かつてバイキング形式の焼肉食べ放題のパイオニアとして一世を風靡した「すたみな太郎」が苦戦を強いられている。2019年初頭には、「バイキングレストラン」という業態では国内最多の142店舗を有していたが、直近ではピーク期の約3分の1、43店舗にまで縮小しているのだ。
起死回生の一手として、すたみな太郎が選んだのは“スクラップ&ビルド”、すなわち、一度閉店した上でワンランク上の業態への転換だ。通常より内装を洗練させ、メニューを高級・充実化させた「すたみな太郎PREMIUM BUFFET」などへのリニューアルを積極的に行っている。
だがそれでも、すたみな太郎の客足が急速に回復するかと言われれば、そう簡単な話ではなさそうだ。どれだけ店舗やメニューが変わっても、創業当時から貫いている「バイキング方式」そのものが、今や“足かせ”になっている。
【前編記事】『「週1ペースで閉店ラッシュ」すたみな太郎、命運かける「安さを捨てた」プレミアム業態転換の成否』よりつづく。
どのチェーンも「テーブルオーダー」主流だが
そもそも「焼肉食べ放題」という業態は、バブル崩壊後の90年代、景気低迷により客足が鈍化していた焼肉チェーン店の苦肉の策として始まったもの。それが功を奏して客足が戻ると、焼肉店が次々に食べ放題を導入、市場を拡大していく。「すたみな太郎」もまた、この時流に乗って、当時としては珍しい「バイキング方式」を導入し、顧客を獲得していったわけだ。
ところが、それも昔の話。気付けば焼肉食べ放題は同質化競争になった上で、激しい価格競争が繰り広げられている。その結果、体力消耗戦になって市場から撤退を余儀なくされるパターンもありふれたものとなった。そもそも、すたみな太郎がウリであった「低価格の食べ放題」自体、単価アップが望めず、採算的にも期待できない業態。何か変化を与えない限り、限界を迎えるのは時間の問題だ。
何より、すたみな太郎が抱えているのが、自身の特徴であるバイキング方式が今や足かせになっているのではないか――という問題だ。
ご存じの通り、現在の焼肉食べ放題市場を見渡すと、タッチパネルを採用した「テーブルオーダー方式」がすっかりスタンダードになっている。焼肉チェーン界のパイオニア的存在である業界1位の「牛角」はもちろん、近年飛躍的な成長を遂げて業界2位に立つ「焼肉きんぐ」もそうだ。それに続く「安楽亭」「七輪焼肉 安安」なども導入を進めている。
これは言い換えれば、チェーン店の大部分がタッチパネルによるテーブルオーダー方式に経営的な合理性を認めているとも言えるはず。にもかかわらず、すたみな太郎は以前、唯一オーダーバイキング方式を採用した「すたみな太郎NEO 立川店」という業態をつくったものの、2020年に閉店。以後、特段採用する気配は見られない。
逆風にさらされるバイキング方式
もちろん、すたみな太郎がこだわるバイキング方式にはメリットもある。商品注文のたびに客足に店員が足を運ぶテーブルオーダー方式と違って、ホール要員の作業動線が比較的短くて済む。そのため、200席以上もの広々とした店内であっても、少人数のスタッフで対応可能で、低価格を維持できる。当然、団体客のニーズも確保できるわけだ。
ただ、その一方で、テーブルオーダー方式にはない作業も求められる。商品が並んだ料理卓は細かな補充が欠かせないし、盛り付けに関しても常に綺麗な状態を維持する必要が出てくる。特に些細なことでネットやSNSに口コミが投稿される時代、雑然としたバイキングの盛り付けは非難の的になりやすい。
時代の流れを鑑みても、バイキング方式は逆風にさらされている。テーブルオーダー方式は商品を追加する際にきまって数量制限があるものだが、バイキングは客が食べたいだけよそえることが可能だ。無論「取ったら残さない」というのが社会通念ではあるが、残食が多いのが現実。廃棄ロスが増えることは、企業にSDGsへの取り組みが求められる今の時代には反している。
焼肉食べ放題が普及しておよそ30年以上が過ぎ、市場も成熟期から随分と経った。消費者もすっかり食べ放題を熟知しており、当然「客に原価の低い商品でお腹を満たしてもらえば店は儲かる」ということも理解している。この物価高なら、なおさら敏感のはずだ。
ただでさえ、どのチェーンも焼肉食べ放題のメニュー構成について、その匙加減で頭を悩ましている中で、現代ではデメリットすらあるバイキング方式をあえて採用し続けるという、すたみな太郎の選択ははたして正解なのだろうか――。いい意味での“差別化”として映るか“時代遅れ”として映るかは、消費者のみぞ知るところだ。
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