北川景子さんが生活のためにドラッグを売る二児の母親・夏希を演じ、森田望智さんが彼女を手助けする格闘家・多摩恵に扮した映画『ナイトフラワー』(内田英治監督/11月28日より全国ロードショー)。北川さんは夏希をほぼすっぴんかつ早口の関西弁で演じ、森田さんは多摩恵として壮絶なファイトシーンを披露。俳優2人の全身全霊の演技が観る者を魅了する、切なくも美しいヒューマンサスペンス作品が誕生した。
幼なじみの多摩恵に思いを寄せる風俗店勤務の男性・海を演じるのは、Snow Manの佐久間大介さん。内田作品への出演は、昨年公開された映画『マッチング』に続き2度目。2026年には、同監督との3作目となる映画『スペシャルズ』の公開も控えている。
海という役柄との向き合い方、自身が所属するSnow Manのグループ愛について語ってもらったインタビューに続き、インタビュー第2回では「演じる」ことについて、そして内田監督から受けた影響を聞いていく。
普通すぎると何も残らない。普通を演じる難しさ
ストーカーを演じた『マッチング』、に続けて今回の『ナイトフラワー』と内田作品への出演が続く佐久間さん。2026年には同じく内田監督による『スペシャルズ』で主人公の殺し屋を演じる。
今回の『ナイトフラワー』では、とりわけ「普通」を演じる難しさを感じたという。
「今まで僕が出演した内田監督作品のなかで、もっとも普通の男の子だったので、逆に難しかったです。僕自身ちょっと人間離れしていると言いますか、声が大きかったりしてキャラクター性が強いので、普通に僕自身の感じで芝居をすると『声デカすぎるだろ!』『この世界観の中で目立ちすぎるだろ!』となってしまうんですよ(笑)。
なので、たとえば怒るにしても、感情の動きをボリューム感でバン!と出すのではなく、グッと抑えた状態で怒ってみたり。そういった感情の細かい機微や表情、声量などを考えてまとめ上げなくてはいけない。難しいなと思いました」
しばしば「普通を演じるのが一番難しい」という声を耳にする。佐久間さんは今回、どう感じたのだろう?
「一番難しいですね。あまりにも普通すぎると何も残らないし、自分すぎてしまう可能性もある。どこをどう取るか、ですね。
今回、海としてすごく自然な演技をさせてもらったと思っています。なかでも多摩恵と一緒にラーメンを食べるシーン。幼なじみの距離感でじゃれ合いながらも、シンプルに『嬉しい』という気持ちを伝えられている。完成したものを観たときに、『いいな、このシーン』と思いました」
内田監督は、楽しさ、面白さに貪欲な人
アイドルオーラを消して挑んだという本作。それでも撮影序盤、監督から「今Snow Manが出ちゃってた(笑)。ちょっと決まりすぎ」と言われたことがあったとか。
「クランクインしたばかりのころに、『今の演技、ちょっとカッコ良すぎだな』と言われました。何でもない一言やパッと見たときの感じがSnow Manだったみたいで、『すみません、アイドル出ちゃいました!』って(笑)。
役者って、現場に行ってから自身が作ってきたものをすり合わせるじゃないですか。お芝居で対峙する人、スタッフさん、監督。その3人以上の人たちの意見を汲んで現場で作り上げて、『こう撮りますよ』という段階を作るのが役者だと思うので、あまり自分の中で固めすぎるのもよくないなと。ただ、自分の中に『なぜこう言うのか』『なぜこれをやるのか』のアンサーをちゃんと持っていないと現場に行ったらいけないと思っているので、基本そういう準備はしていきます」
作品を通して、人間の影の部分や、見落とされがちな人々の現実を私たちに見せてくれる内田監督。佐久間さん自身は監督に、どんな印象を抱いているのだろう?
「監督は面白いことが好きなんですよ。たとえば『今度これをやる』と決まってオファーも来てという状況で監督と食事に行くと、『今回の話めっちゃ面白いよ!』ってすごく言ってくれるんです。自分の原作に自信を持って面白いと言えることで、こちらがどれだけ安心できるか。常に楽しいことを考えて作ることが、本当に好きな人なのだと思います。
今回もそうでしたが、監督は『海はどうしたい?』といった感じで演者の意見をよく聞いてくれます。そして、現場でセリフや動きが変わることが結構多い。それは作品をよりいいものにしたいという思いからなのでしょうし、楽しい、面白いに貪欲な人だなと感じています」
「大きいスクリーンは嘘がつけない」
今や内田組の常連となった佐久間さん。これまでに監督から受けた影響とは?
