“肉体派ライター”として体当たり記事を書いている佐藤大輝氏が、「開業4カ月でガラガラになっている」とネットで話題になっている『ジャングリア沖縄』を徹底検証。多くの国民が気になっている「ジャングリアの今」と「忖度なしの正直な感想」をお伝えします。
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駐車場はスカスカ。だけど開園前に行列ができる理由
名護市民Aさん「俺は楽しかったし、家族も喜んでいたよ。地元の人の評価は、うーん、半々って感じかなぁ」
名護市民Bさん「今のところ地元への経済効果は特に感じないね」
名護市民Cさん「名護の給料じゃ(ジャングリアへ)遊びに行くのは厳しいって意見をよく聞きますね。私も行ったことないです」
ジャングリアを訪れる前日、私はスパや居酒屋で出会った人に「ジャングリアってどんな感じですか?」と質問して回った。10名ほどに話を伺ったところ、ジャングリアに対する現地での評価は“賛否両論”といった感じだ。
「開業4カ月でガラガラになっている」といった情報がネットで散見されるジャングリア。私は12月6日(土曜)に名護市からバスに乗り、自分の目で「ジャングリアの今」を確かめることにした。バスには30人くらいの先客がいた。年齢層はバラバラで、お1人様が半分くらいを占めている。
移動中は公式アプリから“整理券”の抽選応募を行った。ジャングリアでは列に並ぶことで利用できるアトラクションと、当日の整理券ないしプレミアムパス(入場チケットとは別売り。1アトラクションあたり2000円前後で販売されており、待ち時間短縮や確実にアトラクションに乗れるなどの利点がある)を使って利用できるアトラクションがある。整理券の取得方法はこれまでは「先着順」だったが、11月22日(土曜)からアプリでの「抽選制」に変更された。
バスが到着した時、駐車場の15%くらいが埋まっていた。入口前には100人ほど並んおり、私も列に加わったが、この日の最高気温の予報は23℃。汗をかきながら待っている間、日傘を差した4人家族が「真夏日だったらこれ地獄だね」「気球だけ今も先着順とか早く改善してほしいわ」と苦笑いを浮かべていた。
人気アトラクション。待ち時間は…え、まじかよ
10時ちょうどに開園。人の流れに逆らわずに5分くらい進むと、気球の整理券が配布される場所にたどり着いた。整理券はスマホでQRコードを読み取り、応募するやり方のようだ。私が獲得した整理券は「53組待ち」で、搭乗の可能性がある場合はメールで通知されるらしい。
次に私は、オープン当初に“300分待ち”を記録したアトラクション、「ダイナソーサファリ」を目指した。が、この時点でパーク内はすでにガラガラ。通路には人がほとんどいない……。お目当てのダイナソーサファリには30人ほど並んでいた。しかし待ち時間は20分と表示されており、「これしか並んでないのに20分も待つの!?」というのが私の素直な感想だ。
しかしラッキーなことに、なんとジャングリアでは「シングルレーン」が設置されていた。よってお1人様の私は、待ち時間0分でアトラクションを体験することができた。
大型オフロード車で急傾斜や悪路(巨大な水たまり)を駆け抜ける体験は、正直かなり面白かった。ご一緒した名護の7人ファミリーも、「悪い噂も聞いていたが大満足だった!」と興奮気味に語ってくれた。ただし、もしも待ち時間が60分を超えてアトラクションを体験した場合、それまでに蓄積されたストレスや疲労感から、評価の賛否が分かれそうな気もする。
次に私は、パーク内の混雑状況を確認するため、パークの中をぐるりと一周することにした。そこには衝撃的な光景が広がっていた。
これは完全に想定外。筆者の見た衝撃的な光景
ジャングリア大丈夫かな…。筆者の正直な感想
誰も歩いてないパーク内の通路。土曜日なのに営業してない屋台……。各アトラクションの入り口にはパラパラと人が並んでいるが、全体的にかなり閑散としている。沖縄旅行は夏がピークで、冬は閑散期に入ることは知っていたが、経営が上手くいっているのか心配になるほど、12月のジャングリア沖縄はガラガラだった。
スタッフの方々のホスピタリティは高く、好感を抱いた。すれ違うたびに「ようこそ、ジャングリアへ!」と笑顔で声を掛けてくれたり、アトラクションの前で「こちらのアトラクションは……」といった説明をしてくれたり、来場者に楽しんで帰ってもらえるよう、一生懸命に頑張っているスタッフが大半を占めていた。
その一方で、少しモチベーションが低そうなスタッフも散見された。アクセスがよくない沖縄北部において“プロ意識”を持った人材を確保するのは、かなりハードルが高いことは想像に難くない。しかし私を含めた来場者の多くは、ディズニーのキャストが“神対応”で統一されていることを知っている(つまり、どうしても比較してしまう)。
