嫉妬は怒りの感情
「嫉妬」とは、ウィキペディアによると、「自分よりも優れていると感じる人に対して妬みや嫉みといった感情を抱く悪徳である」という。
それは羨望と似てはいるが、「嫉妬は、自分以外の誰かが望ましいよいものをわがものとしていて、それを楽しんでいることに対する怒りの感情であり、二者関係に基づいている」そうだ。
また、嫉妬の感情が同性に向きやすいのは、自分に近い立場の相手が、自分より優れたものを手に入れた時に起こる感情だからともいわれている。
漫画『ママ友がこわい 子どもが同学年という小さな絶望』(野原広子著 / KADOKAWA)にもまた、嫉妬で心が真っ黒になった主人公の心中が描かれている。
漫画の主人公サキは、夫と娘と3人で暮らす32歳の主婦。些細なことがきっかけとなり、元ママ友リエから無視されるようになり、幼稚園の送迎が嫌でたまらない。挨拶をしても無視、保護者会でも、これみよがしに嫌味を言われる。だが、かつてはリエは、サキの一番の理解者だった。
「幸せなはずなのに孤独」の理解者
望んで出産したはずなのに、仕事をやめ、子育て一色となった毎日は、幸せなはずなのに、孤独感から逃れられない。夫は「自分は仕事でつかれた」のだから、家事も育児もサキひとりがやるものと決めつけている。
そんな「幸せなはずなのに孤独」なサキの気持ちをわかってくれたのが、幼稚園で初めてできたママ友リエだった。
ところがふたりの娘が年中に上がる頃、ささいな誤解からサキはリエに無視されるようになった。幼稚園の送迎で無視され、保護者会では意地悪を言われ、行事ではぼっちに。辛くて悲しくても娘の前ではぐっと堪え、なんでもない顔をして見せていたが、心も体もくたくたに。そんなサキに、帰宅した夫は非情な態度で「メシ」を急かし、義母は「二子目妊娠」のプレッシャーをかける。
本来なら味方になってほしい夫の、あまりに無神経で理解のない言葉に、我慢も限界に達したサキは、家を出る。だが、家出をしてもどこにも行くところのないサキは、近所を歩いただけで、家に戻る。そして朝が来れば、ミイを幼稚園に連れて行かねばならない。
「赤ちゃんいるんだって!」
幼稚園でリエの背中を見るだけで、胃痛が増すサキだったが、リエの娘から衝撃的な事実を知らされる。
ふたり目ができないもの同士励まし合ってきたリエのお腹に、「赤ちゃんいるんだって!」。
あまりの衝撃に逃げるように帰宅したサキは、これまでどんなに意地悪されても、捨てきれず、何度も見返したリエとの写真に手をかけ、はさみで切り裂く。さらに目にしたマッチで火をつけ、燃やした。
自分の中に真っ黒なドロドロしているものがあることに気づいたサキ。
リエの写真に火をつけながら、自分を抑えきれなくなったところで、火災報知器が鳴り出す。慌てて止めようとして、椅子から転げ落ち……。
自分に失望し、世の中に絶望するサキの表情が切ない。
◇これまでどんなに嫌がらせをされても、自分の矜持は保ってきたサキ。だが、「リエに赤ちゃんができた」という事実を知らされ、自分ではないような感情が沸き上がった。
けれどもそんな感情を持つのは、ある意味とても人間らしいと言えないだろうか。
自分は正しく真っ当な人間でありたいと願っても、何かの拍子に劣等感や優越感が刺激され、思わぬ負の感情を抱いても不思議ではない。大事なのは、その感情をどう処理するかだ。
サキの場合は……明日の最終話「ママ友いじめに二子目格差。憤怒と嫉妬に取りつかれた主婦が自分を取り戻すきっかけとなったもの」で明らかに。