「影響はかなり受けていますね。ドラマ芝居、映画芝居、舞台芝居、声優などいろんな芝居があるなかで、監督がよく言うのが『大きいスクリーンは嘘がつけない』ということ。だからこそ、辻褄が合わないことは絶対になくさないといけないと言われました。
映画って、ドラマほど芝居が誇張されていないんですよ。ドラマは誰が見ても伝わるように大き目のリアクションで動いて喋ると思うのですが、映画でそれをやっちゃうとコメディにしか見えなくなる。だから映画の現場って、みんなボソボソ喋るんですね。内田監督の作品は特に。本当に『……今これ、セリフ言い終わったかな?』という状況がめっちゃあるんですよ(笑)。
現場で『今のそれ、もうちょい落としてもいいかも』と言われて、『あー、なるほど、まだ強いか。じゃあこういうふうにしてみよう。でも、これ以上落とすと何を言ってるかわからなくなっちゃうな』みたいに、いろいろ対策を考えたり。内田監督の現場で、映画芝居の面白さを教えてもらいました」
普通ではない役をくれる監督に感謝
佐久間さんに、映画芝居の面白さを教えてくれたという内田監督。話を聞けば聞くほど、『ナイトフラワー』はもちろん、2026年公開の主演映画『スペシャルズ』も楽しみになってくる。
「それぞれ違う役どころで、変な役ばっかりではあるんですが(笑)。『ナイトフラワー』での僕の職業は、風俗店に勤務する男じゃないですか。僕、監督に言ったんですよ、『Snow Manの佐久間にストーカーと風俗店員と殺し屋の役をくれるの、内田監督しかいないです。ありがとうございます!』って。
監督にはずっと『僕はそういうほうが好きなんです。普通やらせてもらえないような、あまりないようなことをやりたいんです』と言っていたので、本当にありがたいです。
王道系と言うのかな、胸キュン系とかキラキラ系とか、そういう作品は意外とピンとこなくて。なのでありがたいですというのは伝えていますし、そのなかでも『その人がどれだけ人としてちゃんと存在しているか』を考えさせてくれる題材が多いので、すごくやりがいがある仕事だなと。映画のお芝居の楽しさを教えてくれたのは、間違いなく内田監督です」
◇11月25日(火)公開予定のインタビュー第3回では、『ナイトフラワー』でいっしょにものづくりをした北川景子さんと森田望智さんについても聞いていく。
佐久間大介(さくま・だいすけ)
1992年生まれ、東京都出身。2012年Snow Man結成。メンバーとして音楽活動を行う傍ら、俳優・声優として活躍。俳優としての出演作には、『おそ松さん』(22/英勉監督)、映画『マッチング』(24/内田英治監督)など。声優としての代表作にはTVアニメ「ブラッククローバー」(’20)、TVアニメ「カードファイト!! ヴァンガード will+Dress」(22)、「キミとアイドルプリキュア♪」(25)などがある。また、2026年に公開を控える内田英治監督『スペシャルズ』で主演をつとめている。
『ナイトフラワー』
借金取りに追われ、二人の子供を抱えて東京へ逃げてきた夏希は、昼夜を問わず必死に働きながらも、明日食べるものにさえ困る生活を送っていた。ある日、夜の街で偶然ドラッグの密売現場に遭遇し、子供たちのために自らもドラッグの売人になることを決意する。
そんな夏希の前に現れたのは、孤独を抱える格闘家・多摩恵。夜の街のルールを何も知らない夏希を見かね、「守ってやるよ」とボディーガード役を買って出る。タッグを組み、夜の街でドラッグを売り捌いていく二人。ところがある女子大生の死をきっかけに、二人の運命は思わぬ方向へ狂い出す――。11月28日全国公開。
◆2025年11月28日(金)より全国ロードショーhttps://movies.shochiku.co.jp/nightflower/