小・中・高校生の子どもを持つ親にとって、3月は進級・進学を控えて出費がかさむ時期。学年が上がるにつれて習い事代や塾代が高くなったり、春期講習があったりと、「想定していたよりお金がかかる……」と感じている人は少なくないはずです。
教育費は「聖域」だと言われますが、結局のところ、いくら心積もりをしておけばよいのでしょうか? そして少しでも出費を抑えるにはどうすればよいのでしょうか? 今回は、そんな「教育費」のリアルに迫ります。
「教育費」のメインは学校外にある!
教育費は、住居費、老後の生活費と並ぶ人生の三大支出のひとつです。
少子化対策の一貫として教育の無償化が進められ、義務教育である小・中学校はもちろん、幼稚園・保育園の利用料や高校の授業料も実質無償化されているにも関わらず、いまだに「教育費が家計の負担になっている」と嘆く声は後を絶ちません。
その理由は、ズバリ、学校外でかかる教育費が多いから。
文部科学省の「子供の学習費調査」(令和5年)を見てみると、公立では中学3年生で約44万6,000円の「学校外活動費」がかかっており、なかでも塾などを中心とした「補助学習費」は39万円となっています。私立で最も「学校外活動費」が多いのは小学6年生で、約89万1,000円。そのうち「補助学習費」は59万6,000円を「補助学習費」が占めています。また、いずれにおいても最終学年において出費が増えているのは一目瞭然。学校の授業料が実質無償であったとしても、やはり受験にはお金がかかる、ということがよく分かりますね。
慌てて入会せずしっかり比較を
子どもを塾に行かせようと考えるとき、初めに目にする「塾代」が、入塾費や毎月の月謝、施設利用費、教材費です。
入塾費は1万円〜数万円に設定されている場合が多いようですが、入塾シーズンである春は、入塾無料のキャンペーンがあることも多いようです。入塾予定だった塾がこうしたキャンペーンを行っている場合は絶好のチャンス。一方、目先のキャンペーンに惹かれて慌てて入会するのは禁物です。後述するその他の費用も含めたうえでしっかりと比較検討することが大切です。
毎月の月謝は、集団授業か個別指導なのか、大手なのか、地域密着の個人塾なのか、学年、受講する科目数などによって千差万別です。家計への負担という意味では安いに越したことはありませんが、一方で通いやすさ、お子さんの性格や習熟度との相性、授業の質なども重要です。ここでどれだけ俯瞰して、費用対効果を冷静に判断できるかが、塾代が「価値ある投資」となるか「高額な浪費」となるかの分かれ道となります。
施設利用費や教材費は、塾によって有無も金額もまちまちです。月謝とは別に継続的にかかってきますので、これらがかかる場合は忘れずに見積もりに含めるようにしましょう。
季節講習は典型的な「隠れ教育費」
さらに受験期が近づけば近づくほど、これらとは別にさまざまな費用が積み上がっていきます。
例えば、模試(模擬試験)代。進学塾の場合、全国統一の模試や、塾の内部での実力を測るテストなど、様々な模試があり、タイプによっても異なりますが1回5,000円前後がおおよその相場となっています。塾によっては自社で主催する模試は無料の場合もありますが、回数次第では数万〜10万円がかかってきます。
春期講習、夏期講習、冬期講習などの季節講習代は典型的な「隠れ教育費」といえます。どの講習をどれだけ受講するかにもよりますが、1シーズンあたり数万円、大学受験の夏期講習などでは10万円を超える場合も。塾によっては、通常授業に加え、こうした季節講習への参加が必須とされている場合もあるようです。さらに、塾によっては集中的に学習する合宿、お正月返上で学習する正月特訓などがあったりする場合も。当然ですが、宿泊を伴う場合には、必要な費用もそれだけ高くなります。
特に中学受験においては、小学6年生になると年間出費が100万円を超え、入塾からおおよそ3年間の総額では数百万円規模になることも珍しくありません。高校受験や大学受験においても、それぞれ3年生になると講習や特訓が一気に増え、数十万円単位で年間支出が増える傾向があります。
塾側の「経営戦略」も知っておきたい
こうした「隠れ教育費」が次々に上乗せされた結果、最初は「毎月◯万円ならなんとかなりそう」と思っていた塾代が、年間で見ると当初の見積もりを数十万円単位でオーバーしてしまった、というのはよくあること。
それもそのはず、こうした「隠れ教育費」の裏には、教育費という出費そのものが持つ特性と、巧みな塾側の「経営戦略」があるのです。
教育費は将来への投資だと捉えられることが多いため、「子どもの将来のためにできることはできる限りしてあげたい」という親心が働きやすいという特徴があります。そして、ひとたび受験戦争が始まると、そこに「周りに置いていかれるわけにはいかない」という心理も加わります。その結果、「スタートダッシュが受験の成否を決める」と言われれば「春期講習からしっかり参加しなければ」という気持ちになりますし、「受験は夏が天王山」と聞けば、「夏期講習をスルーするわけにはいかない」という気持ちになるわけです。
そして、塾側はこうした親の心理を、季節講習や特別講習を通じて巧みに利用しています。もちろん、多く受講したほうが志望校合格に近づきやすいという側面もありますが、塾側にとっての意義はそれだけではありません。季節講習や特別講習はまとまったアップセルができる絶好の機会。多くの講座を追加で受講してもらえばもらうほど売上が伸びるわけです。ですから、「必修パック」「5講座セット」「志望校別講座」などの謳い文句を駆使しながら、より多くの受講料を払ってもらえるように働きかけます。
行き詰まらないための塾代との向き合い方
こうした塾側の戦略も踏まえると、教育費は単純に「かければかけるほどよい」というものでもないことが見えてきます。しかし、場当たり的に対応していくと、いざ受験が目の前に迫ってから「こんなにかかることは想定していなかった!」「でもここまで来たら後には引けない……」という状況に陥ってしまいかねません。
実際にその状況まで来てしまうと、多くの場合、現実的に教育ローンを検討したり、貯蓄型の保険を解約したりして費用を工面せざるを得なくなります。でも、もっとも一気にまとまったお金がかかる、いわば教育費の「本丸」は、大学進学です。塾代のためにやむを得ず教育ローンを組むことはできれば避けたいところです。
そのためにも大切なのは、塾通いを始める前に、どんな「隠れ教育費」が存在するのかを知り、目の前の塾代だけでなく、最終学年でかかる塾代も含めて総額を把握し、その金額が現実的に家計から捻出可能なのかを冷静に判断することです。そして、その金額を捻出するのは難しい……となったら、あらかじめ塾代に使える予算の総額を決めておき、その範囲内で上手にペース配分をしていきましょう。
何より重要なのは、“無理をしないこと”です。家計には、教育費以外にも必要な出費がさまざまあります。今後必要になるであろう大学の学費も年々上昇傾向にあります。教育費は「聖域」といえども、そのために家計全体が立ち行かなくなっては本末転倒です。家計全体、そしてお子さんの適性や費用対効果を俯瞰したうえで、冷静に塾代と付き合っていきたいものです。