中国からの撤退がとまらない
ここにきて、中国から脱出する企業が一段と増えている。
1月上旬、米グーグルは、上位機種の開発拠点をベトナムに移すとの報道があった。改革開放以降、工業化の推進により“世界の工場”の地位を確立した中国だが、最近大きな転換点を迎えている。
多国籍企業の脱中国の背景には、中国の政治・経済に関する懸念や、地政学リスクの上昇がある。経済面では、不動産バブル崩壊によって、実体経済の低迷が続いている。デフレ圧力の高まりにより、個人消費や設備投資は減少傾向だ。今後、中国政府がどのような政策を立案、運営するか不透明感も強い。
それに加えて、米国ではドナルド・トランプ大統領が、“ドンロー主義”を掲げた。
米国は西半球での影響力拡大を重視し、化石燃料とレアアース(希土類)など鉱物資源への影響力を強めようとしている。特には軍事力などをバックに、同盟国への圧力や関税を利用したメリット要求は増えるだろう。
チャイナリスクとトランプリスクが合わさることで、世界経済のデカップリング(分断)は加速する恐れがある。
わが国の企業にとって、可能な限り地産地消の体制を確立する必要性は高まっている。中長期的な視点で、中国市場からの撤退を視野に、脱中国に取り組む必要性も高まるだろう。中国以外の市場での競争に勝ち残るため、新しい製品の創出は急務だ。
商品が売れない…
中国事業を縮小、撤退する世界の主要企業は増加している。わが国企業も、自動車以外に化粧品分野などで中国事業に苦戦するケースが増えた。
一例は化粧品大手の資生堂だ。昨年11月、同社トップは、中国市場でかつてのような成長は見込めないと悲観的な見解を示した。コーセー、ポーラ・オルビス、なども中国での収益落ち込みに直面している。
中国市場の開拓を重視した、高価格帯の化粧品ブランドも同様だ。
米エスティーローダーは、中国事業の収益悪化を主な理由に、最大7000人の大規模なリストラを余儀なくされた。同社は、手ごろな価格帯の化粧品ブランドを投入することで巻き返しを図ろうとしている。家具の分野でも、2026年1月、スウェーデンのイケアが上海など7つの中国店舗を閉鎖すると発表した。
昨年来、中国事業のリストラを発表するわが国の企業は増えている。TOTOは、北京と上海の2工場を閉鎖し人員を解雇した。昨年11月、キヤノンは、広東省中山市にあったレーザープリンター工場の稼働を止めた。
また、ソニーはスマホ”エクスペリア”のウィーチャット(微信)アカウントを閉鎖したようだ。2010年頃まで、ソニーの携帯電話(フィーチャーフォンとスマホ)は中国市場でトップ5にランクインしていた。家電、化粧品、衣料品など中国の消費者にとって高品質な日本の製品は憧れの的だった。
しかし、スマホ分野におけるファーウェイやシャオミの急成長など中国ブランドの台頭で、わが国をはじめ主要先進国の企業が中国で高シェア、高成長を実現することは難しくなっている。
急上昇するチャイナリスク
近頃、中国で事業展開するリスクは急激に高まっている。
中国経済は、不動産バブルの崩壊により、個人消費や設備投資の減少に歯止めがかからない。政府からの産業補助金目当てに、企業は投資に投資を重ね、過剰生産能力も膨張している。こうした影響で、韓国ではLGやロッテの石油化学品メーカーが、政府の指導で生産能力を削減しなければならない事態にまで発展した。
中国ではデフレ圧力が高まっているものの、低価格競争が熾烈化する市場環境に対して、中国政府は有効な打開策を実施できていない。中国政府は、いまだに経済低迷の真因をしっかりと認識できていないのかもしれない。
そうした状況下、半導体などの AI関連分野やレアアース(希土類)を巡り、米中対立は先鋭化した。世界の企業にとって、中国を除いた主要な市場で開発、生産、供給体制を完結する必要性は高まっている。
規制面の不透明感も一段と上昇した。
反スパイ法の施行による企業、従業員への監督強化などに加え、業種ごとの規制も拡充されている。昨年、国家食品薬品監督管理局は、5年をかけて“24項目措置”の規制を実施すると明らかにした。
これは世界トップ品質を生み出す産業構造の実現が目的だとされているが、具体的なプロセスには不透明な点もある。
ただ、化粧品の成分などのデータを、当局に明示することが義務付けられるようだ。台湾から調達した資材の含有量などにまで当局の監視の目が届く可能性が高いとの指摘もある。一連のチャイナリスクに対応するために事業の縮小、撤退を検討する企業は増加傾向だ。
しかし、主要な企業が脱中国に取り組む要因は、チャイナリスクだけではない。
つづく記事〈企業の脱中国がとまらない…“世界の工場”の座を奪うかもしれない「3つの国の名前」〉で、さらに詳細を解説する。