46億年にわたる地球史において、想像を絶するような超巨大噴火が何度も起こりました。そして、その巨大な火山活動が、時に何十万年もの期間で続く気候変動や海洋の酸素減少などを引き起こし、生物の大量絶滅をもたらしたと考えられています。
生命の歴史40億年間のなかで、とくに大規模な大量絶滅が5回あったとされ「ビッグ・ファイヴ」と呼ばれていますが、そのいずれにも、超巨大噴火が関わっていたと考えられています。
一方、大量絶滅は多くの生物種が姿を消す事象ですが、その後には新たな種があらわれ、結果として生物の進化につながってきたという側面もあります。つまり、地球の大規模な火山活動が、生命の進化を促してきた、という意外な側面があるのです。
生命の進化を、地球の地質活動から検証するという視点が注目を集める『超巨大噴火と生命進化』(講談社・ブルーバックス)から、注目に値するトピックをご紹介していきます。
今回は、恐竜絶滅で知られる白亜紀末の大量絶滅の主原因は、隕石衝突とされます。しかし、それにあわせて関与した巨大火成帯がありました。絶滅につながった、環境変動(寒冷化)を長期化させた噴火活動について解説していきます。
*本記事は、『超巨大噴火と生命進化 地球規模の環境変動が大量絶滅と進化をもたらした』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
白亜紀末の大量絶滅はどのように起こったのか…そのシナリオ
白亜紀末期から古第三期にかけてのK-Pg境界での隕石衝突による生物の大量絶滅に関しては、これまでに数多くの研究者によって調査が行われてきました。そして次のようなシナリオが提唱されています。
●巨大隕石の落下
6600万年前、直径が約10kmの巨大隕石がユカタン半島の北西端からその沖の浅海にかけての地域に落下しました。
衝突のエネルギーは激しく、時速1000kmもの爆風が発生し、1万℃を超える巨大な入道雲が発生しました。入道雲をつくっていたのは衝突のエネルギー によって岩石が融けてできたマグマや粉々に砕かれた岩石片でした。細かな岩石片は宇宙空間まで吹き飛ばされ、その後に地球の広範囲に落ちてきました。
するとその衝撃で大気や地表が加熱され、地表の温度は200℃を超えました。この高温に耐えられなかった生物は間もなく死滅しました。
●放出された硫黄による硫酸塩エアロゾルが空を覆う
隕石の落下した場所は硫黄を多量に含む堆積層でした。そのため落下の衝撃エネルギーにより硫化堆積物が分解され、多量の二酸化硫黄や三酸化硫黄(SO₃)が大気中へ放出されました。
放出された硫黄は1000億〜5000億トンと見積もられています。これら硫化酸化物ガスは上空の水蒸気と反応して硫酸塩エアロゾルになりました。これは数年から数十年間におよび太陽光を遮り、地表面の温度を5〜10℃低下させました。
衝突によるエネルギーは森林火災も引き起こして多量の煤も発生させました。この煤の量は現在の地球上植物の10%を燃焼させた量に匹敵します。煤は隕石地点の有機物層の蒸発によっても発生し、2〜3ヵ月におよび全海洋での光合成を止め、海水面の温度を数年間低下させました。
●硫酸塩エアロゾルや火災で生じた煤による酸性雨
硫酸塩エアロゾルや煤の影響により地球には「衝突の冬」が訪れました。数年〜数十年間にもおよぶ光合成の停止により、植物は枯れていきました。食物連鎖の基盤である植物が失われたため、恐竜をはじめとする植物食動物や肉食動物は絶滅に至りました。
上空に漂っていた硫酸塩エアロゾルは硫酸酸性雨として地表へ降ってきました。これは地表に生息する生物に大打撃をあたえるだけでなく、陸地の表層土を溶かしました。これは全世界の表層土の深さ1.2m分を溶かすという大規模なものでした。溶けた表層土は海域へ流入し、海水のストロンチウム同位体比(87Sr/86Sr)を急上昇させました。
酸性雨は海域にも降りました。これは海水面付近を酸性化させ、浮遊性有孔虫や円石藻を死滅させました。
白亜紀末期の大量絶滅は、こうした隕石衝突説を主原因としながらも、寒冷化を長期化させた要因として、またその後の古第三紀の温暖化の要因として、巨大噴火の影響 が大きかったことがあげられます。続いて、噴火を起こした火山体について見ていきます。
寒冷化を長期化させ、大量絶滅を決定づけた火山活動
デカンLIPの溶岩流はインド半島西側の約50万km²を覆っています(図「デカンLIPの溶岩流と岩脈の分布」)。これは日本の国土(37万8000km²)よりも広大な溶岩流の台地です。
溶岩流が最も厚い地域がムンバイのすぐ東側を南北に延びる西ガーツ山脈です。これは北のナシク付近から南のコールハプールまで400kmを超える長大な山脈です。溶岩台地が最も厚い地点はムンバイとコールハプールの中間地点付近であり、30枚以上の溶岩流が積み重なり、高さ2000mを超えます。
厚い溶岩流が積み重なっているのは地上だけではありません。地下にはもっと多くの溶岩流が積み重なっていると考えられています。地下の溶岩流の合計の厚さは、地上の数倍と見積もって いる研究者もいますが、これに関しては未だ不明です。噴出したマグマの総量は約200万km³と見積もられています。
インド亜大陸で大噴火が起こったわけ
西ガーツ山脈はインド半島に分布するデカンLIPの西端に存在しますが、ここは地下で大規模にマグマが生産された中心部付近と考えられています。それは図「デカンLIPの溶岩流と岩脈の分布」の左下の図を見るとわかります。この図はデカンLIPのマグマが噴出した約6600万年前の古地図です。
この時代、インドは小さな大陸である亜大陸を形成しており、インド洋の赤道直下を北上中でした。今とは違い、インドの大地はユーラシア大陸からは離れていたのです。すぐ西側にはセイシェル諸島がありました。現在はアフリカ大陸の東沖に存在する島々です。
じつはデカンLIPの形成前、セイシェル諸島はインド亜大陸の一部でした。地下深部から上昇してきたプルームがインド亜大陸を押し上げ、その後にインドとセイシェルとの2つの大地に引き裂いたのです。
プルームは大陸プレートの下で多量のマグマをつくり、その一部は大陸プレート内を上昇してインドとセイシェルの地表に噴出しました。そのため、今でもセイシェル諸島へ行くとデカンLIPと同じ玄武岩を見ることができます。
今回ご説明したデカンLIPの活動は絶滅に寄与しなかったという意見もあります。しかし、私はそうではないと考えています。続いて、その理由をいくつか紹介します。
*
超巨大噴火と生命進化
地球規模の環境変動が大量絶滅と進化をもたらした
生命の歴史40億年間で、生物種の60%~90%もが絶滅した、いわゆる大量絶滅というものが5回あったとされています。そして、そのいずれにも、超巨大噴火が関わっていたと考えられています。
また、大量絶滅は、多くの生物種が姿を消す絶滅事象だが、その後には新たな種があらわれ、結果として生物の進化につながってきた、ともいえます。
超巨大噴火という地球規模のイベントと、40億年にわたる生命進化史の関係を見ていきます。