2023年からInstagramでせいろの魅力を発信し始めたりよ子さん。きっかけは過酷な会社員生活で肌荒れに悩んだことだった。自炊を始めたばかりでもあり、疎かにしていた食事面を改善しようとした時にせいろと出会う。多くの人に知ってほしくて「蒸す」ことの魅力をInstagramで発信し始めた。
【1】自炊ゼロだった20代インスタグラマーが「せいろ」を極めてみたら、いいことしかなかった
りよ子さんのせいろレシピはなんといっても簡単でわかりやすく、意外性のあるレシピが魅力。1年半でフォロワー数が10万人超え、現在のフォロワー数は21万人という、注目のインスタグラマーだ。彼女のレシピを書籍にまとめた「すべてを蒸したい せいろレシピ」は第12回料理レシピ本大賞 in Japan 2025にて料理部門の大賞も受賞。今回は、9月にレシピ本の第二弾「すべてを蒸したい せいろレシピ、おかわり!」発売が決定しているりよ子さんにインタビュー。Instagramとの出会いや発信について、そしてせいろを使いこなすためのコツを伺った。
りよ子
せいろの魅力にとりつかれ、2023年4月に始めたInstagramで、すべてを蒸したい気持ちを投稿。冷蔵庫にあるものだけでパパッと作れる簡単レシピが共感を呼び、開始1年半でフォロワー数が十万人超えと大人気に。野菜を蒸すだけのシンプルレシピから、一度に主菜と副菜が完成する同時調理レシピ、ごはんもの、スイーツまで100品以上のレシピを投稿している。夫と二人暮らし。好きなものは透明なもの、アニメ、アサヒスーパードライ。Instagram:@musu_riyoco
会社以外の居場所がほしかった
りよ子さんがInstagramを始めたのは2023年4月。当時、会社員だった彼女の平日は仕事三昧。しかもかなりハードな部署だったという。仕事と家だけの生活に危機感を覚えたのがきっかけだった。
「このままでいいのかなと思いました。会社とは別に社会とつながる場所がほしい、現状を変えたい、自分の世界を広げたいという気持ちが強くなった時、Instagramが思い浮かんだんです。お出かけやファッション、メイクなどいろいろなことを発信するのではなく、何か一つをテーマにしたいな、と。ちょうどそのころ、蒸すことの魅力を実感していたので、せいろをテーマに選んだのが始まりです」(りよ子さん、以下同)
“映える”コツがわかった
会社とは別に、社会との接点を持ちたい――。そんな思いでせいろのレシピを投稿し始めることに。しかしアカウントを開設した当初は、ほとんど反応がなかったという。
「投稿するうちに、Instagramは写真の見映えが大事なんだと感じ、食材の彩りを意識し始めました。さらに1枚目には文字を入れて目立つように。すると驚くほど反響が上がったんです。おすすめに上がるようになると、一気に反響が出始め、時にはフォロワー数が1日に2000人増えたことも。その甲斐あって半年でフォロワーさんは5万人以上になりました」
フォロワー数が増えたことは投稿に対するモチベーションにもつながり、Instagramを本格的にやろうと決意。
「あれこれ工夫をしていると、見てもらえるコツをつかみ始めました。とにかく、簡単でわかりやすいレシピで、手に入りやすい食材を使うと反応がすごくいいんです。だから私のレシピの材料はどれも、わざわざ買いに行かなくても冷蔵庫にありそうな食材ばかり。というよりも、実際に冷蔵庫の残り物を使って作っていますから(笑)。でもそれがフォロワーさんにとってもリアリティがあるのかもしれませんね。それから、もっと見やすいようにと、途中から静止画ではなく、動画に変更しました。動画の編集なんてしたことがなかったので、始めはネットで調べながら試行錯誤の連続でした。長いと見てもらえないので、30秒前後の動画にしています」
リアリティにこだわるりよ子さんは、作ったレシピをすべて投稿するのではなく、フォロワーにすすめたいものだけを厳選している。
「これはちょっと微妙かも……というメニューはボツです。私が本気でどれも美味しい、と思ったレシピしか載せていません。いつも本当に美味しい! と思ってほしいですから」
21万人と出会った居場所
現在もりよ子さんのアカウント@musu_riyocoはフォロワー数が増え続けている。だからこそ、気を引き締めていることもあるという。
「以前までは、ただフォロワー数が増えていくことが楽しくて投稿していました。でも、書籍も出していただき、フォロワーさんが増えてからは、栄養面の話などについて気軽に発言することは控えています。私は専門家ではありませんから。毎日ご飯を作っている一人の女性として、フォロワーさんと同じ立場で、“これ、作ったらおいしかったよ〜!”と、おすすめする人でいたいなと思っています。
そして何よりも嬉しかったのは、コメントや、DM(ダイレクトメッセージ)、そしてインスタグラマー同士の交流会を通してたくさんの友人ができたこと。会社員生活だけを続けていたら、一生知り合えなかった人たちと出会うことができました」
りよ子さんは会社とは別の社会を求めInstagramを始めた。発信する情報をせいろと明確に決め、写真のクオリティ、キャプションや動画の編集技術などの向上に努めたことで、会社とは比較にもならないほどの多くの人たち(現在フォロワー数は21万人!)と交流する居場所を見つけた。
フォロワー21万人に支持されるりよ子さんから、せいろを使いこなすためのコツを教えてもらった。
知っておくと便利なせいろQ&A
Q.せいろの大きさと蒸す時間には関係がありますか?
「同じ分量を作る場合でも、小さなせいろに食材を詰め込むより、大きなせいろを使って、隙間を作って詰めた方が、火が通りやすいため蒸し時間が短くて済みます」
Q.蒸すのに適さない食材はありますか?
「ほとんどの食材は美味しくいただけます。冷蔵庫の残り物をなんでも使ってください! ただし、乾麺や粉のついた生ラーメンなどは向いていないかもしれません。一度、パスタを試したら芯が残ってしまいました。前の晩から浸水させたらうまくできたのですが、それよりも、沸騰したお湯でパスタを茹で、その鍋の上にせいろを乗せて他の具材を蒸した方がいいと思います」
Q.レシピよりも多くの食材をせいろに詰めた場合、蒸し時間も増えますか?
「多少、食材の量が増えても、蒸し時間はそんなに変わらないと思います。それよりも切り方で蒸し時間が変わります。一つひとつが大きくて厚みがあると時間がかかるので、時短を目指すなら、食べやすいサイズにスライスすることをおすすめします」
Q.せいろを二段にして使う場合、気をつけることはありますか?
「二段にする場合は蒸気が上段に上がりにくいので、蒸し時間が長めになります。途中で上段と下段を入れ替えると均等に蒸しあがりますよ。また、下段はいも類や卵にして、隙間を作るのも一つのコツ。下段に食材がぎゅうぎゅうに詰まっていると、蒸気が上段まで上がりにくいため、蒸し上がりにムラが生じます。上段は葉ものなど、蒸し時間が短くて済む具材にすることもおすすめです。
そのほか、上段にお肉を入れると、下段に肉汁がこぼれてしまうこともあるので、肉類は下段がいいかもしれません。火も通りやすいですしね」