立憲民主党で2025年9月まで3年間、選挙対策委員長を務めていた大串博志衆議院議員が、選挙とカネの現実を赤裸々に明かす。
新たな政党で
衆議院議員選挙が1月27日に公示され、今は総選挙の真っ只中です。
私、大串博志は新党「中道改革連合」という新しい政党から出馬することになりました。所属していた立憲民主党は衆議院議員148人のうち144人が中道改革連合に入党し、公明党から移ってきた衆議院議員とともに新しい政治勢力を作ったのです。
1月9日に突然の解散報道が流れてからわずか1週間ほどで新しい党ができ、そこに移っているという展開には私自身びっくりしています。ただし、立憲民主党は昨年の参院選の選挙総括で「中道政治」という言葉を2回も使っているほどで、目指す方向性は間違っていないという確信があります。
とにかく異例づくめの選挙です。2月に実施される総選挙は実に36年ぶりとなります。というのも、通常国会では約2ヵ月かけて来年度予算案の審議を行い、年度内に予算案を成立させるというのが政権の至上命題だからです。ところが、今回の日程で解散をすると年度内成立はまず不可能です。そこまでして高市政権が解散に踏み切った理由は何なのか。
私は財務省出身でもあり、とにかく首を傾げる選挙です。物価高対策が喫緊の課題でありますし、何より通常国会では来年度予算案の審議があるのですから。
空白区への擁立作業
衆議院議員の任期は4年ですが、前回の総選挙はわずか1年3ヵ月前。任期の3分の2を残しての解散は首相の解散権の濫用としか言いようがありません。
その前回の総選挙で、私は立憲民主党の選挙対策委員長として役割を担いました。今回はそのときの経験をお話ししたいと思います。
まず、解散が決まってから公示日までに各党が次々と候補者を擁立するニュースが報道されていると思います。基本的に現職議員は引退する人以外は次も同じ選挙区から出馬しますが、それだけでは空白区がたくさん生まれてしまいます。
そのため、空いてる選挙区には新たな候補者として支部長を擁立するのですが、今回のような急な解散だとまだまだ決まっていない選挙区が多数あります。そこで、一気に擁立作業を進める必要があるのです。
前回のときもまだ空白区は残っていました。しかし、選対委員長は全国を回っており、各県連と密に連絡を取り合うことができる体制を作っていました。その過程で「この人に出てもらいたいな」という人を探していきます。
ただし、選挙に出る意欲のある人でも仕事や家族の理解など、出馬のハードルは人によってさまざまです。しかし、解散となればもう決めるしかありません。
「ぜひ、我々と一緒に戦いましょう!」
電話をかけ、強い思いを伝えて決断してもらう、ということを繰り返しました。
休みがまったくない選対トップ
その1人が福井1区で立候補した波多野翼さんでした。彼は総選挙直前で立候補を決断してくれ、比例復活ながら福井1区で久しぶりの野党議員を誕生させることができました。このように、直前の立候補であっても当選することは決して珍しくありません。だからこそギリギリまで候補者擁立作業を進めなくてはならないのです。
当然ながら、その責任者である選対委員長に休みはありません。自分の選挙もある立場でしたが、地元にはほとんど帰れませんでした。期間中も含めて地元に戻れたのはトータルで2日間くらい。せっかく戻れても少しの滞在でまた党の仕事で別の地へ向かう、という状況になりました。だからこそ、自分の選挙は私がいなくても活動できる体制でなければ、選対委員長は務まりません。
そんな私以上に大変なのが波多野さんのような初めて出る新人候補です。選挙に出るにはいくらお金が必要になるのか。「選挙で勝つには金がかかる」という印象を抱いている人は多いのではないでしょうか。
しかし、実は選挙自体にはあまりお金はかかりません。かけられるお金というのは限りがあるし、選挙ビラやポスター、街宣車など選挙に必須なものについては公費負担の制度があるからです。供託金も一定の得票をすれば戻ってきます。立憲民主党、また今回で言えば中道改革連合のような野党第一党の候補者として出た場合に、供託金が没収される「得票率1割未満」となるケースはほとんどありません。
供託金300万円×200人で6億円!
ただし、日常の政治活動はお金がかかります。事務所を維持し、秘書を雇い、印刷物を作成し、車を用意して選挙区内を日々回るとガソリン代だけでもバカになりません。それが1年、2年と続くと費用も莫大になるし、その間は生活費も何かしらの手段で稼がないといけません。ところが、選挙直前での出馬だとそうした費用はかからない。なので、選挙が決まってから立候補というのは金銭的な負担は重くないと言えるでしょう。
新人の候補者に対して、党は大体1000万円くらいの資金を投入します。300万円もする供託金や、選挙事務所を借りたり、「そんなにお金がかからない」といってもそれなりの資金が必要となるからです。選挙戦で、接戦となれば追加での支援も行っていきます。その辺りは情勢を見極めていくことが重要になります。
私は2024年9月から選対委員長と代表代行を兼務していたので、ほぼ私の段階でカネの差配をしていました。
小選挙区で立候補するほとんどの議員は比例代表にも重複して立候補します。その場合は比例区への立候補として選挙区とは別に300万円の供託金が発生します。それについては党がまとめて支払うことになりますが、その数が200人となればそれだけで6億円を用意する必要が生じます。さらに党として広告、宣伝に莫大な資金を投下することになります。
広告は昔であればテレビ、ラジオ、新聞と決まっていましたが、今は圧倒的にネット広告の重要性が増しています。また、各党が同じように広告費をかけていますので、政党にとっては選挙にお金はかかるという状況です。しかし、党として使える資金には当然ながら限りがあります。その資金をどうやって有効に使い、最大限の効果を得られるようにするか。それを考えて実行するのも選対委員長としての重要な任務でした。