誰もが認める史上最高の日本人メジャーリーガー、大谷翔平選手。そのすごさは豪快なホームランだけではないという。新刊『野球ビジネス』の著者で、人気YouTubeチャンネル「トクサンTV」を主宰するトクサンこと徳田正憲氏が、日本人が知らない大谷選手の「本当のすごさ」を語る。
大谷翔平のホームランの秘密
先日、データに詳しい相棒、ライパチ(大塚卓)から聞きました。MLBではスタットキャストに「打者の打席での立ち位置」と「ミートポイント」が新たに追加された結果、大谷翔平選手のミートエリアには特徴があることが判明したのだと。
MLBの打者のミートポイントは、平均してホームベースの先端から投手側に約6センチ。一方、大谷選手は捕手側に約9.4センチ。平均的なMLBの打者よりも、約15.4センチも“後ろ”で打っていることがわかったのだそうです。
鋭いスイングスピードがあってこそ。大谷選手は科学的な回旋運動を基に打撃に取り組み続けているので、よりボールを呼び込んで強く弾き返すことができるのでしょう。詰まったかなと思った打球が本塁打や長打になることもあります。
シーズンでもワールドシリーズでもありましたよね。低めのボール球を右手一本でパーンと払ったら、なんとスタンドまで飛ぶという。解説者の方も「いやもう、意味がわからないです」みたいに驚いていました。
それでも、科学的には打球が飛ぶスイングであるわけです。あれだけ体が泳いでも飛ぶ、詰まっても飛ぶ。そのスイングができていることがすごい。160キロ前後のボールを逆方向に打ったり、右翼へ引っ張ったりしてください、とお願いしても、日本のプロ野球選手でもたぶん誰一人できないと思います。
それくらい、大谷選手の打撃技術は高いということです。
いつも室内練習場で打撃練習をする理由
もちろん大谷選手もすべてが万能とは言い切れない。打率にはまだまだご本人も納得がいっていないと思いますし、高いアベレージを残しつつ、本塁打も打点も減らさない方法をめっちゃ考えていると思います。
大谷選手は2025年のポストシーズンで、2年ぶりに屋外でフリー打撃を行いました。室内練習場でやることが常でしたが、これは異例のことでした。
室内で打ち込むメリットは、まず数が打てること、周りをシャットダウンして集中できることが挙げられます。その反面、いい打球を打っても70~80メートル先でどう変化していくかはわかりづらい。
私もいち野球人として、室内練習場で打つ際は体の動きを確認します。この動きはできている、この出し方であっちに飛ぶんだ、という内面的な確認作業にフォーカスします。
屋外では、ある程度の景色があって、投手がいますから、実戦に対して景色込みのアプローチになります。自分がパーンと打った打球が意外とここまで伸びたとか、こういうふうにスライスしていったとか、いろんなことがわかっていく。ですから、意識は外に向いていくことになります。
大谷選手がいつも室内練習場で打撃練習する理由は、体の動きやメカニックの部分、つまり内面的なところを確認したいからだと推測しています。投手の準備もあるので、打撃に関しては室内でやったほうが本人的に集中できるのではと。
今回の屋外フリー打撃は、不調だったから「気分転換に外で打っとくか」みたいなテンションだったのではないかなあと思っています。
メジャーリーガーはファン対応も一流
2025年は大谷選手の立ち居振る舞いに「メジャーリーガー」を感じました。
ワールドシリーズでは、エンゼルスからの移籍先候補にも挙がっていたブルージェイズファンから「We don’t need you」という大合唱が起こりましたよね。ああいうところはアメリカ的でいいなと思いましたし、大谷選手の返しも良かった。
「家庭ではトロントで言われたようなチャントを言われないように努めたいと思います」なんて、日本全国、いや全世界の夫が思うことかもしれません。私も出張にたくさん行きますし、妻に「あんたなんかいなくても生活できる」と思われたら終わりですからね。あの返しは、「さすがメジャーリーガー」と思いました。
軟式球を打ってもらったフリオ・ロドリゲス選手から、「マスコミ対応、ファン対応も一流でこそメジャーリーガー。それができなければメジャーリーガーではない」という話を聞いたことがあります。日本のプロ野球に足りない部分ですよ。
精神的にも成長を遂げた大谷翔平
思い起こせば、2023年のWBC日本代表キャンプでダルビッシュ有投手(パドレス)が、宮崎に集まったファンの人たちに時間が許す限り対応していて、その姿を見たほかの選手も同じ様にやり始めたことがありました。
その人たちが応援してくれて、チケットを買ってくれて、それが選手の給料になるわけです。ですから、本来は時間があるならファン対応はできるだけするべき。日本の文化は職人的な美学に寄せがちですが、それはプレーボールになってからでいいと思います。
一流選手たるもの、批判に対してイラッとしたり反論したりするのではなく、すべてを包み込むように対応していく。向こうに行ってから学んだところだと思いますが、立派ですよね。
シーズン中のサンディエゴ・パドレス戦でも、ドジャースベンチの脇でヤジっていたファンに、本塁打を打ったあとに声をかけたことがありました。普通のメジャーリーガーでもあまりやらない行動でありつつ、自分の立ち位置をよく理解したうえでの行動だと感じました。本当に立派ですよね。
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