2023年、かつて米国のファストファッションの象徴であった「FOREVER 21」が日本市場に“3度目”の上陸を果たした。アンドエスティHD(旧アダストリア)、伊藤忠商事とAuthentic Brands Group(以下、ABG)とのライセンス契約による再展開は、「グローバル・ファストファッションブランドの再定義」を掲げた再挑戦でもあり、Z世代を中心とした若年層へのアプローチを狙ったものであった。
しかし、2024年末には旗艦店閉鎖の動きが見え始めると、再び存在感を失う結果となった。米国でFOREVER 21を運営していたF21OpCo社は、今年の3月に米連邦破産法11条の適用を申請、2度目の破産申請となった。そんな状況も影響してか、アンドエスティHDは、2026年2月期中に日本から3度目となる撤退を今秋、発表したのである。
初上陸はたった1年で、ひっそり撤退
そもそも「FOREVER 21」は、1984年に韓国系米国人のチャン・ドウォン&ジンスク夫婦が創業。ロサンゼルス郡内住む韓国系移民の若者向けに作られたブランドだった。
日本への初上陸は、2000年に三愛(現在の株式会社Ai)と提携して2店舗出店したが、わずか1年ほどで撤退。実はFOREVER 21の出店が世間で騒がれ、注目を集めたのは2度目の上陸となった2009年4月の原宿店オープンからだ。
ちょうど前年の8月にH&Mの日本1号店が銀座にオープンするなど、外資系ファストファッションに勢いがあった頃だ。「安くてカッコ良い」をウリにFOREVER 21も順調に売り上げを伸ばし、一時は全国で14店舗を展開していた。
ただ、オープニングイベント含めメディアにも取り上げられて勢いがあったものの、あくまで一過性のもの。チープな素材感や雑な縫製など安いなりの品質の悪さもあって、客離れが進んだ結果、閉店が重なり2019年には日本からの完全撤退となった。
2度目の上陸となった2009年当時を振り返ると、H&M、ZARA、GAPなどが次々と日本市場に進出。さらにユニクロが『ヒートテック』や『+J』コラボでファッション性を獲得し始めた時期でもある。原宿店オープン時には長蛇の列ができ、「安くてトレンド感のあるLAスタイル」はSNS黎明期の若年層から強い支持を受けた。
当時の日本市場では、「ファストファッション=新しいカルチャー」としての価値が存在した。その点では、FOREVER 21は価格×ファッショントレンドの即効性によって購買を喚起したと言える。
2度目の撤退は「単なる経営破綻」ではない
しかし同時に、FOREVER 21は在庫過多・品質不均一といった構造的課題も抱えていた。
そのため、2015年以降、消費者のファッション志向も“トレンド消費”から“自分らしさ消費”へと移行していく中で、急速にブランド価値を毀損していく。そして2019年には今回と同様に米国で米連邦破産法11条の適用を申請、日本市場からも撤退してしまうことになってしまった。
この2度目の撤退の要因には、ファストファッションモデルの限界があったと考えられる。ZARAを模倣した短サイクルMD、グローバル仕入によるボリューム展開、そして「安く・早く・多く」という量的競争。しかし、このモデルは2010年代後半、SNSによるトレンド変化の加速と同時に、過剰供給とブランド同質化を招いてしまった。
生活者側でも、「大量消費の時代」に対する倫理的・環境的な懐疑が高まりつつあった影響も大きい。事実、H&MやFOREVER 21の大量廃棄問題が批判の的となった。
ZARAやH&Mが一部で、サステナブル戦略に舵を切る中、FOREVER 21はその流れにも乗り遅れた。結果として、「可愛いけれど安っぽい」ブランドという評価に転じてしまい、若年層からの支持も急速に低下した。
つまり、2度目の撤退は単なる経営破綻ではなく、「ファストファッションという業態の転換点に対応できなかった」ことが大きな理由として考えられる。
“三度目の正直”もかなわず…
そんな2度の撤退を喫したFOREVER 21だが、2023年に“三度目の正直”、伊藤忠商事、アンドエスティHD社のライセンス運営により、再々上陸を果たす。旗艦店は渋谷・池袋など都心部に絞られ、初期段階ではEC中心の展開とした。
価格帯は2000〜6000円と、従来よりもやや上昇。アンドエスティは国内MD力と物流網を活かし、ABGはブランド資産を提供するという「日米協業モデル」であった。
この頃にはすでに、Z世代のファッション感度も多様化し、韓国ブランド(MUSINSA、NUGUなど)や中国発SHEINなどが台頭していた。この状況に対してFOREVER 21は、「NO Filter」をテーマに据え、カラフルなデザインやポジティブなメッセージ等、6つのファッションテイストで打ち出した。
しかし、開店当初の話題性を除けば、売上の持続性は乏しく、再び顧客の関心を取り戻すには至らなかった。再上陸当初、〈5年後(2028年)に売上高約100億円、EC化率60%、15店舗〉という青写真を描いていたが、3年を待たずして撤退となってしまったのである。
なぜ、FOREVER21はこれほどまでに再上陸→失敗を繰り返してしまったのか。【後編記事】『かわいいだけじゃダメでした《フォーエバー21日本撤退》本当の原因…なぜZARAやSHEIN、GUに敗北したのか』では、ブランドマーケティングや時流などを分析しながら、その理由を探っていく。