ここしばらく、長年地元で愛されてきた老舗スーパーの閉店報道が相次いでいる。
たとえばセブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂は、構造改革の一環として、2025年2月末まで約2年間にわたって不採算店舗34店舗を立て続けに閉鎖。千葉・津田沼店や神奈川・綱島店などファンの多かった店舗では、最終営業日に別れをしのぶ客でごった返す姿がSNS上で投稿され、大いに関心を集めたことは記憶に新しい。
そして今年に入り、今度は老舗スーパーのひとつ「ダイエー」の閉店が各地で取りざたされた。大阪・西宮店や兵庫・新在家店(いずれも2月)、大阪・和泉店(9月)などのほか、来年1月には埼玉・東川口店が40年間の歴史に幕を閉じることがすでに報じられている。
この一連の流れを受けて、一部メディアやXには「イオンに買収されて用無しになった」「ダイエーが閉店ラッシュに陥っている」といった意図の文言が躍った。だが、専門家に聞くと、ダイエーの閉店はけっして悲観的なものではないという。それどころか既定路線、《ダイエーの生存戦略》はすでに完成しつつあるというのだ――。
明暗分かれた総合スーパーと食品スーパー
ダイエーを取り巻く環境はどのように変化してきたか。1957年に兵庫県神戸市で創業した同社は、1960年代後半から70年代にかけて発展を続け、1980年には小売業界で初めて売上高1兆円を達成。日本一のスーパーとして名を馳せていた。
それが、90年代後半になると業績は悪化の一途を辿り、2009年には5期連続で最終赤字を計上し、再び経営が悪化。その結果、2015年にイオンの完全子会社となったことは周知の通りだ。
そもそも、なぜダイエーや冒頭のイトーヨーカドーなど、業界を牽引してきたスーパーが時代とともに業績不振に陥ってしまったのか。流通アナリストの中井彰人氏が解説する。
「まず、スーパーは大きく2種類に分けられます。
1つは食料品をメインに売りつつ、別のフロアで生活雑貨や衣料品などを販売する、専門的に言えば、ワンストップショッピング(1つの店舗ですべての買物が完結する)を体現した形態。これが『総合スーパー』で、ダイエーなどはこれに当てはまります。一方、基本ワンフロアで食料品だけ、他はあったとしても少しの生活雑貨のみ扱う形態があり、これが『食品スーパー』です。
ユニクロやしまむらといった衣料品チェーン、ドラッグストアやホームセンター、100円ショップなどの専門店チェーンもなかった時代は、ワンストップショッピングが可能な総合スーパーが好まれたわけです。ところが、時代とともに、非食品部門において専門店チェーンが次々に出現したことで、食料品以外は太刀打ちできなくなってしまった。これが総合スーパーの敗因というわけです」
「イオンフードスタイル」への転換
中井氏曰く、今世間に求められているスーパーのあり方は、総合スーパーをやめて《食品スーパー+専門店チェーン》の形になること。その視点に立てば、ダイエーの閉店報道も、はっきりと肯定して捉えられるという。中井氏が続ける。
「往時のダイエーは、総合スーパーの代表格なわけですから、当然、昔の形態の店も他より多く、つい最近まで残っていました。そうした不採算事業である店舗の整理が、これでようやく終わったという印象です」
これまで足を引っ張り続けてきた総合スーパーはすべて消えた――。と同時に、食品スーパーへの転換も完了しつつある。ダイエーのHPに記載された店舗一覧を見れば一目瞭然だ。
たとえば、今年12月5日にオープンする東京のイオンフードスタイル西大島店。ここは2021年に営業を終了したダイエー大島店の跡地に出店されている。このように、ダイエーの名前を廃して、食料品関連の品目に特化した業態「イオンフードスタイル」へと名前が変わった店舗が、すでに大部分を占めている状況だ。
ダイエーの業態転換が一通り完了したという認識だろうか、親会社のイオンはすでに次の一手を打ち出している。
グループ再編でダイエーの勢いはさらに加速か
今年8月、イオンはスーパー子会社の再編を発表した。それよれば、首都圏において、子会社であるUSMH(ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス)傘下のマックスバリュ関東にダイエーの関東事業を統合するという。これにより、今や食品スーパーと形を変えたダイエーの勢いは高まるという。
「今やスーパー業界は物価高や運営コストのひっ迫により、効率化やコスト削減が最重要の課題となっています。そこで大切になってくるのが、物流センターや生鮮食品の加工などを一括で行うプロセスセンターの存在です。
今回、ダイエーはUSMHと統合することで、物流センターやプロセスセンターにおいてシナジーを発揮するでしょう。そうすれば、より一層の効率化やコスト削減がのぞめるはずです」(前出・中井氏)
イオンが10月14日に発表した中間決算は、営業収益・営業利益ともに過去最高を更新。一時、時価総額でライバル、セブン&アイ・ホールディングスを初めて上回ったことも報じられた。そんな市場の動きの背景には、好業績はもちろん、グループ再編に対する評価、ひいてはダイエーの“変化”もあったことに違いない。
生存戦略はすでに整った。名前を失ってもなお、在りし日の「日本一のスーパー」はこれからも生き続ける。
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