日本への攻勢を強めるが
中国の日本に対する経済的威圧が激しさを増している。
中国政府は11月19日、日本産水産物の輸入を事実上停止し、「レアアースの輸出制限などもありうる」との観測も出ている。
中国の一連の措置は日本にとって痛手だが、「中国も重大な戦術ミスを犯したのではないか」との指摘がある。中国が自国の政策をごり押しするためなら「経済」を人質にすることも辞さないことを国際社会が改めて認識したからだ。
欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表は18日、NATO(北大西洋条約機構)の共同防衛精神を経済にも適用した「経済安全保障集団防衛」の枠組みの設立を呼びかけた。中国による経済的圧力への一致した対応が目的だとしている。
中国の姿勢にドイツは警告
EUの中で保護主義的な政策の導入に難色を示してきたドイツも態度を変えた。
中国を訪問しているドイツのクリングバイル財務相は18日、「中国の過剰生産能力について解決策が見つからない場合、EUは行動を起こす」と警告を発した。
欧州中央銀行(ECB)は「中国が国内の過剰生産品を低価格で欧州に輸出している主要因は、米国の関税ではなく中国の国内需要の弱さだ」と分析しており、中国が内需中心の経済への移行を進めなければ、EUも強硬手段に打ち出す可能性がでてきたわけだ。
経済的威圧に加え、他国との約束を遵守しないのも中国の悪いところだ。そのせいで米国との貿易戦争の停戦が失効するリスクが生まれている。
米中首脳会談で合意したレアアースなどの対米輸出規制の緩和について、米ウォールストリート・ジャーナルが13日、「中国は米軍と関係がある企業を除外する形で認可手続きを迅速に行う制度を検討している」と報じたように、米中間で詰めの協議がいまだに続いているのが現状だ。
3年2500万トン、実現できるのか?
中国の米国産大豆の購入も「空手形」に終わる見込みだ。
米国政府は「中国が年内に1200万トンの米国産大豆を購入し、その後3年間は年2500万トンを買い入れることで合意した」と発表しているが、中国側の動きは鈍い。
ロイターは17日、「中国は今年1月以降で最大規模の84万トンの米国産大豆を購入した」と報じた。しかし、輸入が順調に拡大することは期待できないとの見方が出ている。
今年に入り、中国は南米産大豆を大量に購入したため、国内の大豆市場が深刻な供給過剰に陥っているからだ。ロイターの20日報道によれば、10月の南米産の大豆輸入量は過去最高となったが、米国産の輸入量は2カ月連続でゼロだった。
中国に対して融和的な姿勢をとっているトランプ米大統領の堪忍袋の緒が切れるのは時間の問題なのかもしれない。
ここで気になるのが中国経済の現況だ。ここぞとばかりに日本への攻勢を強める中国。だが経済面では、日本化とでもいうようなデフレスパイラルに陥る兆候が見られていた。後編『1320兆円の隠れ債務に「雀の涙」の支援策…習近平が青ざめる中国経済、「デフレスパイラル」突入の現実味』にて詳しく見ていく。