不動産投資を考えている人は、「高利回り」という言葉を目にすると心動かされるかもしれません。私もかつてはその1人で、24歳のときに「利回り10%」の物件を購入したことがあります。しかし今は、そのような物件に絶対に手を出すべきではないと断言できます。
なぜなら、高利回りという魅力的な響きの裏には、取り返しのつかないリスクが隠されているからです。儲かるはずの投資物件が、最悪の場合、借金を背負いかねない可能性もあるのです。
そこで、私自身がこれまで90戸の物件を所有・運用してきた経験と、「販売戸数日本一の不動産営業マン」として積み上げてきた実績にもとづき、高利回り物件に潜む危険なリスクをお伝えします。
【前編記事】『不動産投資「高利回り物件」はじつは「借金地獄」への入口だった…プロも大後悔した「700万円」の物件が完全にギャンブルだったワケ』よりつづく。
リスクを知らない「高利回り信者」の勘違い
先日、ある年配の投資家の方にお会いしました。その方は「自分は成功している」と信じており、利回りだけを基準に、500万円や600万円といった古い物件ばかりを10戸以上も購入されていました。そして、「同じような高利回り物件を持ってこい」とおっしゃるのです。
私は、その方がたまたままだ大きなトラブルに遭っていない「運が良い」状態であり、ご自身の成功を勘違いされていると感じました。私が自信を持って案内できるのは、そのようなギャンブル投資ではありませんので、丁重にお断りしました。
私が最も懸念しているのは、家賃の安さが「入居者の質」に直結しやすいという点です。大変申し上げにくいことですが、家賃の価格帯と、入居者の属性やトラブル発生率には、明確な相関関係がある、というのが私の実感です。
結論から言うと、家賃6万円が境界線です。
私の経験上、家賃滞納を繰り返したり、ゴミ屋敷化してしまったり、あるいは騒音トラブルを起こしたりといった問題行動が見られるのは、その多くが家賃6万円以下の物件なのです。
家賃が5万円台、あるいはそれを下回るような物件になると、残念ながら家賃滞納やゴミ屋敷化といったトラブルの発生率が格段に高まります。
なぜ、そうなるのでしょうか。それは、一定の家賃を支払えるだけの安定した収入や社会的信用がない方が、結果として、そうした低家賃物件に集まってくる傾向があるからです。
私たちが過去に多く見聞きした事例には、次のようなものがあります。
■部屋が汚部屋化し、家電・家財を放置したまま退居
入居者が退去した後、部屋が汚部屋化し、ゴミで埋め尽くされていた、というケースです。ひどい場合は、大型の家具や家電をそのまま置いていなくなることもあります。これらを撤去し、部屋を元通りにきれいにするための清掃費用や残置物撤去費用は、すべてオーナーの負担となります。
次に、低家賃物件には、特定の目的(住民票の取得など)のためだけに部屋を借りる外国籍の方が入居するケースもよく聞きます。彼らがすべて問題というわけでは決してありませんが、短期で解約を繰り返したり、ゴミ出しのルールを守らなかったりする方も少なくないのです。
もし1年ごとに入居者が入れ替われば、その都度、空室期間が発生します。さらに、リフォーム費用や次の入居者を募集するための広告料もかさみます。せっかく高利回りで得たはずの数万円の利益は、これらのコストで簡単に吹っ飛んでしまうのです。
■ワンルームに複数人で同居の契約違反も
加えて、家賃が安い物件で無視できない問題は、契約者以外にも、複数人が雑魚寝状態で暮らしているケースです。これも決して、めずらしい話ではありません。また、レアケースだと思いたいですが、部屋の中で違法なものを栽培していたり、犯罪の拠点になっていたり、といった事件も過去にはありました。
こうしたトラブル対応は、オーナーにとって金銭的にも精神的にも、計り知れない負担となります。
一度トラブルが発生すれば、その対応には多大なコストと手間がかかります。高利回りで得られるはずだった利益は、こうしたトラブル対応費用に消えていくことになるのです。
数字の裏側にある「将来のリスク」を見極める
失敗しないマンション投資で、重視するべきポイントは次の2点です。
空室、家賃下落、予期せぬトラブルといった「将来に起こりうるリスク」を総合的に見極めること。
そして、たとえ利回りの数字が少し見劣りしたとしても、将来的に家賃が上がるポテンシャルを秘めた都心の優良中古ワンルームマンションを選ぶこと。
この条件を満たすマンション投資こそが、10年後、20年後に「あの時、正しい判断をしてよかった」と後悔しない選択なのです。不動産投資は、長期にわたる安定経営がすべてです。目先の利回りの高さに騙されないでください。
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