46億年にわたる地球史において、想像を絶するような超巨大噴火が何度も起こりました。そして、その巨大な火山活動が、時に何十万年もの期間で続く気候変動や海洋の酸素減少などを引き起こし、生物の大量絶滅をもたらしたと考えられています。
生命の歴史40億年間のなかで、とくに大規模な大量絶滅が5回あったとされ「ビッグ・ファイヴ」と呼ばれていますが、そのいずれにも、超巨大噴火が関わっていたと考えられています。
一方、大量絶滅は多くの生物種が姿を消す事象ですが、その後には新たな種があらわれ、結果として生物の進化につながってきたという側面もあります。つまり、地球の大規模な火山活動が、生命の進化を促してきた、という意外な側面があるのです。
生命の進化を、地球の地質活動から検証するという視点が注目を集める『超巨大噴火と生命進化』(講談社・ブルーバックス)から、注目に値するトピックをご紹介していきます。
今回は、デカンLIPの火山活動が、白亜紀末の大量絶滅に関与したその理由について、解説します。
*本記事は、『超巨大噴火と生命進化地球規模の環境変動が大量絶滅と進化をもたらした』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
デカンLIPの大規模噴火は、巨大隕石の衝突に誘発されたのか
図「デカンLIPの時間変化」を見ると、デカンLIPのマグマ噴出率はK-Pg境界の直上から急激に増加しています。この噴火の活発化は巨大隕石の衝突による衝撃に誘発された可能性があります。
最もマグマの噴出率の高いアンベナリ層の噴火はK-Pg境界から15万年以内に開始しており、その後、30万年間にわたり断続的に噴火を継続しました。
巨大隕石の衝突は中央海嶺からのマグマ噴火を活発化させたことも指摘されています。中央海嶺は海洋底に存在する長大な割れ目であり、公式プロ野球ボールの縫い目のように地球上の海底を覆っています。総延長は6万kmであり、地球を1周半する長さです。現在もマグマが最も多く噴出している割れ目であり、地球の全マグマの60%以上が中央海嶺の下で生産されています。
白亜紀だった1億年前から現在に至るまでの中央海嶺でのマグマ噴出率の推定を行ったところ、K-Pg境界付近では噴出量が他の時代に比べて10万〜100万km³も増加したことがわかりました。これは巨大隕石の衝突により発生した地震波がマントルに存在していたマグマを揺すり、噴火を誘発したからだと考えられています。
デカンLIPの活動が、絶滅に関与したわけ
前回の記事で述べた通り、白亜紀末の大量絶滅の主因は巨大隕石の衝突と考えられています。そしてLIPの活動は絶滅に寄与しなかったという意見もあります。しかし、私はそうではないと考えています。その理由をいくつか紹介します。
まずは、白亜紀末以外の大量絶滅の主因はLIPの活動であることを前提とした場合について考えていきます。過去のLIP活動と大量絶滅との関係を調べた結果、多量のマグマが一時期に噴火したほうが環境へあたえるインパクトが強く、絶滅率が高かったことがわかりました。これを表したのが図「生物の絶滅率とマグマ噴出率との関係」です。
生物の絶滅率は平均のマグマ噴出率と強い相関があることがわかります。この図にはオルドビス紀末の大量絶滅の原因として紹介した揚子江LIPや、デボン紀後期の大量絶滅の原因として考えられているヴィリュイLIPが示されていません。まだこれらのLIPの地質調査や年代測定は進んでおらず、ある程度信頼のおける噴出率を推定することができないからです。
図「生物の絶滅率とマグマ噴出率との関係」はデカンLIPの噴出率がシベリアLIP、中央大西洋マグマ区に次いで3番目であることを示しています。したがって、もし巨大隕石の衝突がなかったとしても、ある程度の絶滅は引き起こしたと考えられます。巨大隕石の衝突がなかったら、ビッグ・ファイブの中でデボン紀後期よりも絶滅率の低いイベントとなっていた可能性がありますが、地質記録に残る程度の絶滅は引き起こしていたと思われます。
2つめは、隕石衝突説のみでは大量絶滅をうまく説明できない事実があり、もしデカンLIPの活動も考慮すれば、説明が容易となるからです。
隕石の衝突だけでは、長期の酸性雨が説明つかない
たとえば、海洋の酸性化にともなう海洋生物の大量絶滅に関しては不明点が残っています。その一例として、隕石衝突説に基づく酸性雨の形成メカニズムだけでは海水面付近の酸性化は数日で終了してしまうことがあげられます。海水のpHは直ぐに元の値に戻ってしまうのです。
これでは浮遊性有孔虫やアンモナイトを絶滅させるのは困難であろうと指摘されています。ただし、噴火が活発化したデカンLIPや中央海嶺の活動も考慮すれば、長期間にわたり海洋を酸性化できます。前述の通り、火山噴火は100万年を超える海洋の酸性化を引き起こすことができるからです。
さらに隕石衝突だけでは、最大で数十年の寒冷化しか引き起こすことができません。しかし、デカンLIPの活動はK-Pg境界を挟んで約100万年間も続き、断続的に寒冷化を引き起こし、より効果的に陸上生物を絶滅に追いやったと考えられます。
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超巨大噴火と生命進化
地球規模の環境変動が大量絶滅と進化をもたらした
生命の歴史40億年間で、生物種の60%~90%もが絶滅した、いわゆる大量絶滅というものが5回あったとされています。そして、そのいずれにも、超巨大噴火が関わっていたと考えられています。
また、大量絶滅は、多くの生物種が姿を消す絶滅事象だが、その後には新たな種があらわれ、結果として生物の進化につながってきた、ともいえます。
超巨大噴火という地球規模のイベントと、40億年にわたる生命進化史の関係を見ていきます。