心を掴む「書き出し」の引力
「なんなんだ、この一文は……」
何気なく手に取った書籍の書き出しにガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた経験はありませか?
本の冒頭、読者が最初に触れるその数行は、まさに作品の顔。作者が知恵を絞り、悩み抜き、これ以上ないという覚悟で送り出した渾身の一撃でもあります。
【総力特集】この書き出しがすごい! は、そんな強烈なインパクトを持つ「書き出し」に注目。日々、言葉と格闘する講談社の編集者たちが、「一瞬で心を掴まれた」「思わず唸った」あるいは「ぶっ飛びすぎて目を疑った」珠玉の書き出しを、熱い推薦コメントとともにお届けします。
第4回の書き出しはこちら
忘れられない人がいる。
今、いる。
まさに、今、なぜか、目の前に。
こちらは金子玲介さん著『流星と吐き気』の冒頭の書き出しです。
【流星と吐き気】登場人物は皆、身勝手でクズ。でも、そこに人間の本質があるーー。●偶然の再会を「運命」と勘違いして、安全圏から告白をしようとするアーティスト。―流星と吐き気●アニメにもなった作品の主人公のモデルは自分? サイン会で作者が元カレか確かめる高校教師。――リビングデッドの呼び声●担当編集者に振られたにもかかわらず、才能は認められていて作品だけで繫がっている人気漫画家。――種●昔付き合っていた彼女から独り言のようなLINEが送られてきて、死を仄めかされた編集者。――消えない●かつて旅行先で意気投合した男性が偶然お客さんとなり舞い上がるレンタル彼女。――プラネリウム 仄暗い気持ちが過去を呼び戻してしまう5人の物語。
《推薦コメント》
ありきたりな「忘れられない人」から始まり、「今、いる」で違和感を与え、「目の前に」で視点が急接近。記憶と現実が衝突する瞬間を、緊張感と驚きをもって鮮烈に描き出す。(編集カ)
唯一無二の「書き出し」の世界。この一文から始まる「続き」が気になったら、ぜひ本書を読み進めてみてください!