自民党との差異が伝わらない
「台湾有事発言」で日中関係をギクシャクさせても、高市早苗政権の高支持率は変わらない。FNN(フジニュースネットワーク)と産経新聞が11月22~23日に行った合同世論調査で、75・2%と高水準を維持した。
好対照なのが参政党だ。7月の参院選で1議席を15議席に伸ばして世間を驚嘆させ、8月の調査では野党第一党の9・9%まで支持率を伸ばしていたが、11月は半減以下の4・5%で野党トップを5・3%の立憲民主党に譲った。
そこにあるのは高市政権との同質性だ。選択的夫婦別姓に反対する高市氏の保守性は、スパイ防止法の早期成立や帰化要件を厳格にする政権の方向性につながり、「日本人ファースト」を打ち出す参政党と重なる部分が大きい。
神谷宗幣代表(48歳)が立ち上げた参政党は、「反グローバリズム」を掲げる政党だ。新自由主義経済のもとグローバル展開を進める大企業を後ろ盾とする自民党とは根本のところで異なるが、一般には差異が伝わらない。
結果、参政党の支持率は低下し、神谷氏の苛立ちをぶつけるような人事が11月26日に発表された。5名で構成されるボード(党の意思決定機関)メンバーのうちの一人、梅村みずほ参院議員の解任だ。
梅村みずほと豊田真由子の大ゲンカ
原因は週刊誌報道を巡るものだ。ボードメンバーの豊田真由子政調会長補佐が梅村氏に、「執務スペースが欲しい」と要望。梅村氏が参議院議員会館地下2階の党の部屋を提案すると、豊田氏が「私を地下に閉じ込めておく気か!」と激昂したという。
二人の対立は格好の「週刊誌ネタ」である。だが、神谷代表が明かした解任理由は「党の内規に違反し、勝手に取材対応した」というものだった。
執務スペースなどささいな話。梅村氏の取材対応といっても、「私の伝え方が悪く誤解を与えた」という回答は当たり障りのないもので、党や豊田氏を批判したわけではない。
政策や人事を巡って悪口が飛び交う自民党などに比べると処分は重く、神谷氏の狭量を伝えるエピソードである。元党幹部は「支持率低下の党を引き締める目的もあったでしょうが、これこそ神谷参政党の体質です」と指摘する。
神谷氏は代表兼事務局長である。代表は党の方針を決め、事務局長は予算、人事、公認権など党運営の全権を掌握する。神谷氏への権力集中を証明するのが、’22年7月の参院選以降の人事だ。
「参院選は松田(学)代表、神谷副代表のほか吉野敏明、赤尾由美、武田邦彦の5人が比例区で戦い、神谷当選に貢献した。しかし、神谷氏は’23年に入るとまず松田代表を『失言』を理由に辞任させて自ら代表となり、他の3人も11月までに離党に追い込んだ。神谷独裁体制の確立です」(前出の元党幹部)
後編記事『次も「参政党」に入れますか…?神谷代表独裁で進む「政党の私物化」と「おかしな政治資金の流れ」』へ続く。
「週刊現代」2025年12月22日号より
取材・文/伊藤博敏(いとう・ひろとし)/’55年、福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、’84年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力に定評がある。著書に『同和のドン 上田藤兵衞 「人権」と「暴力」の戦後史』など