皇位継承問題において、「愛子天皇論」を支持する国民は多い。にもかかわらず、高市政権と自民党はなぜ「男系男子」の継承にこだわるのか?前編記事『「愛子天皇」を支持する国民の声を聞かない高市政権と自民党のナゼ… 背後にある「保守系団体」の突き上げ』より続く。
「皇室典範」については“麻生一任”
さらに大きいのが、麻生太郎副総裁の存在だ。麻生氏は実妹の信子さまが三笠宮家の寛仁親王に嫁いだ「皇室の親戚」である。このため、党内では誰も異論を挟むことはできないという。現職閣僚が内情を打ち明ける。
「皇室典範の議論については、事実上『麻生一任』というのが暗黙の了解です。その麻生さんが、養子案を強力に推し進めている。この流れに逆らえる議員などいません」
麻生氏にとっては、この総選挙圧勝後、国会の「布陣」が整ったことも大きい。これまで皇室典範改正に向けた各派の意見集約は衆議院議長の主導で行われてきた。その職に麻生氏の最側近として知られる森英介氏が就任したのだ。
「森議長のもと、これまでの膠着状態が嘘のように議論が加速していくでしょう」(同前)
では、養子の候補となる当事者、つまり将来的に皇族に復帰するかもしれない旧宮家の男系男子たちは、この動きをどう見ているのか。
当事者の「男系男子」を直撃すると…
本誌は旧宮家の一つである久邇家の久邇邦晴氏(64歳)を訪ねた。養子案をどう思うか問いかけると、返ってきたのは冷ややかな答えだった。
「特に話すことはありません」
神道学者で皇室研究者の高森明勅氏は言う。
「旧宮家にはすでに途絶えた家もあり、若い未婚男性がいるのは賀陽家、久邇家、東久邇家、竹田家の4家のみ。彼らはメディアに、養子には応じないとたびたび表明しています。
特に邦晴さんのお父上である久邇邦昭さんは、自著で『皇籍に復して国民の貴重な税金をいただくのには拒否反応がある』と明かしています」
旧宮家に断られた場合、さらに系図を遡って男系男子を探し出さなくてはならない。そうなれば、戦前に臣籍降下して華族となった「宮家分家」や、天皇側近の貴族であった近衛家、一条家、鷹司家へ江戸時代に養子に出た男性皇族の子孫である「皇別摂家」から養子を出さざるを得ない。
「女性天皇」に賛成の本音を吐露
本誌は、その皇別摂家出身で東山天皇の男系九世子孫にあたる北河原公敬氏に電話で話を聞いた。北河原氏は東大寺長老で、東大寺総合文化センターの総長も務めている。
ーー皇統の維持が危ぶまれています。
「もちろん、皇室が続くことは望みますけれども」
ーー愛子さまが皇位を継承される案はどう思いますか?
「海外の王室を見ていても、男性であれ女性であれ、跡を継いでやっておられますからね。そういうのを見習われてもいいんじゃないかと」
ーー自民党内では養子案が有力ですが、当事者としてどう思われますか?
「いきなりそういう風に言われても、当事者は困るんじゃないかという気がしますけど」
ーー日本の歴史上には、女性天皇が8方10代いますね。
「特に奈良時代には多かったですから」
ーー地元・奈良出身の高市総理をどう見ていますか?
「以前にも顔を合わせたりはしてるんですけど。こんな事を言ったら怒られちゃうけど、あまり期待してなかったもんですから。でもすごく選挙で勝たれて、びっくりしてます」
ーー衆院は過半数の議席がありますし、皇室典範の改正はできると思いますが。
「皇室を存続していかれる意味では、女帝を考えてもらったらとは思います」
記者の質問に終始戸惑った様子ではあったが、愛子さまに皇位を継承してほしいという本音を吐露したのだった。
「養子案」が抱える問題とは…
前出の河西氏は言う。
「そもそも養子案が通ったとして、『養子になる』と手を挙げてくれる男系男子はいるのでしょうか。もしいたとして、国民は一般人が天皇になることを認めるのでしょうか。
皇室に入ったあとに、一般人だったときのスキャンダルが暴かれれば、もう逃げ場はありません。場合によっては、『なんでそんな皇室に税金を払わなくてはいけないのか』と世論が皇室不要論に傾くこともないとは言い切れない。
私は議員の先生方が、強硬な支持者へのアピールのためだけに動いているのではないかと心配しています。『パッケージさえ用意すれば誰かが手を挙げてくれるだろう』とか、『形は整えたのだから失敗しても許してほしい』などと考えているのだとしたら、あまりに他人任せです」
無理筋な養子案は、女性皇族の人生をも振り回すことになる。前出の高森氏が言う。
愛子さまと佳子さまの人生を左右する
「今、何よりも急ぐべきは女性皇族の身分保持案についての議論です。養子案の話は、このタイミングでなければならない理由はない。しかし、愛子さまや佳子さまといった女性皇族の方々がご結婚に伴って皇籍を離脱されてしまえば、二度と取り返しがつきません」
現在、愛子さまは24歳、佳子さまは31歳。お二人は人生の岐路にさしかかっている。高森氏はさらに踏み込む。
「議論を先延ばしにすることは、お二人のご結婚の障害にもなっているのです」
皇室の問題は選挙で票に繋がりにくい。だからこそ、今まで先延ばしにされてきた。
しかし、その弊害はあまりに大きい。圧倒的な民意と議席を得て「我が世の春」を迎えた高市総理も、この決断を誤れば、一転して国民から失望されてしまうだろう。
「週刊現代」2026年3月16日号より
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