「学校に行くのが当たり前」と考えるのは、もはや“時代遅れ”の「バカ親」なのかもしれない――。
学校は、国や企業に従順な人間を育てるための装置だったが、その役割はすでに終わった。AIやネットが普及した今、学びも仕事も“自分で創り出す”時代。堀江氏は、これから必要になるのは学歴や資格ではなく、「好き」なものに没頭し、突き詰めていく力だと断言する。
新著『バカ親につけるクスリ』から“ネオ教育論”の核心を抜粋する。
第2回『絶望的な「教師ガチャ」「学校ガチャ」が不幸な子どもを生んでいる…堀江貴文が《日本の学校教育》に物申す』より続く。
「好き」を突き詰めることで、稼げる大人になる
僕が何より重視するのは、1番目と2番目に挙げた、「『好き』を突き詰める」ことで「代替不可能なレア人材」になることだ。そういう人になれれば、稼ぐこともできる。
今や世界中で大人気の野球選手、大谷翔平選手がいい例だ。彼は日本のプロ野球、そしてアメリカのメジャーリーグで、ピッチャーとバッターの二刀流選手として大活躍し世界を驚かせた。ロサンゼルス・エンゼルスからロサンゼルス・ドジャースに移籍するときには、スポーツ史上最高額となる10年総額7億ドル(約1015億円)での契約が話題となった。
大谷選手は自分のことを、「好きなことに関して頑張れる才能はあると思いますね。それが僕は野球でした」と表現している。まさに好きを突き詰めた結果、偉業を成し遂げたというわけだ。
大谷選手に世界中が熱狂するのは、その存在が唯一無二だという「代替不可能性」ゆえだ。そこに人は熱狂し、価値を見出す。
2024年に新たにビリオネア(億万長者)となった歌手のテイラー・スウィフトは、ほぼ作曲とライブパフォーマンスだけで11億ドル(約1670億円)の資産を築いた。彼女も、その存在の代替不可能性に世界中の人々が惹きつけられている。
「熱中すること、遊び狂うこと」が仕事になる
大谷翔平もテイラー・スウィフトも、すごすぎて一般人には参考にならない、と思うだろうか。
僕は「1000億円稼げ」と言っているわけではない。誰しも、自分だけの「好き」を本気で突き詰めれば、代替不可能な存在となれるし、お金を稼ぐこともできるということを伝えたいのだ。
とにかく子ども自身の好きなこと、楽しいと思うこと、興味があること、熱中できることなどを追いかけさせるのが大切だ。その中で他人との差別化を行えば、その興味はいずれ仕事になる。
気をつけるべきポイントは、子ども自身の「好きなこと」かどうかを正しく見極めることだ。子どもの本当に好きなことを否定していないか? 「子どもはゲームが好きだけど、それは私が気に入らない」という気持ちで、親が子どもの没頭を止めていないか? 親の好きなことに子どもを誘導していないか? 自問自答してほしい。
信じられないかもしれないが、興味を持つことが、熱中することが、遊び狂うことが、今の時代は仕事になるのだ。そのような状態を、僕は「遊び倒す人生」だと考えている。
僕自身も、遊ぶ・働く・学ぶを同化させた、三位一体型の人生を送っている。遊ぶ・働く・学ぶを一緒にするというのは、それぞれの間に区切りを設けないということだ。人生におけるすべてのアクションが、遊びとも、仕事とも、勉強とも解釈できる。
代替不能な「100万分の1」の存在になるべし
僕は、教育や宇宙開発、食肉など数多くの事業を手がけているが、そのすべてを心の底から楽しんでいて、仕事だと感じたことは一度たりともない。好きなことに熱中した結果、仕事になっただけだ。だからこんなにもたくさんの事業を、同時並行で進められるのだ。
「子ども自身の好きなことを掛け合わせ、『100万分の1』の存在に」というのは、教育改革実践家で元リクルート社フェローの藤原和博氏が提唱している「100万分の1のレア人材になろう」からきている。
とはいえ100万分の1なんて、途方もないレア度だ。日本の人口からすれば「日本国内に120人しかいない」くらいの希少さである。オリンピックの金メダリスト級の確率だ。
だが、100分の1だったらどうだろう。100人は、学校のクラスで考えると3クラスほどだろう。好きなことに夢中になっているうちに、100人の中で1番になるのはできそうだと思える人は多いのではないか。
あとは、それとはまったく違う2つの分野で、それぞれ100分の1を目指せばいい。そうすれば、合計3分野を掛け合わせて、100分の1×100分の1で100万分の1の人材になれるというわけだ。
100万分の1の人材なら、同じ価値を持っている人間は周囲にはいないという状況になれる。こうして、代替不可能なレア人材ができあがる。
仕事と遊びの境界が溶け始めた
単純労働はおろか、経営者の仕事ですらAIに代替されるかもしれない時代において、生き残る術は「好きなことに没頭し、仕事になるまで遊び尽くすレア人材」になることだけだ。
その上、今や「労働」をしなくても、遊びを極めることでお金が稼げるようになった。面白いアイデアを持っている人の元に、どんどんお金が集まるようになったのだ。面白い人とお金を持っている人とを、インターネットがあっという間につないでくれるからだ。
こうなれば、もう仕事と遊びの境界線なんて、あってないようなものだ。
HIU(堀江貴文イノベーション大学校)にも、「ニート女子ですが、トライアスロンに初挑戦するので応援してください」と言うだけで、15万円も集めた子がいる。
現在進行中の宇宙開発プロジェクトで、「ロケットの打ち上げボタンを押すことができる権利」をクラウドファンディング(クラファン)で1000万円で提示したところ、ノリで1000万円を出してくれた人もいる。
僕に言わせれば、こういった自分がやりたいこと、楽しいと思うことでお金を得ることだって、立派な仕事のひとつだ。
こうして、好きなこと、楽しいことでお金を得ようとするとき、メジャーなことよりもニッチなことのほうが、ライバルは少ないし差別化も楽だ。
資格や肩書にこだわらず「ニッチ」を極めろ
ニッチなことでも、その人しか持っていない知識やスキルがあれば、誰かに必要とされるはずだ。
古今東西、人というものは、自分が持っていない磨かれたスキルを持っている人に惹かれるものなのだ。昔から、スポーツ選手、歌手、演奏家、ダンサー、俳優などには多くのファンがついて、熱狂的に応援されてきた。
「ニッチなら市場が小さいのでは?」と心配する人もいるかもしれないが、それは杞憂だ。 インターネットの出現により、世の中は極端に狭くなっている。たとえニッチな市場であっても、世界規模で見れば大きな市場規模となるのだから、むしろチャンスしかない。
注意点としては、「その人しか持っていない知識やスキル」の「もの差し」として、資格というものに走らないでほしい。
資格を持つと、それがスキルだと思い込んでしまう人は多い。しかし多くの人が取得している資格なんてものは、スキルとしての差別化はまったくなく、誰かに「強い興味」を持ってもらうことは難しい。
100万分の1を目指すための、「100分の1」のひとつとしてくらいなら有効だが、資格や肩書にこだわってはいけない。
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【つづきを読む】「いまだに中学受験に必死な親はクソ」堀江貴文が語る《子どもの才能を潰す“バカ親”》の正断