肝機能の維持は努力次第
一般的に人間の臓器は、年齢を重ねるにつれてパフォーマンスが落ちていく。ところが肝臓は加齢以上に生活習慣の影響を大きく受けるため、日々の暮らしを見直せば老化を食い止められる可能性が高い。佐久市立国保浅間総合病院外科部長で、肝臓専門医の尾形哲氏が話す。
「年齢を重ねるにつれて、肝臓では脂肪がつく脂肪化と、組織が硬くなる線維化が同時並行で進んでいきます。つまり少しずつ脂肪肝と肝硬変に向かうわけです。
ところが中には、80代でも脂肪化、線維化がほとんど進んでおらず、一般的な40代と比べても遜色ないほど肝機能が高い人もいます。加齢以上に生活習慣の影響が大きいため、肝臓の老化は努力次第で遅らせられるのです」
ただし肝臓は「沈黙の臓器」とも言われていて、老化が進んでも自覚症状はほとんど出ない。脂肪化や肝硬変の度合いを知りたければ、腹部超音波検査などが必要だ。
「手軽に自分の肝臓の状態を調べたければ、『FIB‐4 index』というスコアを計算してみましょう。肝臓に関する数値のASTとALT、そして血小板数という、健康診断で必ず測定する3つの数値と年齢から、肝臓の線維化のレベルがわかります。ネット上には自動で計算してくれるサイトもあるので、検索してみてください」(尾形氏)
もしFIB‐4 indexが2・0を超えていたら、注意が必要だ。すでに肝臓が傷んでいる可能性が高いため、早めに手を打ちたい。
ジュースやスポーツドリンクに要注意!
肝機能を回復させるには、アルコールを控えるのが近道なのは間違いない。肝臓は再生力が高いものの、アルコールを分解してから完全に回復するまでには約48時間かかる。その間にまたアルコールを摂取すると線維化が進むので、飲んだ翌日を休肝日にするだけでも効果的だ。
しかし実はアルコール以上に、果糖を含む甘い飲み物のほうが、肝臓に大きなダメージを与える。尾形氏によれば、「甘い飲み物に比べればお酒なんて可愛いもの。ビールのロング缶1本よりも、ペットボトル1本のスポーツドリンクのほうが肝臓に悪い」という。
「そのほかの糖質と異なり、果糖は肝臓以外の臓器ではエネルギー源として消費することができません。そのため肝臓で使う分を超えて摂取すると、中性脂肪として肝臓に溜まっていき、脂肪肝になるわけです。その証拠に、非アルコール性の脂肪肝を患っている人は約2300万人と推定され、アルコール性の3倍に上ると考えられます」
これからの季節、暑いとつい冷たいジュースやスポーツドリンクに手を伸ばしたくなる。そこをグッとこらえて、水やお茶に変えるだけでも肝臓は長持ちするだろう。
筋トレで脂肪肝を予防しよう
一見すると健康によさそうな野菜ジュースやスムージーにも、果糖は大量に含まれている。日常的に飲んでいる人は、代わりに野菜や果物をそのまま食べるようにしたい。固形のまま摂取することで、果糖の吸収が穏やかになるとともに、その90%がほかの臓器でも消費できるブドウ糖に変換されて、肝臓に溜まりにくくなるのだ。
より積極的に肝臓の老化を防ぎたければ、筋トレがオススメだ。
「筋肉がつくと消費される糖の量も増えるため、肝臓に脂肪がつきにくくなる。そのため筋肉は『第二の肝臓』とも呼ばれているんです。
手軽にできて効果が高いのはブルガリアンスクワットでしょう。片足を自分の後ろに置いた台の上に乗せて、ゆっくりスクワットをくり返してみてください。1日5分、週に2〜3回やるだけでも、筋肉がつくのを実感できるはずです」(尾形氏)
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「週刊現代」2025年08月04日号より