金融庁が調査に乗り出した仮想通貨「SANAE TOKEN」。高市総理公認の後援会のXアカウント「【公認】チームサナエが日本を変える」が大々的に宣伝するなど、通貨に“お墨付き”を与えていた経緯がある(現在は削除)。
筆者は3月3日午前中に、「チームサナエ」の代表者で、高市総理が代表の政党支部・奈良県第二選挙区支部の青年局長を務めるA氏との接触に成功した。その証言を『現代ビジネス』で、他のメディアに先駆けて報じてきた。そして、彼の証言を慎重にたどっていくと、高市事務所をめぐる様々な疑念が浮かび上がってきた――。
『「サナエトークン」を宣伝していたチームサナエは「高市事務所」が活動拠点だった…!サナエ歯ブラシ(6600円)を売りさばく謎の組織の正体』より続く。
約15年間にわたり、高市総理を支えるキーマン
取材におけるA氏の証言は、多岐にわたっていた。A氏は奈良県第二選挙区支部の青年局長や「チームサナエ」のリーダーを務めているだけではないからだ。
高市陣営が自民党総裁選にあわせて全国を走らせたキャラバンカー「高市早苗Veanas号」の運営チームの責任者であり、高市総理からも直接メッセージをもらう間柄だ。
さらには奈良の高市事務所と同じ住所に本店を構え、高市事務所公認グッズの販売などをしている「Veanas合同会社」の代表も務める。高市事務所所長で公設第一秘書の木下剛志氏とも、A氏は密接に連携をとる。
つまり、A氏は約15年間にわたり、高市総理の活動を様々なかたちで支える「キーマン」なのだ。ただ、彼の証言を慎重にたどっていくと、高市事務所をめぐる様々な疑念が浮かび上がっていった――。
自民党総裁選のたびに全国を走っていた、高市陣営キャラバンカー「高市早苗Veanas号」。全国的な高市ブームの盛り上げに貢献し、今後の活動を続けていく方針だ。そこで浮上したのが、「財源問題」だ。A氏が振り返る。
「やっぱり全国を回りますから、相当お金がかかる。燃料代、宿泊代、交通費、高速代などで、数百万程度かかる。車自体は、奈良トヨタの社長が、高市早苗連合後援会の会長なので、レンタカーを借りている」
――‘21年の自民党総裁選から「Veanas号」は始まった。過去に累計で 1000 万円ほどはかかった?
「そんな感じでしょうね。我々の持ち出しもありましたが、事務所にはカンパをお願いしていた。運転手は自分を含めて(自由民主党奈良県第二選挙区支部)青年局のメンバー4人で交代しながらまわした。車には運転手が2人、その他に動画部隊2人の合計4人が乗車していた」
本店所在地が高市事務所に置かれていた理由
――高市事務所は半分以上、負担してくれていた?
「うん。出してくれている。‘21年の自民党総裁選の時は、Veanas号を奈良県内だけ走らせたので、金額的にはそれほどかからなかった。ただ、’24年は30数ヵ所、‘25年は沖縄以外の46都道府県をまわったので、相当かかった」
――‘21年は300万円、’24年は500万円とか?
「うん。そんくらいでしょうね」
メンバーの持ち出しはあったとはいえ、高市事務所が1000万円以上の経費の大半を負担してきたというのだ。
ただ、A氏は、事務所に負担をかけ続けるわけにもいかないと考えた。そこで、「“サナエ愛用”歯ブラシセット」(6600円)など、高市事務所公認グッズを販売する合同会社Veanasを立ち上げ、運営していくことになった。
昨年12月に合同会社Veanasが法人化され、奈良の高市事務所と同じ住所に本店を置いた。民間企業が、政治家の事務所内に本社所在地を置くのは、極めて珍しい。
「だって僕ら活動してるの高市事務所やし、ビーナスのグッズもそこに置いてるし、一緒におらんと不便じゃないですか? (高市事務所の)木下所長から『本店住所を高市事務所にしとかんと大変やで。自分商売もしてんのにさ』っていう話があって。『じゃあ、お願いします』って。それで、郵便物届いても、(木下所長が)『Aちゃん、郵便物来てるよ』って連絡くれるし。すごい便利なんですよね」(A氏)
当然、家賃は高市事務所側に支払っているのだろう。そう思ってA氏に尋ねると、驚きの答えが返ってきた。
「さすがに家賃は(払えと)言われてないんで大丈夫です」
――「0 円でいいよ」と?
