新NISAの成長投資枠への投資で、日本株の高配当株・増配株が人気だ。日本株の多くが3月と9月に権利付最終日(この日までに株を買えば配当金が貰える)を迎えるが、10月に権利付最終日を迎える銘柄もある。本稿は、10月に権利付最終日を迎える高配当株と増配株に注目する。
解説は、著書『 資産1.8億円+年間配当金(手取り)240万円を実現! おけいどん式「高配当株・増配株」ぐうたら投資大全 』(PHP研究所)が好評の桶井道(おけいどん)氏にしてもらう。桶井氏は高配当株および増配株への投資で資産を伸ばし、関連書籍を出版した実績がある。
高配当株・増配株投資の魅力
日本株が好調です。夏枯れのアノマリーとは無縁で、秋も続伸し、日経平均株価は4万5000円台にあります。株高を素直に喜んで良いとは思いますが、過熱感は否めません。そして、マーケットはトランプ大統領の一挙手一投足に連動していることを忘れてはなりません。国内に目を向けても政治は不安定です。日銀はマーケットフレンドリーな姿勢を見せてはいますが、ETFの売却が始まり、利上げにも敏感にならざるを得ません。
そんな中ですので、高配当株や増配株で配当金にフォーカスした投資も一案となるでしょう。私は、長年、高配当株や増配株に投資してきて、株価が不調な環境下になっても、メンタルが穏やかでいられました。長期的には、増配によって配当金が増えて、株価上昇によって含み益も増えて、二度美味しい展開となっています。
本稿では、10月に権利付最終日を迎える高配当株・増配株を3銘柄ご紹介します。
はじめに、高配当株・増配株投資の魅力について、箇条書きでお伝えいたします。
(1)配当金は定期的(日本株なら年2度が多い)に入る
(2)配当金は事前にその額がわかる
(3)配当金は自動的に入る
(4)配当金は安定的な収入になる
(5)株価下落場面で配当金は心の支えになる
(6)配当金は会社員にとり副収入になり、かつ不労所得である
(7)配当金は老後の生活費に使える
(8)企業の株主還元意識が高まっており、増配が期待できる
(9)配当金目的の買いが常に期待でき、株価を下支えすることが多い
(10)配当金を再投資するのが楽しい
(11)増配株は、投資額(簿価)に対する配当利回りが上がっていく
私の銘柄分析法、14個のポイント
つぎに、高配当株・増配株の銘柄選択法を解説します。配当だけを見てはいけません。それを可能とする裏付けがあるかを確認しましょう。
(1)市場規模が拡大している業種
まず何より需要が増加する業界の企業を選んでください。需要が増えるから、そこに供給を増やすことで企業は成長できます。売上高が増え、営業利益が増え、儲かっているから配当金が出せます。内需(日本国内の需要)だけではパイが減るとしても、海外で稼ぐ企業もあります。逆に、需要が縮小する業界では、いくらナンバーワン企業でも、成長は望めません。少ないパイの奪い合いが起こり、価格競争となり、売上高が減少し、営業利益も減少し、利益率も下がり、配当の維持が厳しくなります。もちろん、株価も厳しくなります。
(2)ナンバーワン企業もしくはオンリーワン企業
業界ナンバーワン企業(もしくは2位まで)に投資しましょう。または、3位以下でもニッチに稼ぐオンリーワン企業を選びましょう。しっかり稼いでいる企業を投資先に選ぶことが大切です。
(3)増収増益
株価は、短期では経済指標や政治的要因などに左右されますが、長期では企業価値に連動します。簡単に言いますと、「どれだけ儲けているか。儲けを伸ばせるか」が大切です。したがいまして、増収増益(売上高も営業利益も成長していること)している企業を選びましょう。合わせて、一株当たり利益(EPS)が成長しているかも確認してください。
(4)営業利益率
本業でしっかりと利益が出せているかを確認する必要があります。業種にもよりますが、営業利益率が10%以上あれば優良といえるでしょう。
(5)株価のトレンド確認
株価が上昇トレンドの銘柄を選びましょう。なぜなら、配当金をたくさん貰っても、それ以上に株価が下がって結局損しているなんてことになったら本末転倒だからです。5年チャートか10年チャートで株価のトレンドを確認しましょう。
(6)配当性向
無理な配当をしていないか確認しましょう。配当性向(利益に占める配当金の割合)が概ね50%以下の銘柄を選んでください。逆に、低すぎても株主還元が十分ではなく、30%以上は欲しいところです。
(7)連続増配年数、増配率、減配の過去を確認
高配当であり、かつ増配していることが理想です。連続増配年数は何年か。もちろん長いほど優良です。増配率(配当の前年対比)も確認しましょう。これも高いほうが優良です。さらに、頻繁に減配していないかを確認してください。ただし、業績連動型配当を方針とする場合は、減配も仕方がありません。
(8)増資の過去がないか
増資(株式を新しく発行し資金を集めること)すると株価は下がります。株主の利益になりません。
