日銀の利上げ方針を受け、歴史的な節目を迎えている住宅ローン金利。変動金利が15年ぶりに1%の大台を超える一方で、固定金利の代表格であるフラット35の優位性も改めて注目されている。
2026年、変動金利はどこまで上がる可能性があるのか。
住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営するMFSの取締役CMOで、住宅ローンアナリストでもある塩澤崇氏が解説する。
変動金利が1%を超える
住宅ローンの変動金利は、現在大きな転換期を迎えています。
2025年12月の日銀による政策金利の引き上げを受けて、2026年4月にはほぼ全ての銀行が変動金利の基準金利を0.25%引き上げる見通しとなりました。これにより、変動金利の平均水準は2011年以来、実に約15年ぶりに1%の大台に乗ることになります(モゲチェック調査)。
今回特筆すべきは、三菱UFJ銀行と三井住友銀行の2行が3月に前倒しで基準金利を引き上げた点です。これまで、住宅ローンの変動金利は毎年4月と10月に各行が足並みをそろえて基準金利を見直すのが通例でした。
しかし、今回メガバンク2行が先駆けて金利を引き上げたことにより、従来のような「シェア拡大のための低金利競争」から「収益重視」の動きに大きく舵を切ったことが推察されます。
この背景には、預金金利上昇による資金調達のコスト増に加え、金利収益の取りこぼしを防ぎたいという事情があると思われます。
従来の横並びの金利見直しでは、日銀の利上げから実際の住宅ローンの基準金利引き上げまでに最大半年程度のタイムラグが生じます。一方、普通預金の利息は日銀利上げ後にすぐ引き上げられます。
つまりこの間は銀行側の負担が増加してしまうのです。そのため、基準金利をなるべく早く引き上げることで収益へのダメージを抑えようとしています。今後は他の銀行もこうした動きに追随するかもしれません。
イラン情勢は金利に影響する?
直近では、中東で起きた戦争が金利動向にどう影響するのかも気になるポイントです。
2月28日、アメリカとイスラエルがイランを攻撃したことで、イラン情勢は先行き不透明な状況が続いています。緊迫化する情勢を受けて原油価格が高騰すれば、国内の物価を押し上げる要因になるでしょう。
物価上昇は金利引き上げの呼び水にもなり得ますが、この物価高はあくまで国外の情勢に起因する「外的要因」によるものです。しかも、この外的要因は日本経済を冷え込ませる可能性もあります。ややもすれば「金利を下げた方がいいのではないか」という議論にもつながりかねません。
したがって、日銀がイラン情勢を理由に利上げを急ぐ可能性は低いと私は考えています。
おそらく、次回の利上げは6月あるいは7月ではないでしょうか。さらに年末にも利上げを実施する可能性があります。年内に政策金利は1.25%まで上昇し、それに伴い各行の変動金利も1.35%程度まで上がるでしょう。
こうした金利上昇局面で、まず確認しておきたいのが家計への影響です。
負担増にきちんと備えよう
仮に、残り返済期間35年、借入金額5000万円、変動金利0.75%で住宅ローンを組んでいる場合、金利が0.25%上がると毎月の返済額は約6000円増えます(5年ルール適用なしの前提)。ここからさらに0.25%上がると毎月の返済額は約1万2000円に増え、年間で約14万円の増加です。
変動型の住宅ローンを選択している方は、こうした負担に耐えられる家計設計にしなければなりません。
具体的には、株式投資や不動産投資など「インフレを味方につける」方法がいいでしょう。長期分散積立投資が原則ですが、個別株のリスクを取れるのであれば、たとえば自分が住宅ローンを借りている銀行の株を買うのもひとつの方法です。金利が上がると我々の懐は痛みますが、一方で銀行の収益は改善され、それが株価や配当によって還元される期待が高まります。
日本人は資産運用に対して「危ない」という意識を持つ方がまだまだいらっしゃいますが、何もしないことでかえってインフレに取り残されてしまうリスクがあります。身近な銀行株などをきっかけに、ぜひ家計全体で金利上昇をカバーする意識を持っておきましょう。
ただ、最近は固定金利の住宅ローンを選ぶ方も増えてきています。しかも、金利や手数料を大幅に安くする方法も存在します。
つづく記事〈100万円を超える融資手数料がなんと半額に…フラット35を安く借りる「お得な裏ワザ」〉で詳しく解説します。
構成/椿慧理