海外勢を有効活用
子供がサッカーキャンプに参加するため、最近よく訪れるポルトガルの不動産マーケットが、インバウンド投資に頼らずに堅調に推移しているのでレポートします。
現地を見ると、日本と比べて実に有効な海外資本の活用法や戦略が見て取れます。
ポルトガルの首都リスボンの不動産価格はとても好調です。現地の不動産会社の調査によると、リスボンの不動産価格は2020〜25年の5年間でエリアによってばらつきがあるものの60〜100%と大きく上昇しています。
これは、2019〜24年の5年間で不動産単価がほぼ横ばいであったロンドンや、低下したパリ(−5%)と比較しても顕著です。さらに欧州の中で好調だったマドリード(+70%)、ベルリン(+60%)、フランクフルト(+50%)、ミラノ(+40%)と比べても上昇幅は大きく、欧州主要都市の中で最高のパフォーマンスといえます。
このようにいうと、ここ数年で不動産価格が大きく上昇している日本の主要都市と同じく、外国人投資家によるインバウンド投資がけん引材料と思う方もいるかもしれません。しかし、実際はそうではありません。
確かに、ポルトガルには一定額以上の投資と居住により永住権を取得できる「ゴールデンビザ」という制度があり、23年末までは不動産もその投資対象でした。しかし、不動産投資は経済への貢献が小さいという評価がなされ、投資対象から外されました。現在は法人の設立や研究開発、文化保存などに資する投資のみが認められています。
ゴールデンビザの不動産投資は23年までに累計で70億ユーロ(約1.3兆円)を上回っていましたので、ある程度はリスボンの不動産価格上昇に貢献したでしょう。しかし、23年に不動産が投資対象から外されてからも、リスボンを中心に不動産価格は堅調に推移しています。したがって、外国人によるインバウンド投資に依存した上昇ではないことが分かります。
公的統計でも、不動産取引の9割以上がポルトガル人によるものであり、ポルトガル全体の不動産価格も2019〜24年で約50%上昇しています。実需に基づくバランスの良い上昇であるといえます。
「万博を起爆剤」に開発された沿岸部エリア
このように好調なリスボンの不動産ですが、特に価格が好調であるパルク・ダス・ナソエンス地区を、私はこの11月に訪れました。このエリアはここ数年で約75%上昇と、リスボンでも特に好調な数字を残しています。
この地区は元々、港湾施設があり倉庫などを中心とした低開発エリアでした。しかし、98年に行われたリスボン万博をきっかけに大規模な再開発が行われ、インフラや公共交通機関が整備されました。タホ川沿いを中心としてレジデンス(居住)地区も整備されています。
今回訪れた際も、空港からタクシーでわずか15分ほどで到着できました。街並みも整然としている上に、リスボン最大の鉄道駅もあり、実際に住む場合にも魅力的であると感じました。
また、リスボンでは珍しい大規模ショッピングモールも開発されており、インド航路を開拓した探検家ヴァスコ・ダ・ガマの名がつけられています。
このように20年以上前から再開発が進んできたエリアですが、ここ数年でさらに不動産価格が上昇した背景には、リモートワークの普及による職住近接のモダンなエリアの人気が高まったことが挙げられます。
そして、そこからは日本の不動産上昇に関わる危うさも見えてきました。
つづきは後編『「不動産高騰」は善か悪か…ポルトガルの成長と日本の危うさが示す“真の国民ファースト”』で、じっくりとお伝えしていきます。