子どもをどう育てるか、子どもとどのように関わるかは基本的に親の自由です。子育てに正解はなく、思った通りに育たないことも多々ありますが、それでも多くの親は我が子を愛し、最終的には立派に独り立ちできるよう育てています。
一方で、最近は経済不況や共働きの影響などで、我が子が自立した後も支援が必要な場合もあります。しかしその支援が老後の生活を圧迫するほどの負担になってしまったら、それはもはや自立とは呼べません。
そんな社会背景を踏まえて、今回は老後資金を失いかけた方の事例をお伝えします。ぜひ最後までお読み頂き、一つの教訓にして頂けますと幸いです。
(個人の特定を防ぐため、内容は一部変更しています)
どんどんエスカレートする娘の要求
その後、孫の成長に比例して萌さんの要求する額もどんどん跳ね上がっていきました。幼稚園に入る頃には、習い事の水泳の月謝と、100万円のピアノの購入費用をお願いされ、山崎さんは、今後痛手になるとやんわり断りましたが、「孫のためにお願い」と言われると「断り切れなかった」と言います。
さらに、孫が小学校に上がる頃には、萌さんが実家近くの分譲マンションを購入することになり、その半額の3000万円を要求されます。さすがに高額すぎると、山崎さんが減額を伝えても萌さんは聞き入れず、最終的にはお金を出してしまいました。しかしこの出費で、山崎さんの家庭の貯金額は3000万円を切ってしまいます。
いまは健康でも今後は病気に罹るリスクもあり、その際には医療費もかさみます。さらに、認知症にでもなれば、施設費や自宅のリフォームにもお金がかかるでしょう。これらの資金を考えると、さすがにこれ以上の出費はできません。
「今後は少し控えて欲しい」と事情を説明して一時は萌さんもそれに納得しましたが、結局のところ萌さんは徐々にまたいつも通りのおねだりに戻っていきました。日用品などの少額から始まり、その後は外食費やレジャー代、さらには家電や孫の塾代などの負担までもを強いられるようになります。
山崎さんはこの頃になってようやく、あることを思い出しました。山崎さん自身、萌さんには子どもの頃からお金を惜しまず、常により良いものを与えていたのです。我慢をさせたこともなく欲しいものはすべて買い与え、それこそが彼にとっての愛情であり、家族を養うという誇りでもあったそうです。
さらに悪いことに、こういった萌さんの育ちや金銭感覚に、翔太さんも影響を受けていました。
金銭的な援助はこれ以上できないと“家長”の翔太さんに連絡を入れると、「お義父さんは、萌さんにお金を出すことが喜びで、良いものの方が父も喜ぶと聞かされていたのですが…」。この一言に、山崎さんは初めて子育ての失敗を感じて愕然とします。
7000万円あった貯金が2000万円に
育て方を間違えたと気が付いてからは自戒の念もあり、かえって断れなくなった山崎さん。萌さんからおねだりされると同時に老後資金は容赦なく目減りしていきます。
貯金が減る不安を「いざとなったら娘夫婦に助けてもらえばいい…」と強引に払拭し、退職時には7000万円ほどあった貯金は、武さんが70歳になる頃は2000万円を切っていました。老人ホームの費用や葬儀代を考え、本格的に限界を感じた山崎さんは、娘夫婦を呼び、ついに「金銭的な援助は今後一切できない」と強い口調で伝えます。
「パパは私たちを見捨てる気? 親なら最後まで、私が死ぬまで面倒みてよ。お金を出してくれないならもう実家に来ないから。私たちに財産を残す気すらないなんて酷い」
萌さんはこう言って激怒し、あれほど頻繁にあった交流がこの日を境に一切なくなります。その後、山崎さんから連絡しても応答せず、自宅に行ってもドアを開けることもありません。翔太さんにそれとなく連絡はするものの「萌も娘も元気にしています」とそっけなく、仲介に立ってもらえませんでした。
交流を絶ってから数ヵ月経ち、山崎さんはようやく娘からの絶縁を理解したものの、いまだに現実を受け入れられない状態でした。
親子だからこそ「お金」はセンシティブに扱うべき
大金を失い、最後の老後資金は死守できた代わりに、娘にも孫にも会えず介護も期待できない状況に陥った山崎さん。まずこのケースでは、高年収だったことが悪い方向に働きました。
お金がなければ、自然と我慢を覚えさせられます。そういう意味で、お金がある方ほど、子育てにかけるお金については節度が大事になってくると言えます。山崎さんの萌さんに対する愛情は確かですが、自分が死ぬまで子どもの生活負担を支援ができない以上、先々を見据えて、どこかで相応の我慢や苦労を若いうちに経験させておくべきだったと言えるでしょう。
さらに結末を見れば、萌さんも不幸といわざるを得ません。何不自由なく育てられ、我慢を知らず自立もできず、これから子どもにお金がかかるタイミングで実家からの支援を打ち切られたわけです。今後は娘さんや翔太さんを含め、今までの生活との落差を感じるはずです。
まさに「金の切れ目は縁の切れ目」という言葉どおり、お金の切れ具合が急激であるほど、縁も切れるキッカケになりかねません。せめて突然の打ち切りではなく、限界を見据えて、段階的に減額を予告・実行していれば、結果はまた違っていたかもしれないと感じたケースでした。
…前編の<子どもの「実家依存」が止まらない…「孫のおむつ代」まで請求する30代娘に年収1200万円の父親が抱く「呆れた勘違い」【老後破綻】>では危うく財産を失いかけた山崎さんの子育ての実情に迫ります。