ジャングリア沖縄、誕生までの挫折と成長の物語が書かれた本『心に折れない刀を持て(ダイヤモンド社)』によると、ジャングリアは大手メガバンクからの融資が1円もなく、クールジャパン機構や地銀などから700億円の資金調達を行い、2025年の7月25日に誕生した。
観光業を日本の次世代の食い扶持にするための“構造”をつくり、最終的には世界を舞台に多拠点展開させる……このような壮大な夢についても本書で語られていた。
クールジャパン機構が80億円を出資している(とどのつまり国民の税金が投入されている?)以上、納税者としてジャングリアを応援したいなと思いながら、私はお昼ご飯を食べるためにレストランの中へ……。
ガラガラでも油断大敵。ジャングリアの構造的弱点
パーク内に1カ所しかない屋内レストランに入ったのは午前11時過ぎ。受付には10名ほどが並んでいた。早めのランチだったこともあるのだろう。5分も経たない内に案内してくれた。店内の席は半分くらい空いていた。私は「アクアパッツァ~本日のアイランドフィッシュ~(税込2800円)」を注文。インスタ映えしそうな盛り付けで、味も悪くない。
食後はパーク内をプラプラ散策した後、当選した整理券のアトラクション(足場の悪い吊り橋を進んでいくアトラクション)へ向かった。近くに韓国人の男性グループがいたので、「ジャングリアgood? bad?」と質問してみたところ、「a little good」と回答があった。ちなみにマレーシアから来た家族は「very good」、名古屋から来た20代男性は「70~80点くらい」だと教えてくれた。
整理券で当選したアトラクションはスリリングで面白かった。ただしこの日、私は計4回抽選に応募して、当選したのこの1枚だけ。もしも全部外れていたらと思うと、ちょっとゾッとする。1Dayパスに約7千円を支払い、さらに追加でプレミアムパス(確実にアトラクションを体験できる)を購入するのは、正直なんだか気が引けてしまうからだ。
14時頃に「(気球の)お席がご用意出来そうです」と書かれたメールが届いたので、私は乗り場へ向かった。ネットでは「終日運休ばっかり」と叩かれているジャングリアの気球。スタッフの方に話を伺ったところ、「今日は現時点で24組くらい飛んでいる」「1組あたり8~10人くらいを乗せて飛ばす」「7月25日にオープンしてから、気球が飛んだのは40日くらい」といった情報を教えてくれた。
気球からの景色は“素晴らしい”の一言に尽きる。水色の海は綺麗で、風が気持ちよかった。とはいえ気球を目的にジャングリアに来るのは、正直かなりリスキーだと思う。なぜなら気球が飛ぶ確率は30%くらいで、ここに先着順の競争も加わるから。
その後、16時過ぎのバス(那覇空港行き)が来るまで、私はパーク内外をブラブラして過ごした。お土産屋さんを見に行ったり、駐車場の混雑状態を確認したり、パーク内にある円周の歩道を“2回転”したり……(ちなみに20分くらいあればパーク内を1周できる)。
最後まで読んでくれたアナタに、筆者が伝えたいこと
50名ほどが乗車できる空港行きのバスには、全部で15人くらいが乗っていた。那覇空港には約2時間で到着。様々な想いを胸に、私は沖縄を飛び立った。
今回の検証結果についてまとめると……。
・12月のジャングリア沖縄はガラガラ
・それでも希望するアトラクションに乗れるとは限らない
・気球は基本飛ばない。乗れたら超ラッキー
・現地のスタッフは頑張っている
これは私の感想だが、運ゲー要素の強いジャングリアは「沖縄旅行のメインプラン」として位置付けるのではなく、お金と時間に余裕のある人が「沖縄旅行のサブイベント」として訪れるのがいいかもしれない。例えば3泊4日で沖縄旅行を計画している人が、名護にある「美ら海水族館」にも行ってみたいが、それだけのために名護に行くのは遠いので気が引ける……といった場合に、ジャングリアとの“2刀流”で計画を立てれば、旅行全体の満足度がより向上すると思うのだ。
またこれも私の感想なのだが、ジャングリア沖縄はディズニーとユニバと同じ感覚で、遊びに行く場所では(少なくとも現状においては)ないような気がしている。アトラクションの数や質。悪天候への耐性やパークの規模感など、大なり小なり差があるような印象を受けたからだ。
最後に一言。東京や大阪といった本州に住んでいる私たちは、かなり高額な旅費を負担して、ワクワクした気持ちで沖縄旅行を計画する。本記事が日本人の大切なお金と笑顔を守るために、何か1つでもお役に立てる情報を提供できたのなら、名もなき書き手として最高の喜びである。
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