はその人柄について「口に手を当てて、恥じらうようにして話す。腰が低くて、すごくまとも」と話す。
ところが、松井氏には、全く別の一面もあった――。
明治天皇の玄孫との関係
「様々な投資案件で騒がれており、一部で有名です」
そう語るのは、経済事件に詳しい、ジャーナリストの竹輪次郎氏である。
竹輪氏は以下の記事で明治天皇の玄孫・竹田恒泰氏に降りかかった仮想通貨トラブルを報じた。
【独自】「明治天皇の玄孫」竹田恒泰が2億3000万円の仮想通貨トラブルを抱えていた https://gendai.media/articles/-/156912
実は上記の記事で竹田氏と写真におさまる人物こそが松井氏だというのだ。
「松井氏は’18年、明治天皇の玄孫・竹田恒泰氏による新規の暗号資産を公開(ICO)させる計画に乗じて投資を募っていた。松井氏はサッカー元日本代表・本田圭佑氏との2ショット写真を見せるなどし、出資者を信用させ、2億円以上集めたと聞きました。
しかし、’20年になると、突然、上場中止の連絡を出資者に入れた。未だに返金もされていない人も多いそうなんです」
そこで筆者は竹田氏に書面で事実関係を問い合わせた。すると、竹田氏本人から直接電話がかかってきた。
「私からすれば、彼に利用された面もあります」
竹田氏は開口一番こう切り出し、ことの経緯を話し始めた。
「私は2018年に、当時流行していた新規暗号資産の公開(ICO)を目指し、仮想通貨事業をやろうとしていた。そこに知人の紹介で『自分だったら資金を集められるので手伝わせてほしい』と言ってきたのが松井さんでした」
腰が低く、身なりも整っている松井氏を、竹田氏は「マトモなビジネスマンだと思った」と振り返る。すっかり信用したが、ほどなくして〝異変〟が起きたという。
「ある日、松井さんが数千万円の現金をボーンといきなり持ってきたのです。私の仮想通貨事業のために投資家から集めてきたと。ただ、誰から集めたかというリストはないし、松井さんの『知り合いの知り合いが集めてきた分もある』とか言っていた。そんなお金は、日本の各種法令上も、受け取れないと突き返した。
だから、私は、松井さんからは1円も受け取ってないんです。まだ計画段階でしたから、私自身はお金を集めていません。だけど、松井さんは勝手にお金を集めていた。当時、松井さんは様々な事業を手がけており、資金を必要としていたという話も聞きました」(竹田氏)
「迷惑しています」
竹田氏によれば、松井氏は’18年の夏から秋にかけ、竹田氏の名前や、仮想通貨の事業計画を使い、出資を募っていたという。ところが、竹田氏の計画は、金融当局との調整がうまくいかなかったことなどもあり、’20年頃に中止に追い込まれる。
竹田氏が続ける。
「私は松井さんに、『竹田側は松井氏からお金を受け取ってないし、松井氏が集めたお金は責任を持って出資者に返金する』という念書を書かせたのです。松井さんが持っているお金があるらしいけど、必ず全額返金するようと。
松井さんはそれに署名までしたにも関わらず、履行しなかった。実際、私のもとには、松井さんに出資した3~4人の方から『松井さんから返金がなく、騙されていると思うんですけど……』と問い合わせがきたんです。
私は『だったらもう是非警察にね、相談していいですよ。何かあれば協力しますからね』とお伝えしました。SNS上では、この件を巡り、私が松井さんから受けとったお金は1円もないにも関わらず、私が返金していないというような誤解も生まれており、迷惑しています。
その後、松井さんと疎遠になりましたが、私たちからしたら、今回の件で、『松井氏はやっぱりそういう感じの人だったんだ』っていうことでですね、関係した人も理解し直してくださるのかなという風に思っております」
竹田氏との仮想通貨事業の計画や返金トラブルについて、筆者は3月10日午前10時までに、松井氏の代理人弁護士に質問状を送付したが、期日までに回答はなかった。
そして筆者がさらに取材を進めていくと、松井氏の知られざる行状が、次々と明らかになっていった――。
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かわの・よしのぶ/’91年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、『サンデー毎日』『週刊文春』の記者を経てフリーに。主に政治を取材している