(9)自社株買いの推移
自社株買いをすると株価は上がります。連続して自社株買いをするということは株主還元に熱心であるといえます。
(10)自己資本比率
低いほど借金が多いことを意味します。自己資本比率40~50%以上が目安です。
(11)ROEが高いか
ROEとは、自己資本利益率と訳されますが、簡単にいうと、経営効率が良いかどうかを表します。米国株に比べ日本株は低い傾向にありますが、2桁あれば優良、8%あれば合格ラインです。
(12)不祥事の過去がないか
一度不祥事を起こすと、連続する傾向があります。外部要因かもしれない事案もありますが、当該企業がどのような対応をするのか確認することも大切です。
(13)後継者問題がないか
カリスマ経営者の後継者問題はリスク要因です。経営者の年齢や健康状態、後継者育成について確認しましょう。
(14)PER推移
1~13で分析して優良銘柄を見つけたとしても、高値掴みに注意しなくてはいけません。PERが過去に比べて高くなっていないかを確認しましょう。私は予想PERを使って確認します。予想PERは、「現在の株価」を「1株当たり利益(予想)」で除すことで計算できます(予想PER=株価÷1株当たり利益(予想))。1株当たり利益(予想)は決算短信などで確認できます。証券会社(サイト)によっては、予想PERの推移をグラフで確認することが可能です。
以上14個のポイントを上げましたが、全項目をクリアする銘柄はなかなかありません。よって、総合的に判断してご自身が納得できる銘柄を探してください。
この10月、注目の銘柄は…
それでは、10月に権利付最終日を迎える高配当株・増配株をご紹介します。次に紹介する銘柄は10月29日(水)が権利付最終日(この日までに株を買えば配当金が貰える)です。
(1)伊藤園(2593)
世界No.1の緑茶飲料ブランド「お~いお茶」を持つ茶葉製品・緑茶飲料のメーカーです。傘下にタリーズコーヒーも有します。「お~いお茶」は、無糖緑茶飲料として6年連続で年間売上世界一を記録し、国内シェアは36%のトップです。同社によりますと、2023年の日本の緑茶輸出額は過去最高の292億円に上り、北米エリアはその半数を超えています。北米エリアでの緑茶の市場規模は小さく、認知度も低いのが現実ながら、和食や抹茶ブームに加えて健康志向からも無糖緑茶飲料にはポテンシャルがあるのではないでしょうか。大谷翔平選手をグローバルアンバサダーに起用しており、認知度の向上が期待されます。
「お~いお茶」の海外展開の計画として、2024年4月期に40以上の国・地域だったのを、2029年4月期には60以上に、2041年4月期には100以上を目指すとしています。業績はコロナ禍で下落しましたが、回復し、再成長しています。5年チャートは下降トレンドですが、この6ヶ月では上昇しています。予想配当利回り(2025年10月3日現在、以下同様)は、1.44%です。配当利回りは低いですが、3期連続の増配予想です。
(2)カナモト(9678)
建機レンタルで売上高国内2位です。独自の店舗拡充に加えてM&Aを継続的に実施することで成長してきました。まだ、海外売上高比率は低いものの海外に24拠点を有しており、成長戦略のひとつとして海外展開の強化を掲げています。国内では、橋梁、トンネル、道路附属物など道路インフラの整備(修繕)ニーズ、データセンターや半導体工場の新設ニーズなどがあり、追い風になるでしょう。業績は、売上高については成長しており、利益についてはコロナ禍で下がりましたが回復していますので、概ね増収増益傾向にあります。5年チャートは上昇トレンドです。予想配当利回りは、2.59%です。リーマンショックで赤字となったときも配当を維持して、長期にわたり減配せず累進配当を行っています。
(3)学情(2301)
転職・就職情報事業をしています。20代のはじめての転職支援、20代通年採用を中心に、キャリア採用(経験者採用)領域を強化しています。中期経営計画で、「キャリア採用サービスの売上高を年率30%で成長させる成長投資を実施する」と表明しています。人手不足を背景として、転職市場は拡大するとみられます。業績は、これまで増収増益で2024年10月期には3期連続で過去最高益を更新しましたが、2025年9月8日に2025年10月期の業績を下方修正し減益予想となりました。チャートはこの2年間ほぼ横に伸びていましたが、下方修正を受けて下落しています。それでも、株価は5年前と比べると50%ほど上昇しています。予想配当利回りは、3.90%です。
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高配当株・増配株投資をすることで、配当と含み益で二度美味しい投資を目指してみませんか。
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