「はい」
A氏の話によると、高市事務所は株式会社Veanasに対し、家賃を「無償」で、提供しているというのだ。しかも、A氏は「グッズをアホほど作って在庫がありすぎる」と漏らしていた。それだけの在庫を抱えていれば、かなりの事務所スペースを占めそうだ。それでも家賃はゼロだという。
本当にただの民間企業なのか…
Veanas社が運営するホームページには〈高市早苗に関するグッズ《高市早苗事務所公認》を販売する正規のインターネット窓口です〉と説明書きがあり、〈これらの商品の売り上げは次回のVeanas号全国声を聞く企画の運用資金に致します〉とある。民間企業が特定の政治家の活動を支援するために事業を行うというのは極めて異例だろう。
ここで1つの重大疑惑が浮上する。これはもはや民間企業というよりも、政治団体なのではないか……? ホームページの説明文を読めば、高市事務所のグッズ販売事業を、合同会社VEANASが代行しているようにも見える。A氏にも尋ねてみた。
――合同会社Veanusは、営利目的というか、高市さんの政治活動をサポートするため?
「そりゃそうですよ」
――Aさんが儲けようとかそういう話じゃない?
「赤字ですよ、絶対」
――会社立ち上げも、高市事務所も了解し、公認の上でやっている?
「そう、そう。やっぱり高市事務所が(直接)グッズ販売したら変でしょ?」
――ビジネスというより、政治活動を支えるため?
「そうです」
説明を聞けば聞くほど、高市事務所の“別働隊”的な構図が浮かび上がってくる。A氏の証言を巡る疑問点を、2つに整理してみた。
①「Veanas号」にかかる費用の半分以上を高市事務所が負担し、チームサナエのメンバーの持ち出し分とあわせて、累計で1000万円ほど(2024年は全体で300万程度、2025年は全体で500万程度)になるという話だ。こうした費用は、いかにして精算をしているのだろうか? そして、車自体は、奈良トヨタのレンタカーだというが、借り手は誰なのか?
②「合同会社VEANAS」は、政党支部「自由民主党奈良県第二選挙区支部」と同住所に本社を置き、事務所スペースを借りているという。それは高市事務所の木下所長の指示によるものであり、家賃の支払いも免除されている。さらに、A氏は「同社は営利目的ではなく、高市様の政治活動をサポートするためにつくられた組織だ」と証言する。つまり、本来は「政治団体」として行うべき活動を、民間会社でやっているのではないか?
高市事務所から回答が来た
これらについて、高市事務所に見解を尋ねたところ、所長の木下氏から回答があった。
高市事務所は①について、「総裁選におけるVeanas号の運行は、自由民主党奈良県第二選挙区支部(以下「二区支部」) の組織活動であり、その政治活動における支出は全て二区支部より支出し、収支報告に記載しているところです。すなわち、令和6年は収支報告提出公開済、令和7年はこれから提出する収支報告に記載されます。よって、貴殿の推測は事実に反します」と主張する。
たしかに、収支報告書では組織活動費はわかるものの、どれがVeanas号に使われた費用かは特定しがたい。チームサナエのメンバーの「持ち出し分」がどう扱われたのかも判然としない。筆者は今後、より事実関係を精査し、改めて追加の質問を高市事務所に送付するつもりである。
さらに②については、「Veanas合同会社は、商品の企画製造販売を目的とする会社であり、政治団体ではないと聞いています。同社は、二区支部の同じ住所を本店所在地としていますが、同社宛ての郵便物はや販売品の配達先となっているだけで物理的な使用はありませんので家賃は発生していません」と説明した。
しかし、前述の通り、A氏は筆者に対して営利目的というより、政治活動のサポートを目的としている旨を語っていた。さらに「Veanasのグッズもそこに置いている」「グッズをアホほど作って在庫がありすぎる」と漏らしていた。それだけの在庫を抱えていれば、かなりの事務所スペースを占めるわけで、木下氏の回答とは明らかに矛盾しており、疑惑は残されたままだ。
実は、A氏の証言から浮かび上がった疑問はこれだけはなかった。「SANAE TOKEN」騒動に端を発する高市総理のさらなる疑惑については、3月16日発売の『週刊現代』にて詳報する。
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かわの・よしのぶ/’91年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、『サンデー毎日』『週刊文春』の記者を経てフリーに。主に政治を取材している