開業から4ヵ月が経っても“ジャングリアへの疑念”が解消されないワケ
ジャングリア沖縄が荒れている。荒れ続けている。2025年7月25日から営業開始した同施設はオープン当初、人気アトラクションの待ち時間が300分オーバー。施設内には小休憩用の日陰や椅子が少なく、来場者は炎天下や悪天候に苦しめられるなど、不運も重なって散々なスタートとなった。
開業前に期待値を上げすぎたこと、事前のイメージと実態のズレが大きかったことも、ジャングリアが叩かれている要因の一つだ。開業前に公開されたイメージ映像では、恐竜が追いかけてくるシーンや大自然の絶景など、「ジャングリアに行ってみたい!」と感じさせる内容だった。ところがどっこい。開業日以降、来場者から「恐竜は追いかけてこない」「ガッカリした」「誇大広告、ちょっと盛り過ぎだと思う」といったコメントが散見されるようになった。
経済メディアNews Picksの報道も痛い。ジャングリア沖縄の生みの親は「マーケティングの神様」として知られる森岡毅氏、彼が率いる株式会社刀というベンチャー企業なのだが、この会社が森岡氏のファミリー企業に毎年1億円規模のお金を支払っている、と同メディアが報じたのだ。刀には国のお金(クールジャパン機構が刀に80億円を出資)が入っていることもあり、ネットには批判のコメントが数多く寄せられた。
この報道に対して刀は、憶測や偏った見方による一方的な内容で、大変遺憾だと公式サイトで発表したが……News Picks関係者が「報道対象は高い公益性を有しており、内容には確信を持っております」と動画のコメント欄に投稿。両者まったく譲らない様相となっており、いったい何が事実でどちらが本当のことを言ってるか、私たち一般人からすると疑問と不信感が生まれやすい土壌がある。
様々な情報が飛び交うジャングリア。その中でも特に気になるのが、「開業4カ月でガラガラになっている」という情報がネットで散見されることだ。そこで今回私は実際に現地へ行き、真偽を確かめることにした。が、旅行計画を立てる段階で、ジャングリアの抱える構造的課題がいくつも見えてきた。
そりゃ厳しいわ…。旅行計画者がガッカリする〇〇の悪さと〇〇の短さ
旅行計画を立てる際、まず頭を抱えたのが「アクセスの悪さ」と「営業時間の短さ」だ。ジャングリアがあるのは沖縄北部で、那覇空港から80キロほど離れた距離にある。車かバスで片道1時間半~2時間くらい必要になり、ここに沖縄までのフライト時間等が加算される。ちなみに神戸在住の私は午前5時頃に起床、朝一の飛行機に乗っても、ジャングリアに辿り着くのは早くても12時前後になる。
那覇空港からジャングリアまでは直通バスが出ているが、その数は1日に3本のみだ。県庁前や国際通り発のバスも、1日に6本程度しか走っていない。運賃は片道2500円。沖縄は車社会のためレンタカーを借りるという手段もあるが、私を含めた運転に不慣れな人たち(外国人を含む)は、旅先でレンタカーを借りるという選択肢は除外されやすいはず⋯。
パークの営業時間の短さも大きな課題だ。12月(年末を除く)のオープンは10時からで、クローズは平日が17時、土日は19時が基本スタイルとなっている。ディズニーランドなら9時~21時頃まで、ユニバなら8時30分~20時過ぎまで営業していることを考えると、ジャングリアの営業時間は短い。沖縄に到着したその日の内にジャングリアを楽しむのは、さすがにちょっと厳しいだろう。
逆のルートもまた然りだ。ジャングリアを楽しんだ後に那覇空港に向かい、自分が住んでいる都道府県に戻りたい場合は、仮に夜発のフライトだったとしても17時前後には、ジャングリアを出発する必要がある。私が何を言いたいかというと、ジャングリアを楽しむためには前泊あるいは宿泊を前提に、旅行計画を立てなくてはならない。最低でも1泊2日、可能なら2泊3日くらい(つまり3連休が)必要になる。
ちなみにジャングリアでは花火が(主に土曜と日曜の)19時から打ち上がるのだが、これを見ることができるのは当日に沖縄に宿泊する人だけ、ということになる。が、ジャングリアからバスで約30分の距離にある「名護市」に宿泊する人も、「ジャングリアに夜までいるのは無理ゲー」と感じている可能性がある。それはなぜか。
