かつて20万人もの構成員を擁した暴力団。
覚せい剤の輸入や賭博、みかじめ料の徴収で莫大な収益を上げ、1980年代の年間収入は推計8兆円に達したと言われる。だが平成に入って以降、暴対法の制定や警察の行き過ぎた捜査、メディアによる批判的な報道が原因となり、暴力団は衰退の一途をたどってきた。
では、暴力団が社会から消えていくことは、我々一般国民にとって「良いこと」だけなのだろうか?しばし「必要悪」として語られてきた“やくざ”の実態を、『やくざは本当に「必要悪」だったのか』より一部抜粋・再編集してお届けする。
【前編を読む】「暴力団」が消滅の危機!日本にしか存在しない“組織犯罪集団”はなぜ大幅に衰退したのか?
強化する警察の取り締まり
暴力団の息の根を止めたのは、警察の取り締まりという包囲網、各都道府県の暴力団排除条例、銀行や証券、車販、宿泊など各業界の暴力団排除条項。さらに匿流などの勃興、若者の加入志望者の激減、暴力団を応援する団体がないこと、組首脳の無自覚などによって、彼らは消滅寸前に追い込まれた。
今や暴力団的な仕事、シノギはすべて禁止された。博徒が長らくお上のお目こぼしで続けてきた賭博場の開帳は完全に禁止された。博打、ギャンブルは公営競技として競馬、競輪、競艇、オートレース、また文部科学省が指導監督するスポーツ振興くじ、宝くじに至るまですべて官公庁のものであって、暴力団はノミ行為(暴力団などが公営競技の投票券を私的に売る行為)をすることさえ許されない。
大阪夢洲にやがて開かれる運びのカジノもMGM大阪株式会社が運営するものであって、やくざはお呼びでない。暴力団はオンラインのカジノからも弾かれ、今や博打打ちで世を渡ることは完全に不可能になった。テキ屋が専業としてきた祭礼などの露店も警察は排除しがちであり、カタギの街商が食えない事態まで起きている。
暴力団が目立たない形で長年取り組んできた商売に金貸し、つまり高利貸、街金、ヤミ金の類いがあるが、これも相変わらずひっそりと闇で営むしかない。正規に業を営めば月一割の利子を取ることも違法だから、利用する客種は限られている。
バブル期に暴力団を潤した地上げも今は暴力団が乗り出すわけにはいかない商売になった。暴力団が乗り出すだけで、その事業は呪われた地になり、価値を喪失する。
やくざの絶滅は本当に吉か
中堅の暴力団がシノギのタネとしてきた債権取り立ても今は暴対法の禁止項目だし、みかじめ料も本来は禁止。
そのくせ暴力団が暴力団とは関係のないところで建設や解体、労働者派遣、飲食店などの正業を営もうとしても、警察は暴力団の資金源になると潰しに掛かる。
こうして暴力団はやくざ業、正業を問わず、食う道を一切閉ざされている現実がある。それが今なのだ。
暴力団の中には夢を見る者がいる。まず多くの人間が働ける規模の正業を持つ。そこで組員を働かせ、生活費を稼いでもらう。その上でやくざをやりたいなら、自由時間を生かす形で趣味でやくざをやってもらう。
趣味のやくざはどのような形の働きをするのか。匿流や不良外国人グループに目を配りつつ、自警団のように街の見回りをするのだろうか。「弱きを助け、強きをくじく」とばかり昔懐かしい「任侠道」を実践するのか。
万一、暴力団の一部が生き残るなら、どういう動きをするのか。夢を見る余地はあるのか。完全な絶望状態の中で一条の光だけがかすかに差し込んでいるのか。
社会にとって、やくざが滅びるのは喜ばしいことには違いない。しかし、今のようなやり方で末端やくざたちを社会的に追い込んでいくやり方は、かえって一般国民の負担になってしまう側面があることを、本書では指摘していきたい。
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