3月8日より大相撲春場所(三月場所)が開催されている。やはり見どころは、相撲人気の火付け役となった大の里(25歳)であることは間違いない。だが、決して大の里の「一強状態」ではない。最強の好敵手が2人もいることも、好角家を喜ばせている。同じ横綱の豊昇龍(26歳)と、大関の安青錦(21歳)である。
何より面白いのは、この3人の力士が「3すくみ」になっていること――いわば、「令和の三帝時代」に突入したことで相撲に関心が集まっているわけだ。いまの力士に詳しくない人でも本場所を存分に楽しめるように、角界の勢力図を徹底解説する。
大の里、安青錦について解説した【前編記事】『大相撲春場所開催、気になる「令和の三帝」勢力図を完全解説…怪物・大の里、期待の新星・安青錦の「強さ」に迫る』よりつづく。
立ちはだかる“ヒールな横綱”豊昇龍
そして、大の里と並び立つもう一人の横綱・豊昇龍は、朝青龍の甥としても有名だ。レスリング留学で高校進学時に来日するも、相撲に転向。卒業後に立浪部屋に入門すると頭角をあらわした。叔父のように気魄のこもった相撲が人気を集めている。
「元横綱・照ノ富士が昨年の初場所で引退して、角界が横綱不在となりそうな中、チャンスを摑みとって初場所後に横綱に昇進しました。豊昇龍は、力強い立ち合いからの寄りと、豪快な投げ技が魅力です。ただ、大きな相手に投げ主体ではケガをしやすくなります。休場も増えていて、横綱昇進後はまだ優勝できていません」(相撲ライターの田中圭太郎氏)
スターの大の里に心優しき大男の安青錦。両力士に立ちはだかる形で、「ヒール」のようなポジションを築いているのが豊昇龍だ。角界関係者は、彼の評判をこう話す。
「もともと人懐っこいキャラなのですが、大関に上がってから態度が大きくなったように感じます。優勝後の一夜明け会見に遅刻したときに『寝てました』と詫びる姿は、同じ理由で会見に遅刻した朝青龍と重なりました。周囲からは『ミニドルジ』と揶揄されています」(角界関係者)
大の里と豊昇龍という二人の横綱、そして大関・安青錦を加えた三者が三つ巴の戦いを繰り広げているから、いまの相撲は見ごたえ抜群なのだ。
横綱キラーが集う「伊勢ヶ濱部屋」
この「三帝」に注目するだけでも十分に楽しめる。だがもうひとつ、覚えておくだけでより相撲観戦の熱が高まるような有力部屋がある。次世代のモンスターたちが集結する「伊勢ヶ濱部屋」だ。
伊勢ヶ濱親方(元横綱・照ノ富士)が率いる伊勢ヶ濱部屋は厳しい「猛稽古」で知られる。一般的な部屋は一日30~50番程度の稽古をするのに対し、100番以上の稽古をするという。
代表的な力士は義ノ富士(24歳、前頭)と伯乃富士(22歳、前頭)で、どちらも「横綱キラー」として名高い。
義ノ富士は今年の初場所で大の里と豊昇龍という両横綱を破っている。安青錦に対しては2勝1敗と勝ち越していることから、両者のライバル関係も目が離せない。義ノ富士は父親が元競輪選手で、父譲りの身体能力を活かしたパワフルな取組が持ち味だ。
「伊勢ヶ濱部屋の他の注目株は『史上最強の新弟子』と呼ばれている旭富士(23歳)でしょう。まだ序ノ口だったにもかかわらず、初場所前に幕内力士と申し合い(勝ち残り形式の実践稽古)をして、計24番で16勝8敗でした。部屋の中では義ノ富士を抑えて、番数も勝率もトップです。今年の初場所では全勝で序ノ口優勝を果たしました」(スポーツライターの小林信也氏)
貴乃花氏は“大鵬の孫”王鵬に注目
伊勢ヶ濱部屋以外でも覚えておきたい力士を紹介しよう。
小兵が多彩な技で巨漢力士を翻弄するのも相撲の魅力だ。現役で有名なのが「角界随一の業師」と称される宇良(33歳、前頭)で、滅多に使われない「珍技」で勝負を制することも珍しくない。
「藤ノ川(21歳、前頭)も期待できます。身体は小さいですが、常に全力を出し切る相撲を取るんです。どんな格上の相手でも果敢に攻めていき、時には捨て身の技も繰り出すので観ていると応援したくなります」(相撲ジャーナリストの荒井太郎氏)
前出の貴乃花氏が注目しているのは王鵬(26歳、前頭)だという。身長192cm、体重178kgと恵まれた身体を使ったパワフルな取組が特徴的で、名横綱・大鵬の孫としても知られている。貴乃花氏がこう語る。
「王鵬は最低でも横綱にならなければいけないですね。それほどの潜在能力があります。かち上げから相手の腹とみぞ落ちを突くような稽古をしたら、絶対に強くなる。私が教えてあげたいくらいですが、(理事長の)八角ちゃんが黙ってないでしょう(笑)。彼が横綱になれば相撲人気はいっそう火がつくと思います」
続けて、これから開催される大阪場所についても、貴乃花氏はこう展望を示した。
「普通に考えたら大の里が優勝するでしょう。対抗は安青錦。現役時代に真面目に取り組んだ稀勢の里と安美錦が師匠だから、二人とも本当に恵まれていますよ。ガチンコで一生懸命な相撲を取れば、次につながる人生が見えてくる。その証拠に、稀勢の里も安美錦も指導者として実績を作りました。安青錦は綱取りがかかりますが、プレッシャーに負けず頑張ってほしいです」
この相撲ブームをがっぷり四つで受け止めてみてはいかがだろうか。今場所もいよいよとなった――はっけよい!
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「週刊現代」2026年3月16日号より