名護行きバスの最終は16時。時刻表にもミスが…
公式サイトによると、ジャングリア発~名護行きのバスは年末を除いて、16時前後に最終便が出発する(年末は19時ごろが最終便)。お伝えした通りジャングリアへのアクセスは、決していいとは言えない。営業時間も短い。だからこそジャングリアを楽しんだ後、近郊の「名護市」への宿泊を考える人は少なくないと思うのだが……「名護に宿泊するバス利用者は16時にはジャングリアを出てください」といった状況は、いかがなものか。
ジャングリア沖縄、誕生までの挫折と成長の物語について書かれた『心に折れない刀を持て(ダイヤモンド社)』には、このような記載がある。
≪県民所得が全国最下位の沖縄県の中で、さらに貧困率が高い沖縄北部にテーマパークを創り、この地域に雇用を生み出し、経済を回し、多くの高度観光人材を育成して全国に輩出し、観光業を日本の次世代の食い扶持にするための“構造”をつくる……。やがて沖縄で生まれたその会社は海を越えて、成長し続ける世界に日本発のテーマパークとして多拠点展開させる……≫
様々な大人の事情があることは承知の上で、今のインフラの脆弱さのままだと、落ちるお金も落ちにくい気がする。ジャングリアの1Dayチケットは、大人が税込6930円。子供が4950円だ。決して安くない値段を支払って、私たち一般人はジャングリアを訪れる。上級国民のインフルエンサーと異なり、長距離移動のためにバスを使うこともあるし、パークに着けば長蛇の列にだって並ぶ。たくさんのお金と時間を使ったとしても、それでも「楽しかった!」「来てよかった!」と割に合うようなテーマパークになってほしいと、私は願ってやまない。
これは余談だが、今回私は偶然、ジャングリアから名護行きのバスの時刻表に“誤記載”を見つけた。現実にはありえない時刻に、バスが出発することになっていたのだ。私は問い合わせコーナーから運営にこの事実を指摘。担当者から翌日にお礼のメールが届いたが、1週間経っても時刻表は修正されなかった(現在は修正されている)。
些細なことかもしれないが、私はお客様のことを真剣に考えていないような印象を受けたし、「余計なお世話だったのかな」といった虚しい気持ちも生まれた。
行くぜジャングリア! 筆者の旅のプランはこんな感じ
今回私は肉体派ライター(実際に現地へ行くなど、フィジカルを生かした体当たり記事を書いている)として、開業から4ヵ月が経過したジャングリア沖縄へ訪れることにした。
熟考した結果、私が計画した1泊2日の旅行プランがこれだ!
1日目「スパジャングリア検証Day」 12月5日(金曜)
5時30分起床 → 6時過ぎに自宅発 → 神戸空港7時50分発 → 那覇空港10時00分着 →ジャングリアエクスプレス(バス)で那覇空港11時15分発 → ジャングリア沖縄13時着 → スパジャングリアへ移動して検証開始 → 16時発の最終バスで名護市へ → 16時25分に名護市役所着後、名護市のホテルに宿泊
2日目「ジャングリア沖縄検証Day」 12月6日(土曜)
8時00分起床 → 9時前にホテル出発 → ジャングリアエクスプレスで名護市役所9時00分発 → ジャングリア沖縄9時30分着 → 10時開園と同時に検証開始 → 16時30分発のバスで那覇空港へ → 那覇空港18時40分着 → 那覇空港20時35分発 → 神戸空港22時20分着 → 24時前に自宅に到着
*ジャングリアから専用バスで約5分の距離に「スパジャングリア」という入浴施設(ジャングリア沖縄とは別料金)があり、ここにはギネス認定された「世界最大のインフィニティ風呂」がある。ユーチューバーの“ヒカキン”さんは、「このスパも主役だぞ」「ここ来ないと勿体ないね。ジャングリア来たら」などと発言していた。よってこちらも体当たりすることにした。
中編『「マリーナベイサンズと比べると…」初日検証で判明した『ジャングリア沖縄』の「ギネス認定スパ」“世界一”の厳しい現実』へ続く。