【はじめから読む】『アソコの手術後になぜか勃起してしまう現象と、「妻だけED」の共通点』
パイプカットしている人の共通点
こんにちは。ベテラン看護師のみさき、41歳です。性にまつわる医療にやりがいを感じ、キャリアのほとんどを泌尿器科と不妊治療クリニックに費やしてきましたが、特殊能力を身に着けました。
パイプカットした男性を見極める鑑定スキルです。
街中を歩いていても、「この人はパイプカットしているな」とわかってしまいます。異世界転生しなくても身につけました。泌尿器科の看護師あるあるです。
パイプカットしている男性に共通するのは、妙な色気と清潔感。毒々しい金の腕時計やブレスレットを装着し、ちょっとギラつく色気と清潔感を漂わせた感じの男性にパパイプカットしている人が多い……。
ちょっとわかりにくいですが、同じ特殊能力を持つ看護師であれば、「うんうん。わかる~っ」と言ってくれそうです。
パイプカットの落とし穴
「パイプカット」という言葉を聞くと、大橋巨泉さんを思い出す方がいるかもしれません。1972年、37歳のときに、巨泉さんはテレビ番組内でパイプカットを行うことを宣言しました。一昔前まではいかがわしさが漂うフレーズでしたが、今では男性の美容医療のメニューのひとつに挙げられるなど、イメージが変わってきています。
とはいえ、遊び人が好む手術であることは昭和も令和も変わらず。パイプカットの目的は主に妊娠予防策。精子が出ないだけで射精は変わらずにできますので、妊娠リスクなしで、存分に遊びたい人が手術を受ける傾向にあります。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
パイプカットとは、竿の根元付近の「精管」を切って精子を出なくする避妊方法ですが、切ったらすぐに精子が出なくなるわけではなく、「手術後3ヵ月は様子を見たほうがいい」と言われています。
ちゃんと手術をしたからといって、すぐに精子の通り道が閉ざされ、何も出なくなるわけではありません。ちゃんと精液らしきものは出るのです。これは「前立腺液」というものが主ですが、手術後3ヵ月は精子が混ざっていることも少なくありません。
それゆえ悲劇が起きます。わずかに生き残った精子たちが、射精時に卵子に着床。妊娠してしまうこともあるのです。
「おたくのクリニックで手術してパイプカットしたのに、なんで妊娠するんだ!」
と怒り散らかして病院にくる患者さんが時々いますが、原因はほぼそれです。
精管をつなげる手術は難易度が高い
目視では精子がいるかいないかなんてわかりませんので、精子が生まれ、入れ替わるとされる3ヵ月は大人しく避妊具を利用し、術後3ヵ月が経過したら、改めて精液検査を受けて、本当に精子がいなくなっているかどうかを確認することが大切なのです。
盆暮れ正月、ゴールデンウィークにシルバーウィーク。こうした大型の休み前になると、必ずパイプカットの駆け込み需要が発生します。しかし、今から思いつきでパイプカットをしたところで、お盆休みには間に合っていないないことは知っておいてほしい。
さらに、パイプカットには問題があります。術後に「やっぱり子供がほしい。精子が必要だ」となると、精管をつなげる手術を受けるか、睾丸を切って精子を取り出す手術を受ける必要が出てきます。
しかし、精管をつなげる手術は難易度が高いことや、できる病院も限られるため、手術費も高額になります。
いずれにせよ、何事も短絡的に考えず、大人の男性として慎重に考えてから性生活を楽しんでほしいと私は切に思うのであります。
正しい知識と判断力を身につけ、自分の性生活をコントロールできる大人の男性が一人でも増えてくれたら、泌尿器科の現場の看護師としても、一人のオンナとしても私はとても嬉しく思います。
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