新たな「節税つぶし」
富裕層にとっては、’24年に導入された「タワマン節税つぶし」に続く新たな衝撃だ。
11月13日、政府税制調査会の専門家会合で、国税庁がアパートの一棟買いや賃貸物件の小口化商品による相続税の節税効果が高いと指摘した。
オラガ総研代表で不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏が解説する。
「今回問題視された賃貸アパートは相続時、土地は貸家建付地の評価減、建物は入居率に応じた評価減が適用されます。そこに小規模宅地等の特例などを組み合わせれば、取得額の4割程度まで相続税評価額を減らせるケースもあります。
賃貸物件の小口化商品も同様に、評価額が時価の4割から3割程度まで小さくなる例もある。現金で相続するよりも、同額をアパートや小口化商品に投資していたほうが相続税評価額を減らすことができるわけです」
圧倒的な節税効果
とりわけ、近年登場した賃貸不動産の小口化商品の節税効果は圧倒的だと指摘される。元国税専門官で、マネーライターの小林義崇氏が言う。
「不動産小口化商品は相続税が安くなるだけでなく、生前贈与にも利用できます。贈与した場合、時価ではなく、相続税評価額で計算されるため、たとえば300万円の小口化商品を贈与すると、評価額が100万円になるケースも想定されます。110万円の贈与税の基礎控除以下のため、時価300万円の金融商品を非課税で贈与できる。
これを10年間、3人の子供に続ければ、総額500万円以上かかるはずの贈与税を払わずに、約1億円を生前贈与できてしまうのです」
こうした金融商品やアパート経営による相続税対策を当局は禁じようというわけだ。
「超富裕層に限られていた不動産節税が、より資産の少ない層へ広がる傾向が見られます。結果的に税負担の偏在と格差拡大につながる懸念もあり、すぐにではないでしょうが、国税としては是正の方向に動かざるを得ないのでしょう」(同前)
国税と富裕層の節税をめぐる「いたちごっこ」はまだまだ続きそうだ。
「週刊現代」2025年12月8日号より
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